報酬は壊れたビデオデッキ

 オランゴの商店は、この村唯一のお店である。村に一軒しかないこの商店では食料品や日用品はもちろんのこと、電化製品や書物、骨董品こっとうひんなど様々なものを取り扱っていた。


 そんなオランゴの商店に、ジェリーたちはジョゼフじいさんの農園から作物を運んだ。量があって重たいのと長い距離を歩かされたのとで、か弱いメアリーは真っ白に燃え尽きていた。

 ソファーに横たわったメアリーは、うんうんうなっていた。

「すみませんね、オランゴさん。まさか、メアリーちゃんがこんなにもひ弱だなんて思わなくて……」

 ローザが溜め息を吐きながら、店主であるオランゴに頭を下げる。

「いいさ。構わないよ。ゆっくりして行ってくれ」


「何か面白いものはないかい?」

 メアリーが回復するまでの間、ジェリーは暇潰しに店内を見て回ることにした。

「んー、そうだなぁ……。ビデオデッキくらいならあるが……」

——ビデオデッキ?

 いつの時代のものだ——。

「いや、そもそも、家にテレビがないし……」

「そりゃあ、残念だ。壊れていて、修理をしなければ使い物にならないようなものだから、引き取って貰いたかったんだがな」

「だったら尚更なおさらいらないわ!」

 ジェリーは声を荒げたものだ。


 そんなジェリーとオランゴの会話を聞いていたローザは、ふと何事かを思い立ったらしい。悪戯いたずらっぽく笑みを浮かべた。

「じゃあ、私が買って、ジェリーにプレゼントしてあげるわよ」

「いや……。だから、いらないって……」

「遠慮しないでよ。これが、お手伝いをしてくれた報酬ほうしゅうだから」

「はぁっ!?」

 ジェリーは思わず声を上げてしまう。

「いやいやいや、報酬をくれるって聞いたから頑張ったんだけど……」

「これがその、報酬よ」

「いやいやいや! 割に合わねーだろ!」

 全力で拒否するジェリーの肩を、いつの間にか後ろに立っていたメアリーがポンと叩く。

「……貰えるものは、貰っとこう。……これ、生きるための鉄則……」

「いや、貰ってもゴミだし、何の役にも立たねーよ」

 ジェリーは断ったが、不用品を押し付けたいオランゴにまで結託けったくされてしまい、結局はガラクタのビデオデッキを押し付けられることになる。


 家に持ち帰ったが、使い道がないのでビデオデッキを押し入れの奥底にしまう。

「あれ、なんだろう。目から汗が……」

 ほろりと、ジェリーの瞳から光るものが流れた。


——果たして、このジャンク品に今後、日の目を浴びることがあるのだろうか。

「いや、ねーだろう!」

 ジェリーは頭を抱えたのだった。

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