16話
いつも通り茜に服の準備をしてもらって、いつも通り茜の朝ごはん食べて、いつも通り時間ぎりぎりにわかばちゃんと登校すると何故か校門の前にテレビ局と思わしきカメラマンとレポーターの方が二組いる。
私の高校の生徒達はそのペアに興味津々なようで校門近くに少し人だかりが出来ている。
「あれ、わかばちゃんを対象にしたテレビカメラだよね」
かなさんも変な事にはならないって言ってたし多分、そうだろう。
「…違うと思うな…、…私に対してだったら事務所通さないと色々と面倒なことになるし…」
流石にここで私を撮ろうとマスコミの人が待ってるというのは自意識過剰なのだろうか?
「よし、門を変えよう」
私達は普段、誰も使わず寂れて閉まってる門を乗り越えて入る。
「…先生に見つかったら怒られる…」
「茜に見つかったら怒られる」
わかばちゃんはちょっと嫌そうな顔をしましたが付いてきてくれます。
「…茜ちゃんってこういう規則に対して厳しいよね…」
「寝転がってポテチ食べてきたら怒ってくるんだよ。けど、こういうのって普通姉の私が怒ることだと思うの」
「…それはゆかちゃんが悪いと思う…。…ゆかちゃんって姉としての威厳は保ててるの…?」
「最近、自信が無くなってきた」
「ゆかちゃんは茜ちゃんに対して良いお姉ちゃんだから大丈夫だよ」
「ありがとう」
茜に対して姉としての威厳を見せるキャンペーン週間でも作った方がいいかな?
「…なんか凄い視線感じるね…」
教室に行くため人通りの多い廊下を歩いてると、今日は何故か私達が側を通ると会話や作業を止めこちらを見てくる。
「有名芸能人になったみたいだね」
「…だね…。…高校入った時もこんなんだったね…」
高校一年の時もこんな感じで凄い見られていたけど、今は会話な作業をしながら軽く見られるだけでこんなにがっつり見られることは減ったはずなのに。
「やっぱり、動画のせいかな?」
「ゆかちゃん、動画見たよ」
「凄いねー」
「ゆかちゃん、可愛かった」
「ゆかちゃん、やっとアイドルデビューするんだ」
「それそれ、折角可愛いのに」
「サイン頂戴」
学年が同じ教室の近くの廊下に入ると同級生達にわいわいがやがやと囲まれます。
「えーと」
やっぱり、原因は動画でしたか。
逃げたい。けど、逃げる場所が無い。
私達が立ち止まると騒ぎを聞き付けたのか同級生達が着々と増えています。
「みんな、ちょっと待って」
わかばちゃんが珍しく大声で叫ぶと、クラスのみんなが驚いた顔になり、わかばちゃんに視線が向きます。
わかばちゃんはいつも聞こえるぎりぎりくらいの声量しかださないので、驚くのも無理も有りません。
わかばちゃんがアイドル活動してない時にこんな大きな声量を出したのを、見たのは初めてだと思います。
「えーと、みんな何のお話ししてるの?」
さすが、現役アイドル、視線を感じても動じず話しています。
本当にわかばちゃん、成長しました。小学生の頃だったら、絶対に顔真っ赤にしておどおどしていたのに。
あんな、初々しいわかばちゃん見れなくなったのは残念です。
わかばちゃんがこちらを見てきます。
「ん、可愛いね」
わかばちゃんの顔が真っ赤になります。
周りから黄色声が上がります。
あっ、いつも学校だとわかばちゃんとしか話してないから周りのこと忘れてた。
「ゆかちゃん、…嬉しいけど…。…違うよ…。…えーと、やっぱりゆかちゃん達が上げた動画が原因みたいだね」
「やっぱりか」
「あれを近藤さんが例にあげながら呟いたらしくて」
「それは昨日みたよ。あれだけで広まるもんだね」
「それがいろんなサイトに拡散されて、ゆかちゃん達が可愛いからネットの中ではお祭り騒ぎみたいだよ。もう、ゆかちゃんとしては不服だと思うけど、ネットアイドル認定されてるよ」
「………え、ないない。そんなこと無いよね」
ネットアイドルなんてならないから。
私は一般人として生きるのです!
わかばちゃんがこちらを真剣に見てくる。
「消せないかな?」
「「「無理!」」」
先生に隠れながらスマートフォンを使いかなさんに相談です。
見つかったら、スマートフォン没収という優等生としてあまり宜しくない事態に陥りますが危機的状況なので許して欲しいです。
"かなさん。あの動画が今、どうなってるか知ってます?"
"知ってるわぁ、SNSで拡散されて凄いことになってますねぇ"
かなさん、凄い冷静?
"かなさん、この状況になるの分かってました?"
"ここまでとわぁ、予想外でしたが、ゆかちゃんは可愛いですしぃ、結構のびるかなぁとわ思ってましたよぉ"
かなさんは予想通りだったのか。炎上要素なかったですし、面白いものでも無かったので、凄い軽い気持ちで投稿しちゃたけどここまで広がるんですね。
ネットは恐ろしい。
"消したいですかぁ?正直、もう消しても状況は変わんないと思うのですぅ、諦めてみんなの興味が移るのを待った方が良いと思いますぅよぉ"
消して、かなさんとりかさんだけのやつにしてもらうか。
この状況を受け入れるか。
どうせ、消したとしても誰かが保存したものを無駄にアップロードするに決まってます。
消した方が逆にネットのおもちゃにされる可能性もありますし。
"考えさせてください"
"良いですよぉ。まぁ、消すならもう遅いかもしれませんが速い方が良いですよぉ"
はぁ、どうしてこうなってしまったのだろうか。
ネットでの顔出しは怖いものと分かっていたのですが、男の時だったらあげても誰も見向きもしなかっただろうに。
授業はいつも通りに進んで行くが休憩時間中は色々な人に話しかけられました。
いつも同じ人、わかばちゃんとしか話していないから凄い疲れます。
友達いないんですよ。
「疲れたー」
秘技、机にうつ伏せになることによる話しかけ防止です。人見知りの必須の技です。
授業も終わり放課後です。後、帰って寝れば完璧です。
「ゆかちゃん、大丈夫?」
わかばちゃんが私の頭をよしよしと撫でてくれます。
「大丈夫だよ。人と話すの疲れただけ」
「…ゆかちゃんに悪いお知らせが有るんだけど聞きたい…?」
「マスコミの人が来てるの?」
「そう、校門前にマスコミの人がかなり来てるって噂になってる」
動画の再生回数をちらっとみる。1千万を越えていた。きっと、目の錯覚です。
帰りたくないけど、おうちに帰りたい。
「お姉ちゃん」
茜が教室に入ってくる。
これで朝のルートは閉鎖されました。
「茜」
あー、マイエンジェル。
「お姉ちゃん、馬鹿なこと考えていないで帰るよ」
え、なんで今のもばれるの。
「けど、マスコミの人が」
「今、無断で校内に入ろうとした人がいたから警察よんだ。だから、少しは大人しくなるはずだよ」
「さすが、副生徒会長」
「警察呼んだのは私じゃないけどね」
警察いれば変なことも起こらないでしょ。
「マスコミへの回答は基本的に"無回答ですで"良いと思う。回答すると言葉を切り取られたりして、視聴率をとれるように喋った言葉を変えられるからあんまり喋らない方がいい」
「さすが、茜」
私はわかばちゃんと茜の後ろに隠れながら生徒の流れに沿って校門を出る。
すると、人混みを掻き分け私の前にマイクが出される。カメラがこちらを向いてる。
「カメラ止めてもらえませんか?」
「わかばちゃん」
私はわかばちゃんの後ろに隠れます。
「関東テレビのゆきなです。今、ネットでゆかさん達のグループが騒がれてますがどう思いますか?」
「えーと、無回答です」
緊張して喋べれない。茜に喋るなって言われてる喋る大丈夫でしょ。
「西日本テレビのはるなです。ネットに投稿しようとしたきっかけは?」
「ひなこた…、アイドルのひなこさんの企画です」
「えー。どんな企画なんですか?」
この自分で調べようとしない姿勢。もうあの言葉を言わないと。
「ぐ…」
「お姉ちゃん、ストップ」
「言っちゃ駄目」
「駄目」
「駄目です」
「こほん、自分で調べてください」
「中央テレビのさわいです。目指してるネットアイドルは?」
今回は私が答えようする間もなく茜が口を塞いできて、耳元に喋る言葉を囁く。
「えーと、ネットアイドルじゃないです」
「東テレビの田中です。これからの目標は」
「普通に生活することです」
マスコミの方々は私から全く実のある回答を引き出せないからか凄い困惑してます。
高校生だから、簡単に欲しいフレーズを得られると思ったのですか。こちらには茜が付いているのです。
「もう良いですね。後、私達の写真を載っけないでくださいね。訴えますよ」
私達はマスコミの方々が困惑している間に小走りで逃げ帰った。
電車の中でも注目されたり、サインねだられてしまった。
わかばちゃんがサインを書いて誤魔化した。
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