2話 周りは変人、これぞリア充の極意
「「ひなこたん、うぉ」」
「「ひなこたん、うぉ」」
土曜日の真っ昼間に響く怪しげな声。
まるで宗教儀式のようです。
「皆さん、いったん止めてくださいませんかぁ」
今日も今日とて、頭から靴までフリルで一杯なかなさんが口をアヒル口にして、困った顔をする。
さっきまで大声で叫んでいた人達はすぐさま叫ぶのを止めてぴしっと整列する。
この人達、軍隊生活でも生きていけそうです。
今日は、かなさんにおよばれして、かなさんの所属するドルサー。実際はかなさんによるかなさんのためのクラブに来ています。KKKです、よそ者は排除されそうです。
あっ、因みにクラブはclubですよ。
ここは偏差値75の国内最高峰の大学内なんで大丈夫です。
「ゆかさん、りか。どうですぅか?」
どうと言われましても、メンバーの中の女の子のおっぱいがプルンプルンと揺れていてそちらに気を取られていました。
「なんか、たりませんね。これじゃあ、私達の愛がひなこさんに届きません」
りかさんが物憂げにゆう。
りかさんって美人さんだから凄い絵になるんですけど、話の内容が意味がわかりません。
「そうですぅ、そうですぅ。何か足りないのですぅ。ひなこさまへの愛はこんなにも溢れているのにぃー。表現出来ないなんて」
かなさんがおろおろとして机にしなだれかかる。
それを見てKKKのメンバーが反復幅跳びで10とれるくらいおろおろしている。
KKKのメンバーは多分、ひなこたんへの愛じゃなくて、かなさんへの愛で溢れていると思います!
「かな氏、そんなに気落ちしないで、ゆか氏ならゆか氏なら。きっと答えを教えてくれる」
ちょっと、りかさん!
KKKのメンバーのすがるような視線が痛い。
えっ、なんでりかさんもかなさんも凄く期待するような目でこちらを見てくるの。
どうする?
どうする?
こういう時は………
「ひなこたん可愛い!」
そうです、思考停止です。
藤原 ゆか さんちゃい難しいことわかりまちぇん!
「ゆかさんそうですぅ。私達の気持ちを伝えてなかったですぅ」
えっ、かなさん
「そうです、言葉にしなきゃ気持ちなんて伝わらない。100の行動より、1の愛の言葉を伝えないと」
えっ、えっ、りかさん
「ひなこたん可愛い」
「ひなこたん可愛い」
「ひなこたん、うぉーー」
「ひなこたん、うぉーー」
…
…
えーー。
まじで、この人達意味わかんない。
助けてひなこたーーーん。
この、盛り上がりは隣の吹奏楽団がうるさいと文句言ってくるまで続いた。
「今日はありがとうございます」
「楽しかったですぅか?」
「はい」
ひなこたん可愛いしか言って無かったけどそれはそれで楽しかった。
「また、来てくださいですぅ」
どうせ、今は帰宅部ですし、私も学校内でアイドルサークルを立ち上げても良いかもしれない。
帰り道の大通りをあるいていると突然、肩を叩かれた。
ほぼ、ナンパかスカウトだから無視したいのだが、無視すると家まで着いてこられる可能性がある。
なので、人通りの多いこの道路で対応するために、振り向くとそこに立っていたのは息を切らしたイケメンのおっさんである。人類の敵である、
因みに、男は悲しいことに20歳越えたらおっさんである。
「どうしましたか?」
雰囲気ナンパしてそうな男なので、私は防犯ブザーに手をかける。因みに、スカウトは会社の看板背負っているのでそうそう危険なことにはならない。スカウトを騙ったナンパは一番危険ですが。
この防犯ブザーは茜が危険だからと持もたせられたものである。
何回かお世話になったこともある安心安全の防犯ブザーである。
「君、アイド」
「興味無いんで、行きますね」
ちっ、ナンパじゃなくて、スカウトか、予測が外れました。
「ちょ、まってくれ」
その男は私の両肩を掴んでくる。
あれ、これは本当にスカウトか?
私は防犯ブザーを直ぐ使えるようにする。
「すまない、少し話を聞いてくれないかい?」
男は自分のしたことを理解したらしくすぐに手を引く。
「私、知らない人と長話するなって言われてるんです」
「すまない、少しだけでも良い。話を聞いてくれないかい?」
男はいきなり土下座になる。
これは引く。いきなり土下座は引く。
この男のテクニックか?考えろゆか、今年17になったピチピチJK(元男)兼アイドルオタク。
押しは川上 ひなこ!
ひなこちゃんは私の嫁!
よし、何が何でも家に帰るぞ。家に帰ってひなこたんの抱き枕でうにうにするんだ。
「すいません、わ」
「頼む、一緒にアイドルになってくれ」
まじで、このお兄さん何!帰らせてくれないのかな。熱血はゲームの中だけでいいよ!
泣くよ。泣くよJC泣かせたら犯罪だよ。中身おっさんだけど。
周りには着々と興味津々な野次馬の方々が集まってきている。
そこの方、スマホで写真とるのはNGです。プライバシーの侵害です。
びびりだから言えないけど。
後門の虎、前門の変人。逃げ場は無い。
「あれ、何、ドラマの一シーン」
「別れ、切り出したの?」
「告白だろ」
「二股かけてたんじゃない?」
周りのガヤガヤとした音だけが聞こえる硬直状態に陥る。
お互い無言。
「うわー、おっさんがお姉さんにS○X頼んでる」
「あれがパパ活じゃない?」
小学生の無邪気な声。
「まじで、JKに売春もちかけるとか最低だな」
「やっぱり、三股してたんだよ」
周りの声が大きくなる。
私とこの男の間には嫌な沈黙が支配した。
「えーと、すまない名刺だけでももらってくれないかい?」
男は警察に捕まることを危惧したのか、土下座を止めて名刺を渡してくる。
名刺には、名前と大手の芸能事務所の名前がでかでかと書いてある普通の名刺である。
「近藤 敦。少しでも興味を持ってくれたらいつでも電話をかけてくれ!いの一番にとるから!」
私が名刺を受けとると、綺麗な一礼をするとそそくさと去っていった。
私も先ほど叫んだら小学生に名刺をあげると、その場からそそくさと去った。
帰って、ひなこたん成分を補充しなきゃ!
この後の帰り道で、3回声かけられたがガン無視して、まいて逃げた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます