水着回改め水着会
ジェシーがあんな事を言うもんだから、楓も玲も純太も皆乗り気になっちゃって、八王子スクエアの帰りに、駅前の「ジェレオ八王子」で水着を選ぶ事になってしまった。
「おうおうおう! 漢なら
お? じゃねぇよ。
流石に前時代過ぎて皆付いてけないって。
俺はナイアにアイコンタクトをとった。
するとナイアはこくりと頷いてくれて、翔の耳を引っ張っていった。
「あちゃちゃちゃちゃ!? 姉御っ、耳がとれちまいますってっ!」
「翔、風土たちには風土たちの文化があるのです。ここは彼らの意思を尊重するべきでしょう」
「そんな事言って~、姉御も実は水着選びたかったんじゃないっすかー? あいたっ!?」
「言葉が過ぎますよ、翔。私なら自分で自分の水着を召喚する事が出来ます」
へぇ、やっぱりナイアは凄いんだな。
衣服の変更は、勿論純太や玲、ジェシーでも召喚出来るだろう。
しかし、海にいる間……ともなると
召喚士を目指し始めた俺たちにとって、それは厳しいだろう。
だからこうやって――――
「ヘ~イ、風土ぉ? 似合う~?」
振り向いたらそこには爆弾という名のオアシスがあったそうな。
ジェシーの白く美しい張りのある膨らみ。
日本人とこうまでして身体の作りが違うのかと思ってしまう程のくびれ。
性格、気質も相まって照れのない爽やかな笑顔は俺と純太の顔を桜色に染めた。
「……いい」
「おう、いいな」
俺はぼそりと呟き、純太も続いてぼそりと同意した。
ジェシーの白い肌と薄い緑色のビキニのコントラストが非常に映えているように感じる。しかも紐のボトムスとは…………やはり見せられる身体を持った女性は素晴らしい
翔はやはり大人なのか、「ヒュ~」と口を尖らせるばかりだ。
圭織さんが着たら、多分また違うんだろうけどな。
「アハハハ! お二人さ~ん、鼻の下が伸びてるよー?」
気さくに笑うジェシーは、俺たちを指差して二コリと笑う。
そんなに伸びているのかと、純太の顔を見る。
…………何だこの気持ちの悪い猿は? 目も垂れているんじゃないだろうか?
うーむ、よーく見ると純太だ。
不思議だ。
左を向けばジェシーが輝かんばかりの姿を魅せてくれているのに、右を向けば猿が純太している。
「風土、お前やばい顔してんぞ……」
「猿こそ……」
「やっぱりそうか――――って、だぁれが猿だぼけぇ!」
すこーんと頭を叩き抜かれたが、響きばかりで大して痛くない。
彼は猿であると同時に高度な突っ込みテクニックを持った純太なのかもしれない。
「ばばーんっ! どうどう? 私の水着~?」
次に勢いよく脱衣スペースのカーテンを開けたのは楓だった。
ふむ…………黒の、ワンピースだな。
V字ラインがややきわどいものの……ジェシーと比べると何とも言えないな。
俺の反応を見てムッときたのか、楓はムスっとした様子で腰に手を置いた。
「あー、風土! わかってない! これを見ても……本当にそんな顔が出来るのかしらっ?」
くるりと反転した楓は大して期待もしていない目をした俺に、とんでもないものを見せてくれた。
「こ、これはっ!?」
先に反応したのは純太。
「背中っ!?」
単語だけで叫んでしまった俺を誰が責められよう。
「ふっふ~ん♪」
俺たちの反応に気乗りした様子の楓は、見事なまでのドヤ顔を見せながら小ぶりなお尻を振ってみせた。
コイツに少しは羞恥心というものを教えてやりたいが、こうまでして俺たちの度肝を抜いてくるとなると、仕方ないと言えるだろう。
楓の背中はほぼ丸見えの状態だった。張りのある背中になだらかな曲線。なるほど、素晴らしい。
背中は臀部に繋がるひも状の部分しかなく、臀部は臀部でほんのりと桃が顔を覗かせている。
楓ならではの大胆さだ。周囲で着衣中の女性を待ってるであろうリア充男性ですら、目を輝かせて楓を見ている。その気持ち、お兄さんとてもよくわかるよ。俺の方が年下だろうけど。
うーむ、背中全開か。ジェシーと比べてまだ未成熟ながら、自分の長所をわかっている女子は凄いな。
「凄いな……猿」
「はい、
咄嗟にボケ返してくる純太に、芸人の光を感じていると、楓はようやくドヤ顔をやめた。
そして、隣の脱衣スペースでお着換え中の玲を気にし、頬に手を添えた。
「玲~? アンタまだなのー?」
完全に友達だよな、この感じ。
非常に嬉しくもあるが、他士族が混ざっている事を知っている者が見たら、ある意味毛嫌いするのかもしれない。
いや、今はそんな事を気にしている以上に楽しい事がある。
今までなかった分、この瞬間を出来るだけ大事にしたいものだ。
しかし、楓の呼びかけにも反応しないが、玲のヤツ大丈夫だろうか?
「おーい」
「玲ー? モンキーちゃんたちが待ってるよー」
もはやジェシーの言葉に関しては突っ込む気もない。
だって男は皆、猿なのだから。いや、こう言ってしまうと偏見があるかもしれない。
ならばここは声を大にして言わせて頂こう。
俺たちは猿だ、と。俺たちこそは猿だ、と。
「も~、しょうがないわねぇっ」
痺れを切らした楓は、脱衣スペースから一時的に出て、ワンピースの水着とローファーという不思議なファッションスタイルを見せた後、玲が入っている脱衣スペースに顔だけ突っ込んだ。
ふむ、カーテンから背中丸見えの尻が見えるというのは、誰にメリットがるのだろうか?
「おぉぉおおおおっ……」
純太が大変お気にめしたそうだ。
「なぁ~んだ。ちゃんと着てるじゃないのっ」
楓のその言葉と同時にパシャリとカーテンを広げる。
「おぉ……」
純太は先ほどから「お」しか発音していないような気もするが、その気持ちもわかる。
なら俺もそれに倣うべきだろう。
「……おぉ」
両手で顔を覆って登場した玲の水着は淡いピンク色のビキニ。
中学を出たばかりで、幾分か未発達なくびれではあるが素晴らしい。
その腰には白いレース状のパレオが非常に薄手で、下のボトムスが透けて見えるあたり、淡いピンク万歳と言ったところだろうか。水着が透けて見えるだけだが、下着を連想させる威力を持っている。ふむ、これだけでご飯三杯いけるな。
「尊いな……」
「あぁ、
遂に純太はよくわからない事まで口走り始めた。
「うぅ、見ないでください……っ」
顔、そして耳まで真っ赤にする玲の反応も面白い。
今日の水着選びに対しては乗り気な玲だったが、まさか自分が水着を披露するとは思わなかったのだろう。
それも翔を含んで三人の男の目に触れる、となると玲の性格から考えて然るべきなのかもしれないな。
「ほ~ら、風土もちゃんと喜んでるよ~」
「猿」
「信長様!」
「…………本当なんですか?」
いつの間にか玲に疑惑の視線を向けられている頃、俺は純太と前世の話題で盛り上がっていた。
いや、前世なんか知る由もないんだけどね。
「絶景絶景……正に桃源郷じゃのう、猿?」
「天下布武は成りましたぞ……信長様!」
猿もとい木下藤吉郎純太は、ついに椅子の上に正座までし、俺の横顔に向かって涙ながらの喜びの表情を浮かべた。
「まったく、いつまで経っても、どこまでいっても男は男なのね~……」
妙に達観した楓の声だったが、顔にはほんのりと赤みを見せている。
ちょっとお姉さんぶった代償なのだろう。
楓も楓なりに恥じをもっていたという事か。
そそくさと自分の脱衣スペースに戻って行ったのがいい証拠だ。
「それじゃあ、意中の水着をゲットしたところで、次は男子の番ダネ~?」
……おかしい。
ジェシーの目が今一瞬光ったような気がしたが、気のせいだろうか?
「ハハハハ、モンキーちゃん二人のブーメランパンツ……楽しみダネ~ッ!」
……………………ちょっと待て。
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