第6話 救いの一皿
夕食も落ち着いて食べられないなんて、今日は本当にいろんな連中に振り回されっぱなしだ……。
私がうなだれていると、ミアがビステッカではない別の料理を持ってきた。
「何これ?」
「スープパスタだよ!新作料理でまだメニューにも載ってないんだ。」
白い器にスープがなみなみと入っている。
中には黄色い麺が入っており、刻んだ青い野菜とベーコンがのっている。
「キンちゃんがあの二人を止めてくれたから、お店はガラスが割れただけで済んだし。そのお礼に、これはサービスだよ!……って、ちょっとキンちゃん、これそんなにお腹減ってたの?」
ミアが説明するしている途中で、私は食べ始める。
私が探していた料理と似ている!
「……おいしい」
「ああ、よかった」
「……でも違う。こんな料理って他にもあるの?」
「そうだね、いろいろあるよ。うちにあるのはこれだけだけど。そういや最近、麺類系の料理を出すお店が増えてきているね」
「そうなんだ……」
「何か探しているの?」
「実は……」
私は冒険者になった経緯をかいつまんで話した。
昔、これに似た料理を作ってくれた人がいたこと。
その人を探していること。
その料理をまた食べたいこと。
「わたし、キンちゃんのお手伝いをするよ!その人を一緒に探そう!」
「それはありがたいんだけど、ミアはバイトしなくて生きていけるの?」
「ちょっと!わたしのことをどれだけ貧乏だと思ってるの!?バイトをやめるわけじゃないから大丈夫だよ」
「それなら手伝ってもらおうかな」
「よろこんで!」
そして、明日の朝、ギルドで待ち合わせをして、作戦会議をしようという話になった。
外を見ると、衛兵たちが土下座中の二人を取り囲んでいるところだった。
私がここにいたらめんどくさいから帰るか。
「ごちそうさま。お金は本当にいいの?」
「いいってことよ」
「ありがとう、また来るよ」
店を出ると、道にはクレーターのような穴。
壊れた店や家屋の破片、割れた窓ガラスなどが散らばっている。
野次馬の陰から2人を見てみる。
5、6人の衛兵が取り囲んで尋問しているようだった。
「この辺の破壊はお前たちがやったんだな」
「そうだ」
「その通りです」
リーダー格と思われる衛兵の質問に素直に答えている。
「じゃあ、なんでお前らはその態勢のまま固まってるんだ」
「知らねーよ!」
「金髪の女の子がやってきたら、急に動けなくなってしまって……」
お?私にも事情聴取がやってくるかな?
別に私は悪いことはしてないので、緊急に身元割り出しとかは進まないだろうな。
こいつらには最低一週間はこのままでいてもらおう。
あー、スープパスタおいしかった。
アレにはかなわないけど。
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