友達だから帰りも一緒に帰る

「なぁ、いっくん。やっぱりからかわれてるだけだよ」

「うるせーな。さっきからそればっかり」


雉飛も矢島もさっきから『からわれてる』って言ってばかり。優花先輩とは全くすら関わった事ないけど、あの人はそんな事はしない、と断言出来る。


だって、あの人は素敵な笑顔が出来る人だから!


「いっくん………」

「なんだよ? まだ優花先輩事悪く言うのか!」

「いや、もう、いっくんが何考えてるか分かったから何も言わないよ。でもね、落ち込むのは早い方が良いから───」

「ちょとまて!」


俺は雉飛の言葉を止めて、スマホにきたメールに目を向ける。そこには優花先輩からのメールが来ており俺は直ぐ様にそれを開く。



一和いちかず君。帰り校門で待ってます。



「うぉぉおおおおお!!」

「うゎぁ!? どうした!?」


俺は歓喜の叫びを上げる。まさか、いきなり放課後に誘われるとは思ってもいなかった。


「おい! 見ろ! 優花先輩は、からかったりしてない証拠だ!」


俺は雉飛達にスマホを画面を見せつける様に見せると二人も口を開けて驚愕していた。


「マジか………えぇ、いっくんバカなのにモテるの?」

「いやいや、やっぱりからかわれてるだけだって」

「おい、お前ら聞こえてんぞ」

「うーん、やっぱりそうか? いっくんだもんなぁ、ありえないし」

「あー、でもいっくん顔で言ったらカッコいいよな。目付き怖いけど」


俺の声が届いてないのか二人はひそひそ、と二人で話ている。ほほう、だったら俺はもう行かせて貰う。優花先輩が待ってるからな!



ひそひそと人の悪口を言ってる二人を置いて俺は急いで校門に向かった。


***



「あー、そうだ。まだ時間あるんだ」


校門に来たら“まだ授業中”だって事を思い出して、肩を落とした。


それから三十分が経つ。まだ来ない。

それから一時間が経つ。まだ来ない

それから一時間三十分後、


「いっくんー!」

「ん。お前らか」


雉飛達は来たのだが、優花先輩は来ない。もう段々と生徒会長達は帰り始めているのにまだ優花先輩は来ない。


「まだ、来ないのか?」

「うん。まぁ、優花先輩にも色々あるんだよ」

「………そっか」


矢島は座り、雉飛は横で立ちながらジュースを飲んでいる。


「ん?  お前ら帰らないのか?」

「まぁ、優花先輩来たら居なくなるから。それまでな」

「そっか」


それから三人でぼ~~~っとして待つ。三人が三人共、空を見上げるだけ。それ以外何もしない。





「───………うーん、来ないね」

「そうだな」

「やっぱり、からかわれたんじゃないの?」


今は十七時四十九分。もうそろそろ来ても良いんだけど優花先輩は一向に姿を見せない。いや、ありえない。優花先輩は人をおちょくる様な人じゃないから、絶対にここに来る!


「ごめん。俺そろそろ帰るわ。母ちゃんに買い出し頼まれたから」

「おう。またな」


矢島が帰って行き、それから十分後に雉飛も『用事があるから』も言って帰ってしまい。


「俺、一人か~」


今は十八時十二分。いや、まだだ優花先輩は来るからここで待つんだ。


────優花先輩は必ず来る!


そう思っていると澄んだ声が聞こえてきた。


「一和君~! ごめん! 委員会が長引いいちゃって!」


息を切らしていて、手を膝に付けて前屈みになっている優花先輩。俺の為にそんな急いで来てくれる優花先輩…………なんて良い人なんだ。


「あはは、待ってるって言ったのに遅れてごめんね」

「いえ! 大丈夫です! 優花先輩こそお忙しい所ありがとうございます!」

「え? いや、誘ったのは私だから。うん、待っててくれてありがとうね」


はぁ、可愛い。え?何処が可愛いって、全部。


「あの、これからもこんな時間になるかも知れないけど、一緒に帰ってくれるな?」


これからも………?


「はい! 喜んで!」

「そっか~良かった、なら、行こ一和君」


俺は優花先輩とその日は帰った。

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先輩!付き合ってくれませんか!? 南河原 候 @sgrkou

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