第4話 きみに撃ったの440円
君には会えないほうがいい
駅にはたくさんの人がいます。そしてすれ違います。すれ違うことは出会ったことになるのでしょうか。誰しもが自分の事情で歩いたり走ったりしている。誰しもがどこかにいて誰かの隣にいる。それはそこにいたくているわけではないかもしれない。仲がいいように見えて、仲が悪いのかもしれない。誰にも会いたくないだなんて呟いてみるけど、結局すぐ寂しくなるのでしょう。
私はたしかに優しくなろうとしていて、友だちと呼べる人もいました。決してそれは少なくなくて、浅すぎるものでもありませんでした。世間でいう普通の子でした。いつからか普通でいるのが嫌になりました。美術部では普通の絵をかいていましたがこっそりらくがきをするようになりました。私は私でなくなってしまいたかった。高校卒業と同時にらくがき達を作品に変えました。私自身も、見た目や中身を変える努力をしました。だからもちろん彼は私に気づきませんでした。
私は彼を見て驚きました。私の絵に気づいたようでした。まるで拳銃で撃ち抜かれたようでした。その作品は高校の頃ルーズリーフのファイルに鉛筆で見えにくいようにかいていたらくがき。彼は私を見つけました。見続けてはくれなくとも。それだけで私は嬉しくてしかたないのです。あの地元の駅から440円。彼がこの駅に来たのはきっとこんな絵を見るためではないでしょう。
出会う必要なんてない
とりとめのない話なんてしたくない
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