凸凹三人衆

「何よ、その格好……」

 パジャマ姿で農園を訪れたジェリーに、ジョゼフじいさんの孫娘ローザの目は冷ややかだ。

「せめて、人ん家に来るのなら、身だしなみを整えてきなさいよ!」

 ローザがつっけんどんに言い放つ。

 そんな孫娘の手厳しい態度を、ジョゼフじいさんは自身の顎髭あごひげでながら宥めた。

「まぁまぁ、ローザよ。余りお客人に対して、あれこれ言うのは失礼じゃぞ」

「客人なら客人の礼儀があるでしょうが。こっちまで恥ずかしくなってくるわ!」

 ローザは腕組みをし、プイッとそっぽを向いた。

「……恥ずかしくない……。ジェリーの水玉パジャマ、可愛い……」

 横からメアリーが、よく分からないフォローを入れる。


 ローザは深く溜め息を吐いた。

「あなたたち、何しに来たの? 今は、作物の収穫の時期で忙しいのだけれど」

「ああ。そんなら、手伝おうか?」と、ジェリーは作物を踏み付けながら申し出た。そんなジェリーの言葉に被せるように、メアリーは「……応援を」と呟く。

「何もしなくていいわよ!」

 二人が戦力にならないことは見るよりも明らかだ。

 ローザはキッパリと二人からの申し出を断った。

 そんな三人のデコボコぶりを、ジョゼフじいさんは微笑ましく眺めていた。


「別に、俺たちは邪魔しに来た訳じゃねーよ。特にやることもないから、何か面白いことが起こらないかなー、なんて思って、見に来ただけだし」

「それが十分、邪魔だっていうのよ!」

 ハァと、ローザは怒鳴り疲れて酸欠気味になったようだ。頭を抱えている。


「……まぁ、いいわ。暇っていうのなら、せいぜいこき使わせてもらうわね。作物をオランゴのお店にまで運ぶのを手伝ってもらうわ」

「……タダでやれと?」

 メアリーがボソリと呟いたので、ローザは額に青筋を立てた。

「アンタ、いい度胸しているわね」


 すると、横からジョゼフじいさんが口を挟んできた。

「まぁ、よいよい。お礼は弾むとしよう」

「ちょっとおじいちゃん! 勝手なこと、言わないでよ!」

 祖父をとがめるローザであったが、既にジェリーたちは報酬目当てに張り切っている。

「よーし! 働くぞー!」

「……おー」

 ジェリーの気合にメアリーも同調して拳を振り上げた。


「まぁまぁ、やる気になってくれているようじゃし、手伝って貰えるのは有り難いじゃないか。現金は無理でも、オランゴの店に行くのだから、代わりに何か買ってあげるでもいいじゃろう」

 ジョゼフじいさんの言葉に、ローザは息を吐いた。

「……分かったわよ。手伝ってもらうのに、タダっていうのも悪いものね」

 ローザも観念して、財布の紐をゆるめることにしてくれた。

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