デートのお誘い

 翌朝、いつもより早起きをしたジェリーは身支度を整えて家を出た。ジョゼフじいさんの農園へと向かった。


 ジョゼフじいさんの家の扉をノックすると、ローザが応対してくれた。

「あら、ジェリーじゃない! 珍しいこともあるものね」

「俺だって早く起きることくらいあるさ。ローザだって、ずいぶんと早起きじゃねーか。まだ寝ているかと思ったよ」

「色々と、事情があるのよ……」

 ローザが肩を竦める。

「ジョゼフじいさんは?」

「まだ寝ているわ」

 そう言って、ローザは奥の部屋に視線を向けた。

 部屋の中から大きなイビキが聞こえてきたので、ジェリーは苦笑いをした。


「それで、朝早くから何か御用? メアリーは一緒じゃないの?」

「あぁ、まーな。起こされる前に家を出て来たから。もしかしたら、行き違いに家に来ているかもしれないがな……」

 メアリーの残念そうな顔が頭に浮かんだが、ジェリーはそれを払拭するかの如く頭を激しく振るった。——それよりも、ジェリーはローザに会いたくてここにやって来たのだ。

「昨日のあの場所……山の土砂を撤去した先に、一緒に行かないかと思ってな」

 ジェリーがモジモジしながら言うと、「あら」とローザは目を瞬かせる。

「もしかして、デートのお誘いかしら?」

「そ、そんなんじゃねーよ!」

 思わずジェリーは声を上げた。

 その顔が真っ赤に染まっていたので、ローザはケラケラと笑う。

「冗談よ、冗談。それなら、メアリーを誘ったあげれば良かったのに。お手伝いをしてなかった?」

「邪魔の間違いだろう? やったのは、ほぼ十割俺だから、大丈夫だよ」

 ジェリーは苦笑した。

「それに、メアリーとはいつだって行けるしな」

 毎日お誘いに来る、メアリーの姿が頭に浮かんだ。

「う〜ん。まぁ、そうかもしれないわねぇ……」

 ローザは少し考えた。

 ジェリーのお誘いに何と答えたら良いものか、躊躇ちゅうちょしているようであった。

「……まぁ、大丈夫かな」

 ボソリと呟いたローザは、やがて頷いた。

「うん、行きましょう。折角だから、サンドイッチでも持って行って、ピクニックしましょう!」

「そりゃあ、いい!」

 ローザの提案に、ジェリーはパチンと指を鳴らす。

「それじゃあ、用意するわね」

 ローザが台所へ向かって行ったので、ジェリーもその後を追った。せめて、ラップ切りくらいは手伝おうと息巻いたものである

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