14話

 茜やわかばちゃんにダンスを見てもらいながら練習して、一週間後に私達はまたかなさんの家に集まった。

 そこで満足するまで練習して、かなさんの家にある高価なビデオカメラを引っ張り出してきて私達のダンスを撮影し、かなさんが動画投稿サイトにアップロードした。


 これで無事にコンテストの応募は完了した。


 そして、気になってくるのが再生数である。別に視聴者の動画の評価や再生回数は不正防止のためコンテスト評価には関係ないが、なんとなくすぐにスマートフォンで動画の評価や再生回数を調べてしまう。


 そして、ひなこたんか見たかどうか分からないけれど、思いを馳せてしまう。


「お姉ちゃん、そんなに動画を見たってダンスは上手にならないよ」

「けど、凄い気になるもん」


「そもそも。お姉ちゃん達の場合には踊りを別にして容姿で評価があがりそうだよね」

 ひなこたん、お願いします。貴方に会いたいのです。だから、高評価をお願いします。


「けど、踊った動画をあげるって、ネットアイドルみたいだよね」

「確かに」

 まんまネットアイドルじゃん。同級生に下手くそなダンスを見られたくないし、企画終わったらすぐに動画を消そう。


「お姉ちゃんがアイドルになるのやだな」

「私も注目されたく無いからアイドルにはなりたく無いよ」

「お姉ちゃんが注目されない状況ってどんな状況か想像つかないけど」

「クラスの中では、私とわかばちゃんはクラスメイトとなんか壁がある感じするよ」

「それは、多分、みんなに注目されているからだよ」

「まあ、一年生にして生徒会副会長であり、誰からも好かれて頼られている茜とは注目度合いは違うけどね」

「はは、そうかもね」


「それより、右手に持ってるのはボードげーム?」

「そうだよ、お姉ちゃん、今日はこのボードゲームで遊ぼう」

 茜に最近遊んでないと言われてから、積極的にボードゲームなどで遊ぶようにしているのです。

 良いお姉ちゃんでいたいのですよ。


 茜が取り出したボードゲームの名前は"ラブラブ新婚生活"

 箱の色はどきついショッキングピンクで、表紙はいちゃラブしたカップルのイラストが描かれています。

 どう考えてもプレイ対象は新婚夫婦な気がします。


「えーと、茜、最近何か疲れてない?」

 優等生の茜がこんなのを持ち出すなんて、これが性の目覚めかな。


「いつも通りだよ。よし、今日は勝つぞ」

「これ、18禁じゃん」

 茜は素知らぬふりでゲームを進めようとするが表紙を良くみるとでかでかと18禁って書いてある。

 表紙のカップルに集中して目に入らなかった。


「あー、ばれちゃた、まあお姉ちゃん良いじゃん、一回位楽しもうよ」

「駄目です」

 茜は頬を膨らますが、手早く内容物を奪いとり、箱にしまう。


「没収です。お母さんに言っておくからね」

 いつのまにか妹が成長してしまって悲しいです。妹の部屋の探索では18禁のものなんて見つからなかったはずなのに。


「じゃあ、お母さんに返しといてね」

 妹は私に抱きついた後、自分の部屋に戻って行く。

 これ、母親のですか!?



「という事が昨日あったのですよ」

 学校の帰り道。


 久しぶりにわかばちゃんとの学校帰りに喫茶店によっています。


 最近、わかばちゃんはテレビやラジオの出演依頼が少しずつ増えてきて、更に地下劇場でも定期的にライブしていて忙しいみたいです。


 アイドル止めた方が良いんじゃないかと良く呟いているので少し心配です。

 体壊すくらいなら友達としてアイドル活動を止めて欲しいです。


「えっ、…ラブラブ新婚生活ですか…」

 わかばちゃんは深刻な表情でココアをかき混ぜている。

「えーと」


「私もやりたいです!」

「チョップ」

「………いたい…」

 わかばちゃんは小さくて可愛らしいので軽く叩いたつもりが、良いところに入ってしまったようです。

 茜にチョップする時はもう少し強くても大丈夫なんですが、調整難しいですね。


 わかばちゃんは凄い痛そうだけど、なんか、顔が火照って無いかな?


「ごめんね」

 わかばちゃんの頭をさする。


「やるなら、今度私が用意する普通のボードゲームやろうね」

 家族全員ボードゲームが好きなので、家には何種類かの名作ボードゲームがありますし、茜と前に遊んだワクワクドキドキ人生ゲームのような少し変なのも有ります。


 知らなかったですけど、どうせラブラブ新婚生活のようなやばいボートゲームもまだ何種類かあると思います。


 因みに一番ボートゲームが強いのが母親です。基本的にポーカーフェイスですし、何より無茶苦茶運が良いです。とりあえず、いつの間にか勝ってます。その次に私と父親がきて最後に茜です。


 茜は直ぐに表情に出ますし、交換出来るゲームはお願いって言えば、たいていのものは交換してくれるので基本的に負けません。


 茜は基本的にお人好しで、楽しければいいという感じなのです。他のプレイヤーが楽しんでくれるなら敢えて負けにいくタイプです。


「…やりましょう…」

 うん、わかばちゃんならぼこぼこに出来る気がします。私は誰に対しても本気なのです。小さい子でもぼこぼこにします。


「…そういえば、動画はどうなったの?…」

 昨日ずっと見てたけど、あまり再生数が増えなかったので興味が無くなってしまって確認してないです。家に帰ったら真っ先に確認しましょう。


「…ゆかちゃんのダンス見てたら、近藤さんに見られちゃたから心配で…ごめんね…、…あの人、まじで何やらかすか分かんない…」

「近藤………、あー、わかばちゃんのプロデューサーの人ですね」

 なんか私をアイドルにしようと頑張っているみたいです。だけど、流石に動画を使って変な事は出来ないよね。

 凄い、心配になってきました。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る