第13発 あの日の悲惨な出来事
男が真の世界に転移してエロスを極めていたその頃。
日本で或る女性が病院の一室で卒業アルバムを見ていた。
皆、笑顔で楽しそうに写っているが、その写真に男と女性は写っていなかった。
女性「(そうね、アイツとワタシ、どっちも不登校になったから。あの日以来)」
それは悲しい出来事だった。
中学校の頃、ある冬から春にかけて二人はお菓子を交換したのだった。
それがクラスの仲間たちの知るところとなった。
心無い生徒のせいだろう、黒板には女性と男のことを茶化した落書きがなされ、
給食にアブラムシを混ぜられたり、靴に画びょうが入れられていたりする毎日が続いた。
そのことが、女性の親と男の親との間での「お宅の子のせいでうちの子が」という喧嘩に発展し、さらに進んで、女性も男も、それぞれ地域環境どころか家庭内関係まで悪化してしまった。
そして数十年経った、現在。
女性は不治の病で、余命宣告も受けていた。あと数日持つか・・・分からない、と。
女性「(アイツ・・・。今頃どうしているんだろう。今頃別の女性と結婚して家庭を持ってるんだろうな)」
それは本来喜ばしいことであるはずだが、なぜだろう涙が止まらない。
女性は泣いたまま、そして息を引き取った。
決して安らかとは言えない表情だったが、
その表情を看取る者はだれ一人として居なかった。
女性が目を覚ますと、そこは天国の門であった。
天国の入り口に天使がいた。
天使「あなたは死にました。神様のもとに召されたのです」
女性「ここは・・・そうでしたか」
天使「やり残したことはないですか? 悔いはないですか?」
女性「やり直したい・・・何もかも。そう、何もかもやり直したいです!」
天使「3年間の待ったなしリカレントプログラムご存じですか?」
女性「え?」
天使「天国と地獄のほかに煉獄ってのがあるんです。まあ、煉獄創生ってヤツです。煉獄、いま過疎ってるから」
女性「なにそれ?」
天使「煉獄は、別名、真の世界とも言います。最近、スパルタ教育も行われてなくて、ゆるい感じだから、ぜひ応募なさって」
女性「はぁ」
天使「実は、君とお菓子を交換したあの男もいま煉獄にいるんです。ちなみにその男も独身です」
女性「それまたどうして?」
天使「事情は規程により秘密です。でも、あの広い煉獄でその男を見つけ出して、告白して成功すれば2人を日本に戻してあげる」
女性「アイツ・・・。そうね、煉獄で必ずアイツを見つけ出して、アイツを取り戻して一緒に日本に連れ戻す。必ず」
天使「話は早いね。じゃあ、君はオフィーリアと名乗るんだ。良いね?」
女性「はい」
天使「それと、決して自分から正体を名乗らないように。じゃあ、転移してもらおうか。それ~ッ!!」
女性は光に包まれると、真の世界へと転移していった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます