陰謀だっ!!(2)

はたして、私の極限まで高まっていたぶら下がりたい欲求は、開きかけた扉の真ん前まで行って残酷な形でシャットダウン、跳ね返された。


悶々としながらフィットネスジムを後にして、夫のM夫くんにコトの詳細をしゃべりまくると、やはりM夫くんも「昨日は故障してなかったように思う」とのことだった。


単に私が残念過ぎる体質だからこのようなネタがもたらされるのか……それにしても、あまりの仕打ちだ。


この日、私たちは旧ジムに退会手続きをしに行くことにしていた。

向かう車中で、そのジムでもラットプルダウンがいつも故障していたこと、それをずっと放置してなかなか直さないジムの事情とは? など、あーでもないこーでもないとM夫くんと話し合っていた。


そして、「もしスタッフに退会の理由を訊かれたら、故障中のあのマシンを指差して『アレがいつも壊れたままだからです。アレがやりたくて会員になったのに!』(←ウソ)と言ってやろうかな〜」と半ば冗談、半ば本気で言っていた。

今も、絶対にアレは壊れたまま放置されてるに違いないのだから。


と・こ・ろ・が。

受け付けカウンターにつくやいなや、一人の男性が揚々とラットプルダウンをやっている図が目に飛び込んで来た。


私が、あんなにやりたくてやりたくて胸を焦がしていたマシン。それができないせいもあって、結果としてここを退会しようとしている。

それなのに、期待の新しいジムでは入会直後に故障。そして、こっちのジムでは、あんなにずっと故障中だったはずなのに、ケロッと稼働している。


とっさに、私の頭に「陰謀」という言葉が浮かんだ——。


このエリアでは、このわたくしをとする、何かの陰謀が働いているに違いない。


だから、私が新ジムに入会したという情報が伝わって、あっちのマシンとこっちの壊れたマシンをゆうべコッソリ入れ替えたんだわ!!


この二つのジムは経営母体がいっしょなので、そんなのオチャノコサイサイだ。


M夫くんは、そんな有名人でもあるまいし自意識過剰だとか言っていたが、最後に「そもそも何のためにそこまでする?」と呑気に訊くので、「それがってものなのよ!!」と私のご立腹の勢いは止まらなかった。


いったい私は、いつになったらぶら下がれるのか。


そして、新ジム通いの行方は。。。

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