第5話 そして今5月4日土曜日

 昨日、父が母についていって、調停をしたらしい。

 母は20万払い、円満に解決できたと思っていたらしい。

 しかし、2019年5月4日夜09時09分。

 関さんが自宅に請求書を持ってきた。その中に多額の慰謝料がのせられ、総額が200万円を超えた。

「昨日の話し合いの結果が反映されてない」

 と母が言うが、関さんは

「慰謝料を要求しないとは言っていない」

 としれッとして言った。落ち着き払って、不気味にイスにもたれかかっている。

 2019年5月4日夜11時15分。ようやく帰っていった。

 しつこくて怖かった。

「奥さんお金稼いでるんでしょ?」

「退職金でアパート買ったって聞きました」

 と、たかり根性がものすごかった。

 わたくしが、

「妄想」

 と言ったら、

「妄想かもしれません」

 と認めた。

 両親は

「そんなことは言ってないし、うちが公務員だから勝手に想像したんでしょう」

 しかたなく、母にお金が無いことを説明する羽目に。

「母は800万の借金をしてアパートを買ったの。年だから30年ローンは無理。短期で返すかわりに割高でアパート収入の13万のうち、3万しか手もとに残らない。それでもうれしいじゃない?」

 という。アパート経営は母の古くからの夢で、オンボロでも欲しかったのだ。

 だが施工屋にそんなことを言ってどうするのだ。

 陰謀論ではないが、間違いなくこちらのお金を、過大に見積もっている。

 うちにお金があるという前提を勝手につくって、200万円ともってきたが、その請求書は不備があり、わたくしは父に怒鳴られながらも、

「欠陥不備の書類。書き直して。話をするだけ労力の無駄」

 と言ったが、聞き入れてもらえない。

「訴えてよ。その方が楽だから」「帰ってよ」「もういや」「迷惑」と声をあげるも、わたくしが怒鳴られるだけ。ついに過呼吸が出始めた。

 くるいそうで足を踏み鳴らし、流しにとりついて音を立てた。ぜんぜん帰ってくれない。

 帰ったのは。2019年5月4日11時15分。

 二時間もイスにふんぞり返ってくれて。

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