キューピッドの嫌がらせ
みのむし
第1話 気づいた時には
私「神尾 澪奈」は亡くなった。
その事実に気がつくまでには少しの時間と落ち着きが必要だった。
車に轢かれたという死因を理解した頃にはなんともいえない浮遊感に慣れてきたころであった。
「気の毒ねぇ」
「まだ若かったのにねぇ」
他人事のように話している主婦の世間話や何事だとちらちらと興味ありげに赤く光るパトカーと救急車のランプの方を見ている通行人がなんだか妙に鬱陶しく感じ始めたのはきっとおかしいことではないだろうと自分に言い聞かせ終わった時には私の遺体はその場に無かった。
自分の葬式を見るのは何とも言えない気分になるものなのだなということを知ることになるとは昨日の私は思いもしていないだろう。
また、両親が大泣きしているのを見るのはまるで自分の死よりも胸が苦しいと知ることも。
私の死は学校でちょっとした話題となったらしい。大半は他の人と同じように他人事のように憐れんだ世間話にされるばかりだったが。
だが、ある1人の生徒だけは違った。
「宮田 慈輝」
彼は私に片思いをしていた男子である。
多分本人は気づかれていないと思っていただろうが
申し訳ないことに当人からは丸わかりだった。
なにせ私の事を図書館で会ったときにチラッと見てくるし、目があったり、道端でバッタリ会ったりすると耳を赤くしてそそくさと逃げるように通りすぎて行くため正直バレバレにも程がある。
でも申し訳ないことに私は恋愛に興味は無かったし彼のことを特にどうとも思っていなかったのでどうもしなかった。
……そういえば彼は私に片思いをしていたくらいしか印象が無かったけれど、普段は何をしているかなどはあまり知らない。
ちょうど死んでからお迎えは来ないし誰からも見えはしないので趣味が悪いとは思うが暇潰しにしばらくの間彼に付きまとってみるか…。
キューピッドの嫌がらせ みのむし @minomusinkaigyo
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