9話握手会は運命の出会い
今日はなんと、なんと、待ちに待ったひなこたんとの握手会の日です。
昨日から楽しみすぎて全然眠れていません。
ひなこたん関連のイベントは美容の敵です。
握手会は長蛇の列になるので、寝ないと危険なのですが、ひなこたんと接触できるほぼ唯一の機会と考えるとアドレナリンがバフバフなのです!!
脳みそがフル稼働しています。
オーバーヒートです。
あっ、意味違いますね。
オーバーワークです。
握手会に持っていくものは暑さ対策のための水筒、タオル、ひなこたんへの愛を綴った手紙、ひなこたんへの愛です。loveです。結婚したいです。
そして、エチケットのための制汗スプレー、口臭対策ガム、ハンカチ、ティッシュで完璧です。
来ていく服は勿論一張羅です。麦わら帽子と白色のワンピース。清楚系をイメージした一品です。
さあ、ひなこたんに愛に行きましょう。
「行ってきますー!」
いつもよりも、声が数段が響きわたっています。
かなさんとりかさんと駅で落ち合い、目指せ、今回の会場となっている海の上の浮島であるシーパーク!
爆破とかが起きる事件が起きそうな場所ですが、多分、犯人もひなこたんを見れば勝手に自主するでしょう。
かなさんはいつもより、ピンク多めのスウィートローリタ系ファッションであり、りかさんは"I love ひなたん"ってかかれたT-shirtです。綺麗に文字が見えますが、そこは突っ込んでは行けません。
二人とも気合い入ってるみたいです。
シーパークに到着すると、開始1時間前ですがもうすでにかなりの人が会場前のまっていらっしゃいます。
この感じだと、経験上握手するまで3時間くらいかかりそうです。
開始まで一時間、行列で一時間、ひなこたんが遅れるので一時間です。
頑張っていきましょう!気力がなくなったらそこで絶望しかない病院送りです。
ひなこたんは優しいので握手会の途中で倒れるとなんとお見舞いのためのサイン入り色紙をもらえるという特典?が有るのですが。それでも、私はひなこたんに愛たいです。
「ここで、あったが100年目」
甲高い声が周辺に響き渡ります。
後ろを振り替えるとそこには、腰に手を当て、指を指してくるという典型的負けフラグのポーズをした女性が立っています。
「りりさん。おはようございます」
「ゆかさん、おはようございます」
いつもの恒例行事なので無視して挨拶をすると、りりさんは姿勢をただして、挨拶をしてきます。
西沢 りりさんは現役女子高生のちょっとツンデレが入った女の子です。同年代なので、仲良くなりたいのですが今のところ、仲良くなれる気がしません。
攻略はベリーハードです。
わかばちゃんとか、抱きつけば攻略完了するので、少しは見習って欲しいです。
「今日も私が一番ひなこたんからの愛情をもらうんだから」
愛情をもらった量をどうやって比べるかは甚だ気になります。
「ひなこたんから一番、愛情を貰うのはこの私です」
ですが、ひなこたんのことに関しては負けられません!不戦勝なんて許されません。
「確かに、ゆかさん、貴方は強い。だけど、私には秘密兵器が有るのです!」
りりさんが手提げ鞄から綺麗に真っ白の紙で包装され、赤いリボンで結ばれた箱を取り出す。
箱は太陽の光を反射して神々しく光っている。
それは、まさか!
「差し入れ」
差し入れ、それはプレゼントとほぼ同義であり、プレゼントは人の心を掴むための良い手段の一つである。
そして、もしかしたら、アイドルが贈ったものを使ってくれるかもしれないのです。
一石二鳥です。
「違いますよ」
「「「えっ!」」」
差し入れじゃないなら何だろうか?
箱の大きさは国語辞典くらいある。
「1ヶ月の間書き貯めた愛の手紙ですよ」
りりさんが当然の如く言う。
「「「えっ!」」」
愛が重い。愛が鈍器です。持ち込み規制されそうなほどです。
ちょっと、ひなこたんへの愛で負けたかもしれないです。
悔しい。
「では、並びましょう!」
私達の敗戦の雰囲気を感じとったのか、意気揚々とりりさんが行く。
「二人とも、差し入れ持ってきましたか?」
恐る恐る聞いてみます。
「持ってきましたですぅよ」
かなさんは手提げから高級そうなティーパックセットを取り出しますか。
「私も、持ってきました!」
りかさんは生身のCDを取り出します。
「ひなこたんが好きと言っていたアニメのOPのシングルです!」
りかさんってこういうところ残念なんですよね。
ふと、優しく頭に手を載っけられ、撫でられる。
「大丈夫ですよ、一番重要なのはひなこ様への愛ですから」
かなさんの普通の言葉使い初めて聞きましま!
頭撫でる手慣れてないですか?凄く気持ち良いですけど。
りかさんが羨ましそうに私達を見ている。あー、上手い原因はりかさんか!?
「りかも後で撫でてあげますぅ」
「わーい」
無邪気に喜んでる。20歳になって公衆の面前で撫でられるの恥ずかしく無いのかな?
私はまだ10台だから許されるのです。えへん。
絵になるので許してあげましょう。
「三人とも何そこでつったているのですか?行きますよ」
りりさんは私達がついて来てないのを気づいたようで、走って戻ってくる。
珍しくひなこたんは時間通りに来たが、えらい!衣装着るのに手間取って開始がいつも通り1時間遅れた。
あーあ、緊張する。
辛い、ひなこたんと愛たい。
日差しが燦々と照らす屋外から建物の中に入ったが、逆に熱気と汗による匂いが充満して、更に緊張により色々と辛いです。
「ゆかちゃん、大丈夫ですぅ?」
かなさんは自分も辛い状態なのに私のことを心配してくれます。きゅんときちゃいます。
りかさんはさっきから顔を下に向けてぶつぶつとなにかを呟いています。
少し、いやかなり近よりがたいです。
「りか、水飲みますぅ?」
りかさんはかなさんから渡された水筒のカップの水をがぶ飲みすると、また、何か呟きはじめます。魔法の呪文かな?
「軟弱ね、こんなのひなこへの愛の試練だと思えばへっちゃらよ」
「水飲まないといけないですぅよ」
かなさんはりりさんにも水筒のカップを渡します。
「美味しい!」
「それは良かったですぅ」
「分かったわよ」
りりさんはいきなり腰に手を当てて、負けポーズを作る。
邪魔になること分かっているのか私達を指指してこない。えらい、えらい。
「ゆかのひなこへの愛の強さは仲間達によっても増強されるのね」
綺麗などや顔だ。
「えっ、多分違うけど」
「あなたたたち、かな、ゆか、りかの頭文字をとってKYRのチームの強さによって、ひなこへの愛の力が増強される」
KYRって、"空気読めないR"的な感じでいやです。
「だから、私もチームを作ることにするわ、一人はひなこのため、みんなはひなこのためよ!」
りりさんは言い切った満足感に満ち溢れている。
そばにいて話を聞いてたのかおっさんが拍手する。
それに釣られて周りの人も拍手する。
良いこと言った雰囲気が出てるけど、違いますよね。
「みてなさいよ。私がゆかちゃんより、愛が重いことを証明してみせるわ」
何か意味ちがくないですか?
どうせなら私達ともっと仲良くなればいいのにな。
女の子ならいつでもウェルカムだよ。
「頑張ってくださいですぅ」
「はーい、次の方」
後、残り10人。
思い出したらまた、辛くなってきた。
side ひなこ
今日も今日とてアイドル活動です。
なんと今日はつつがなく会場まで来れました。えらい。誉めてください。プリーズ ギブ みぃ?
ですが、衣装着るのに手間取ってファンの皆様を一時間待たせてしまいました。服を着るのって難しいです。
プロデューサー曰く、2時間遅れるのは想定済みらしいです。ということは、1時間しか遅れていないということは快挙ですね!!
ですが、ファンの皆様を待たせてしまったので何時もよりも楽しめるように頑張っていきましょう!
ファンの方々は本当に色々な方がいて面白いです。
無茶苦茶臭い方とかただ、高級な物を贈ってくださる方とか好きなアニメのCDをくれる方とか、辞典並みの愛の手紙を贈ってくださる方とか、勿論読んでいます。
取り分け、私が印象に残るのは藤原ゆかちゃんです。あんまり、ファンを好き、嫌いとするのは良くないのですが、ゆかちゃんはめちゃくちゃ好きです。
さらさらな黒髪にぷるんとした肌、整った目鼻立ちに、心に届くような美声。
美少女です。ぶっちゃけ、全世界のどのアイドルよりも可愛いと思います。私なんかめじゃないです。
そして、そんな子が「ゆかたん、応援してます。頑張ってください」と言ってくれるのです。きゅんときちゃいます。お持ち帰りの選択肢はないんですかね?
これだから握手会は止められません。
いえ、違いますよ。プロデューサーにもうそろそろ握手会は危険だと言われているのに行っている理由はファンとの交流のためですよ!
決して、ゆかちゃんに会いたいからと言う不純な動機では無いです。
「ひなこさん、はじめましょう」
「はーい」
頑張っていきましょう。
ファンの笑顔が私の笑顔です。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます