第23話

 先生の激励?を貰い、勢いよく飛び出したが何一つ案が思い浮かばず、途方に暮れる俺。

 最近、学力上がったはずなのに、なんで俺ってこんなに馬鹿なんだろう。

 無策じゃあ、また、あの人を傷つけるだけなのに。

 そんな事を思いながら、校舎を出ようとした時に、スマホに通知が来た。

 百合さんかもっと期待を膨らませ、画面を覗き見ると、紫からのメッセージで「屋上に来い」と言う命令だった。

 校舎が出ようとしたイコール、俺はもう外履きに履き替えているのだ。また内履きに履き替えるのすごく面倒だ。

 このメッセージを無視したいが、既読を付けてしまった以上、無視したのがバレる。

 先日、彼女にボコボコにされた身としては、逆らうことが出来ない。

 すごく面倒いが、諦めて内履きに履き替え、屋上を目指すのだった。




 階段を登る度に、俺が紫に何をしたのかを考えていた。

 謝る事があるとするならば、事前に把握しておいた方が何かと楽だ。

 何も知らずに挑めば必ず痛い目に合うということを、紫と過ごしてきたこの年月で嫌と言う程味わった。

 だけど、今回は何が原因なのかさっぱり皆目見当もつかない。

 このままでは、俺は八つ裂きにされ、今しがた俺の背中を押してくれた猩々先生に顔向けできない状態になる。

 何度捻っても、やっぱり良い回答が全く浮かばない。

 そして、とうとう最後の段差まで来てしまった。

 素早く十字を切り、神に祈りながら最後の段差を登り、屋上のドアを開いたのだった。

 おお、神をよ。我の未来に幸あらんことを。


「遅いわよ!私が呼び出したら五秒できなさいよ!」


 っと正面には、腰に手を当てた状態で仁王立ちをしている早乙女 紫がこちらを睨んでいた。まるで本物の仁王像であるかのように。

 今思ったことが、彼女に知られたら本当に殺されるだろうな。

 俺は、ヘコヘコしながら彼女の直ぐ近くまで、急ぎ足で向かった。

 彼女の表情には、苛立ちや焦りを感じられるが、本当にそうなのかの区別がつかない。

 長く一緒にいると、何気ない仕草で相手の事が分かることがあると言うけれど、俺はある事が切っ掛けで彼女の思いを把握する事が出来なくなったのだ。

 そう、忘れ物しない2年前。

 俺は、彼女が俺に好意を寄せていると勘違いし、告白し、公然の場で酷いフラれ方をしたのだ。

 マジであの時は、死ぬかと思った。

 あれ以来、俺は彼女の事が分からなくなり、鉄拳制裁を受ける率が上がったのだ。

 何か、タイトル詐欺っぽくなってきたな。

 俺って、自分で思うより鈍感なのだろうか?


「ナツの目を見れば分かる。園田さんと復縁をする気なんだよね?」

「な⁉︎何故それを⁉︎」


 俺が、今さっき出したばかりの考えを読まれただと⁉︎

 何で⁉︎どうして⁉︎

 俺には、紫の考えが読み取る事が出来ないのに、紫には俺の考えが分かるなんて不公平だ!


「そんな事させない!ナツは私と結婚してもらうから!」


 彼女の声が、夕焼けに染まる放課後の校舎の屋上で響くのだった。

 それは、切実に誠実に、そして堂々と。

 俺は、それを聞いてどうなったって?

 呆然と立ち竦むだけだよ。

 何故なら、彼女の言った言葉を頭の中で理解する事が出来のだから。

 思考が追いつかず、考える事を放棄し始めた。


「へ?」


 なので思わず出た言葉は、気の抜けた返事だけだった。

 それを、紫は意にも介さず、ただ俺を睨みつけるのだ。


「だから、覚悟しなさい。園田さんと復縁をすると言うなら、私が必ずナツの障害となって立ち塞がるから。そして、ナツを私の虜にするんだから!」


 今度の宣言は、明確に頭に刻み込まれた。

 百合さんと復縁をすると言うなのら、紫が必ず邪魔をするのだと。


「面白い。なら俺は、必ず百合さんともう一度、彼氏彼女の関係になって見せる!」

「吠えずらかかせてやる」


 そして、俺たちは火花を散らせるのだった。

 って、俺、何で紫に告られたのにバトル展開みたいな状況になっているんだ?

 遠方で、カラスの「アホー」って声が響いているのは気のせいだと思いたい。

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