第19話
美術室に一人の男子生徒は、無表情でキャンバスに絵を描いていた。
彼には、表情が欠落していた。
いつから欠落したのか、そもそも最初からなかったのか、彼にすらわからなかった。
『絵には、心情が現れる』っと、部活動見学の時一人の女子生徒に言われ、心がわかるならと入部したのだが、彼の絵は荒々しいだけで、それ以上はわからなかった。
彼女は、その県内ではかなり天才だった。
創作物は、全て奇をてらった物が多く、その中でも異物な作品は彼女の手で描かれてた作品だった。
筆を使わず掌や指で描く為、いつも彼女の手や制服は絵の具で汚れていた。
普段は大人しく清楚な為、初見の生徒は彼女に話し掛けようとするが、彼女の素を見ると離れていく、、、、、
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百合さんの3作目、『美術室の魔女先輩と心の無い木こりの僕』という作品。
感情が無い少年と風変わりな天才少女の純愛物語。
少女の作品や少女の心に、少年の心は魅せられ、いつしか惹かれて行くという流れで、最後には、二人は結ばれて終るけど、その過程が面白くて何度も読み返してたりしている。
何故この話をしたかというと、本棚の整理中に手に取ってしまい、気がついたら読み耽っていたというわけだ。
昔、虚弱体質のせいで入院する事が多く、小中の学校ではあまり友達ができなかった(高校でもいないとは言わせない)。
だから、ついつい読んでしまうだよな。
って、折角の夏休みだから本棚整理を始めようって思ったのに、全然進んで無い。
そもそも、何故整理を始めたかというと、最近買った本が床に散乱していたからだ。
百合さんも明日、本の整理に来てくれるって言ってたから、それまでにある程度すませておきたかったのに。
気づけば、日付が変わる頃だった。
そろそろ、寝ないとな。百合さんを、迎えに行かないといけないしな。
がっかりされないと良いけどなこの惨状に。
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最近、ナツが外出してない。
明かりがついたり消えたりしているから、生きている事は分かるけど、すっごく心配だ。
おじさん達、、、お、お義父さん(ッポ)達に、ナツの事を頼まれているし、明日はナツの家に行こうかな。
園田さんなんかには、絶対に負けない!
私が、ナツにとって一番なんだから!
「むふーー」
「ねぇ!聞いてる?僕のプリン食べたのゆっちゃんだよね!僕が楽しみにしてたの知ってたよね!前も、僕が楽しみにしてた漫画のネタバレしたし!」
「別に良いじゃん。男の子っぽい見た目して、女々しいんだから」
「僕は、女の子だよ!」
「、、、(胸小さいくせに)ッボソ」
昴は、顔を真っ赤にして、涙目で私の部屋から出て行った。
あー、あの美味しいプリン、昴のだったんだ。
お母さんが、私に作ってほしいから買ってきたんだと思ってた。
たまに買ってくるから、間違えた。
昴に悪い事したな。後で作ってやるか。プリン。
それはそれとして、明日、ナツに食べてもらうお菓子でも作ろうかな。
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