022 Learning シスターのおしごと!
「おはよう」
「おはようございます。ライカちゃん」
エヒュラ村に戻ってきて数日。ジーンさんの代わりに教会に住むことも出来る私だが、今でもミュラとリューンの家でお世話になっている。理由としては、私は料理が出来ないからというもの。それにリューンがちょっと寂しそうだったから。
「今日の朝食はこれよ」
堅焼きパンに葉物野菜とちょっとしたチーズが挟まったハンバーガー風のパンが今日の朝食だ。それを食べ、いつも通りのお茶を一服いただいてから私は出勤という形で教会に向かう。
「うん、ごちそうさま。行ってくるよ」
「はい。行ってらっしゃい」
ただいまを言える幸せを最近かみしめたばかりだが、やはり行ってらっしゃいと言ってもらえるのもなかなかに感慨深い。通勤といっても徒歩数分なのだが、敢えて村を一周するように散歩してから教会に入るようにしている。
「おぉ、おはようございます。シスター・ライカ」
「今日もお元気そうで何よりです」
村の大規模な畑は綿花の栽培をしているが、野菜とか食用の物に関しては家々の畑で普通に栽培されている。フォレストバレー家やリーナのストラテジー家は他に仕事があるから、農作業をしていないものの、普通は自分で食べる分の野菜などは自分たちで作り、小麦のような村全体の財産を全体の農地で作っているらしい。確かに、麦や綿花は納税の上で欠くことができない栽培品目だ。
村の人たちと挨拶や世間話を交しながら、教会の建物に入る。私が旅に出ている間にミュラがかなり掃除をしてくれたらしい。おかげでほこりっぽさはなく、綺麗で居心地のいい空間になっている。
「さてと、今日もよろしくお願いします」
横にすれば私の肩幅くらいあるサイズ感の女神像に一礼して、仕事を始める。と言っても、シスターの仕事は治療と儀式に大別されるが今は本当に仕事がない。それもあって私は今、ひたすらこの世界の歴史や宗教その他もろもろの勉強に勤しんでいる。
この世界は主神ハートロードを祀る一神教が多く信奉されていて、その名もずばりハートロード教というらしい。すなわち、私はハートロード教のシスターというわけだ。にしても、あの幼女は本当に神様だったのか。
幸いなことに教会には地図もあった。どうにも私が今いる国はルーラック王国というらしい。王都はミャルセットより更に東にあるらしく、そこにハートロード教の聖地もあるらしい。他にも何カ国かがあるようだが、他国については詳しく載っていなかった。どうやら教会にある地図はルーラック王国の地図のようだ。
「薬草や治癒術の情報も更新しておかないと」
この世界に存在しない治癒術とか使って、ごまかしが利かなかったら大変だ。治癒術、かあ。前回の世界でも治癒術だった。回復魔法とか、白魔法っていう言い回しはされない。もちろん補助系の魔法もあるが、そういったものは聖属性魔法に近い扱いをされる。
つまるところ、怪我を治すことは出来ても死者を蘇らせるようなゲームみたいな魔法はないというわけだ。逆に、飲んだ人間を仮死状態にする薬草はあるらしい。毒や呪いの影響を最小限に抑えるために煎じられるというが、そこから復活出来るかどうかはその人の体力次第だと書いてある。
「それは本当に薬草なのだろうか……?」
日本で生活していた頃から植物は好きだった。それもあって薬草学を勉強し直すことは苦にならない。時間を忘れて没頭してしまうくらいには。
「ライカ―!! お昼ご飯よー!!」
窓をこんこんとノックするリーナ。お昼ご飯をいつも持ってきてくれる。シスターの仕事は現金収入こそないが、そもそもこの村では現金を使う機会はほぼない。
「今日のお昼はフロッゲコ肉のロースト!」
やはり草原の覇者の被害が大きかったようで、エヒュラ村では小麦の節約が励行されている。その結果がフロッゲコ肉食だ。確かにちょっと硬いが食べられる。とはいえ問題は塩胡椒が貴重というせいで味らしい味がしないこと。
「ミャルセットに買い物に行くとしたらいつ?」
「そうね……明日いえ明後日にしましょう。大きなバザールが開かれるそうだから」
「なるほど。それは楽しみだね」
そんなやり取りをしながら、食後は再び薬草についての勉強や、実際に教会裏で育てられている薬草の世話に奔走するのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます