第18話

 結果から言うと、過去に類を見ない成績だった。

 血の涙目を流しながら、頑張ったのだから当然と言えば当然の結果なのだが、それでもすごく嬉しい!


 学年4位 天堂 夏巳 444点


 でも、何故だろう。物凄く物騒な数字が並んでいる。

 全部4とか、死死死死ってなっててすごく怖い!

 5位のやつとは、1点差なんだよ。何でそれで、俺の数字だけゾロ目に何んの?

 怖!俺呪われたりしてないだろうな⁉︎マジで⁉︎

 っは!そうだ、俺の本!返してもらえる約束だった!


「いや、反省文出してねぇじゃん?」


 職員室に入室して、真っ先に猩々先生の所に向かったら、開口一番にそう言われた。

 そう言えば、反省文の提出後、返すって話しだったっけ。

 俺は膝から崩れ落ちた。成績が上がっても本が読めないなら、、、俺の努力が、、、。

 その場で、蹲る俺を猩々先生は見下ろしていた。

 次第に苛立ったように頭を軽く掻き、ため息を吐いた。


「わかった。わかった!ただし、原稿用紙一枚文を書き終えたら返してやる。これ以上は、譲歩できん」


 諦めたように俺から視線を外した。

 猩々先生は、こういう優しい所があるから憎めない。

 マジで優しい!


「わかりました!今すぐ書いてきます!」


 言うが早いか、俺は職員室を出て一直線に教室へと向かう。

 ある程度、思い浮かんでた文はギリギリ原稿用紙一枚分。

 まあ普通に、あった事だけを書くと本当に短いからな。

 遅刻をしたことをいい事に、本屋でサボってから登校しましたっと反省してる旨を書き記す事で許して貰えるだろう。

 そもそも、それしか書く事ないだけどな。

 現在は、昼休み。

 いくら一枚でも、それなりに時間はかかるし、本は放課後まで諦めるしかないか。

 そういえば、前に日直の仕事で日誌を書いた時、字が汚いと言われ再提出させられた事があったし、綺麗に書く事を心掛けよう。

 どうせ、焦っても変わらないしな。


 ー放課後ー


 あー、やっと終わった。

 時刻は、18時30分。完全下校まで、残り僅かと言う時間でようやく書き終えた。

 数時間、机と睨めっこしながら書き続けた為、身体のあちこちが固まっているみたいで、全身からパキパキと音が鳴っている。

 丁寧に書き過ぎて、時間配分を間違えたな。

 猩々先生は、部活動の顧問をやっていないから、まだいるのか分からない。

 だが、猩々先生はたまに、学園の雑用をやらされているとボヤいている時がある。

 雑用と言っても、会議の議事録や生徒指導、行事に使う資料作成等をやっていたりするようだ。

 その為、帰りのホームルームを終えても、19時までなら職員室にいる可能性がある。

 あくまで、可能性だ。

 帰ってる場合もあるから、なるべく急いで提出しに行こう。

 俺は、勢いよく立ち上がると、そのまま廊下に出ようと扉まで移動したが、そこにはクラスメイトがいた。

 真っ黒な髪は肩甲骨辺りまで伸ばしており、前髪が少し長めで目元を隠している。

 なので、あまり表情が読めない子だ。

 クラスの中で、空気のように静かにして、誰かとコミニケーションを取る所にをあまり見たことがない。

 名前は、、、確か、、、何だっけ?うまく思い出せない。


「貴方は、周りの女性の好意に無頓着過ぎる。その関係は長くは保たない。良く周りを見て」


 そう言葉を発したら、彼女は踵を返し廊下に出ていた。

 って、いやいや、言うだけ言って終わりかよ。


「ちょっと待って!」


 廊下に出ると、そこには誰もいなかった。俺の声が虚しく反響するのみ。

 完全下校間近で、校内に人がいる事はそもそもあまりない。

 走った音もしなかったし、他の教室にも誰かがいた形跡などは見当たらない。見事に誰もいない。

 無音過ぎで、耳がキーンってなってきた。

 うーむ、職員室に向かうか。

 考えても仕方のない事に、いちいち構ってうより、本を返しもらう事の方最優先だ。

 こっちらは、反省文一つで結果出る。


 結果、本は直ぐに返ってきた。

 後々気づいたのだが、親指姫先生の『幼馴染みの妹vs姉の勝利者は、通りかかった美人教師だった件』の裏側に落書きがしてある事に気づき泣いた。

 そのあと、親指姫先生のサインだと気づき、また泣いた。

 でも、あそこの書店サイン本なんて売ってたか?


 ♡♥︎♡♥︎♡♥︎♡♥︎♡♥︎♡♥︎♡♥︎♡♥︎


 彼はわかっていない。

 早く、今の関係に気づかないと、後に後悔するだろう。

 あの時、気づいていればと。

 このままでは、みんな後悔するだけだ。

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