創設!現代怪奇研究部!!(前編)
「……で、1年生ながら部活の創設をしに来た、と」
「はい!この部活動は今後必要になる事が十分に見込めると、お手元の資料からもお分かり頂けると思います」
かなり手の込んだ資料を持ち、担任の
何故彼女がオカルトマニアである事を知られる勇気を持てたのか……それはこの日から数日前、僕と陸式さんが初めて昼飯を一緒に食べた直後に遡る……。
「……そうだ!部活作るなら連絡とか出来た方が何かと便利だよね!【KINE】交換しようよ!!」
【KINE】とは主に中高生の間で多用されるSNSで、僕もやりとりする相手こそ少ないが(というか家族以外いないけど)利用している。
「え、本当に!?ぜひぜひ!!」
僕には得しかない話、ノらない訳がないじゃないか。
……なんか、1日の間で仲深まり過ぎちゃいないだろうか。いくら共通の趣味を持っているとは言え、男女の壁が出来て普通のはずなのに。
「……よし、交換できた!これで急な話もすぐに連絡出来るというものだね!」
「そうだね……なんかその、ありがとう」
「ふふふ、じゃあ代わりに部長の座は私が頂いた!!」
「なっ」
「えへへ、じょーだんだよじょーだん!やっぱりニブちんだなぁ」
そう言って悪戯に笑う顔を見ると、不思議とこちらも楽しい気分になった。
その日の晩、晩飯前のちょっとした時間に茶の間でテレビを見ていた時の事である。
【KINE】の通知音が鳴ったので確認すると、陸式さんからの連絡だった。
『部活用のグループチャットを試運転してみたよ!このコメントが読めたら返信をオナシャスd(OvO)』
……こんなに嬉しいものなのか、ネット上とは言え誰かと話すのって。しかも画面の向こうにいるのが学内でもとびきりの美少女だと思うと、胸のトキメキが止まらない。
「兄貴、その女は誰じゃ?」
「ッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!?」
妹の
「ふぅん、兄貴もとうとうリア充の仲間入りかぁ……。マジ無いわ」
妹はアニヲタである。本人は秘密にしている(つもりだ)が、裏の顔は人気の現役JCコスプレイヤーの【SAYA】で、SNSのフォロワー数は約17万人と、一般人としてはそこそこ多いと思われる。で、非リア充である。僕と千波は非リア仲間だった。
「で、結局誰なんその人?どーみても女だよねそれ」
「随分とまぁあたりがキツイな千波」
「ったりめぇでしょーが!!裏切られて平静でいられる奴いるかっての」
千波は僕が女子と話す事が気に食わないという。【非リア同士】という関係が崩れるのは即ち、仲間関係が解消されるという事だった。彼女からして、今の僕は裏切りを謀った
仇敵なのである。
「えっと……信じてもらえないかもだけど、この人はクラス1、いや学園1の美少女なんだ。僕と同じオカルトマニアで、でも僕と違って明るい」
「そんなアニメみたいな展開、兄貴に限ってあるわけないじゃん!!ちょい貸してや」
するとものすごい速度で画面を操作し、よりによってテレビ通話の約束を取り付けてしまったのだ。現役JCのコミュ力恐るべし。
「もう言い逃れは出来ないかんね。もし美少女ってのが嘘だったら今度兄貴に女装してデート行ってもらうから」
「じゃあ本当だったら?本当だったら僕の要求聞き入れろよ?」
「いいともその賭け乗ってやるよ何でも言う事聞いてやるぜ」
大した自信である。よほど僕の発言が信じられないらしい。
…………ピンポン!
通知音。陸式さんからだ。
『えぇっとぉ……見えてる?』
日中と変わらず、美少女は微笑む。千波は開いた口が塞がらない。
「兄貴がめっちゃ美少女とお近付きになっとる…………!!明日世界終わるんか!?」
随分な言い様である。
「あぁ陸式さんごめんね?実は妹が陸式さんの顔見てみたいって言うから……」
「えぇ……私のなんか見たら目潰れちゃうよ〜」
「綺麗すぎて目が潰れそうっスわ……」
妹はすっかりゲンナリしてしまって、
「妹いたんだね槐棠くんって」
「あれ、言ってなかったっけ?中学生なんだ」
「中学生かぁ……。高校受験頑張ってね!」
中3とまで言ってないのに何故……と思い辺りを見回したら、スマホの画面のすぐそばに妹のペンケースが置いてあった。しっかりと『中等部3年 槐棠千波』と記されている。
「……あっ、もうこんな時間だったんだ!私お風呂入ってくるからこの辺で!また明日学校でね、槐棠くん!!」
「うん、また明日!」
あぁ、笑顔が眩しい。僕の心は彼女によって癒された。
通話が終わり、千波がノッソリと顔を上げる。その顔は悔しそうに眉を
「……武士に二言は無い。何なりと申せ兄貴よ」
「お前武士じゃないだろ」
慈悲なき一刀両断。ボケ殺しとも言う。
妹は正座して僕に向き直り、改めて言う。
「何でも言う事は聞くよ、ただし1つだけな」
「……どうしようかなぁ」
いざこうなってみると、思いの外願いが湧いてこない。人生が満ち足りている証拠だ。
「じゃあ、1つ宿題をやってもらおう。千波にしか出来ない、特別な奴を」
翌朝、僕はいつも通り登校した。だがいつも通りではない空気が、僕が教室に入った瞬間流れ始めた。
「……なぁ、お前が槐棠か」
「えっ……そ、そうだけど……」
「お前……陸式さんに何したんだ?」
「え……?」
陸式さんはその日、オカルト好きを公表した。周りは皆、その原因は僕が何か吹き込んだからではないか、と睨んでいたのだ。……それこそ、呪い的な何かを、だ。
「僕そんな事出来る訳ないよ、そんな力持ってないもの」
「でもお前以外に、オカルト的なものに詳しい奴はいねぇ。お前以外に、陸式さんをオカルトマニアに洗脳は出来ないんだよ!!」
そんな……僕は、僕は何もしていない。それに、陸式さんは僕と知り合う以前からオカルトに触れていたのだ。それを証明する証拠がないだけで。
「おはよう皆!!槐棠くんを囲んでどうしたの?」
「陸式さん丁度良かった!コイツなんでしょ!?陸式さんにオカルト吹き込んだのは!!」
「え、違うよ?私槐棠くんとは高校ではじめて知り合ったけど、オカルトは中学の頃から好きだよ?って、クラスのグルチャでも言ったじゃ〜ん!」
……おかしい。彼女がそう言っているのだから皆が信じないのは違和感がある。その発言は皆が見たはずなのに、誰かがわざと僕を
「……そう言えばそうだったな、すまねぇ」
僕に詰め寄って来た奴──やっぱり名前が分からない──はあっさりと引き下がった。
「……何だったんだ……一体……」
「酷い言いがかりだなぁ。私、本当にオカルト大好きなのに……」
流石の陸式さんもションボリである。僕の
このクラスの中にいるだろう、陸式さんの笑顔を曇らせた犯人が許せない。
「……陸式さん、部活設立の話だけど……少しだけ待ってくれないかな。僕が呪いなんて使ってないって事を証明してから、皆に認められた状態で活動を始めたいんだ」
「……分かった!だけど私も手伝うよ?部員1号の特典として、『部長が何でもヘルプしてくれる権利』を進呈しよう!
……要するに、私に頼ってくれて大丈夫、って事だよ!!」
ああ、なんて信頼出来る言葉なのだろう。僕は
「ところで……クラスメイトの名前ってどのくらい覚えてる?」
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