第8話



 俺とユリ先生の甘々空間は、呆気なく崩壊した。

 外で、暴れてる女子二人がドアを壊したのだ。

 しかも、俺とユリ先生が、、、その、、キスをしてる所で。


 ビキビキ


 額に青筋が浮いた二人の美少女二人が俺らを見下ろした。


「へー、私らを放置して二人でイチャついてるんだ。取り敢えず、状況説明してくれる?」

「僕も、聞きたいな?ドアを開けたらキスをしてる二人の関係」


 開けたって、壊したの間違えだろ。

 まあ、そんなこと口には出さないけどな。殺されるし。

 仁王立ちしているのは、幼馴染のゆかりと従兄弟のあきらである。

 あとで修理屋を呼ばないとな。

 腕の中のユリ先生は、幸せな顔をして気絶してる。

 この場の対応は、俺一人でしないといけないらしい。

 もう一度、二人を見てみるけど、二人とも目が怖い。拳もニギニギしてるし。

 何を言おうと殴られるだろうな。


「えーと、二人に紹介します。この方が俺とお付き合いしてくれてる、園田そのだ 百合ゆりさんだ」


 二人は俺に近づくと、ユリ先生を俺から引き離した。

 そして、畳の上で寝かせてあげると俺の方を睨みつけた。


「私と結婚してくれるって言ったのに。嘘つき。ナツなんか嫌い!」


 ゲシ!


「僕の事いつまで男の子だと思ってるの!いい加減女の子として見てよ!バカ!」


 ゲシ、ボコ!


 紫は、鳩尾に華麗な回し蹴りを決め。晶は、爆弾発言とともに、ローキックで膝裏を攻撃し、傾いた俺の顎を狙ってアッパーをかました。

 なんか、君達やり過ぎじゃないですか?



 ♡♥︎♡♥︎♡♥︎♡♥︎♡♥︎♡♥︎♡♥︎


 夏巳なつみを強制的に眠らせて二人は、今度は、百合に視線を向けた。

 突然現れた恋敵に思い人を取られたのだ、二人の心中はとても穏やかではない。

 だからって、彼女に危害を加えるつもりは毛頭ない。

 あの、鈍感男をどうやって落としたのかを聞きたいのだ。

 二人に揺さぶられ、意識を取り戻した百合は周りを見やり、ボーとしていると、思い出したかのように唇が熱くなっていた。頬も赤くなっているだろう。


「えへへ♡」


 満開の笑みに二人共たじろぐ。

 二人から、見ても百合はとても美少女なのだ。

 百合は普段外出などしない為、肌が驚くほど白いのだ。

 童顔でいて、大人びた仕草も併せ持っている。

 なんか、勝てる気がしない。そんな感じが二人を襲ったのだ。


(確か、ナツは彼女のこと二十五歳だって、言ってたような。でも、明らかに同年代だって言われも信じられよう容姿なんだけど)

(僕なんかより、よっぽど女の子らしいよ!あと、身長は低めなのに、胸がすごく大きい!なっちゃんは、やっぱ大きい方が好みだったんだ)


 そして、やっと周りが見えてきたのか、夏巳を見て慌て始めた。


「夏巳くん!?どうしたのですか!?夏巳くん!?」


 なんていうか、一々可愛いなこの人。


「あの園田さん?ナツの事は放って置いて、少し話をしましょうか?」

「そうそう、あの朴念仁のなっちゃんをどうやって、攻略できたのか教えてくれない?」

「あの、お二人とも、目が怖いのですが?」

「「全然」」


(私は全然普通だし。多分アキの目つき悪いのよ)

(多分、ゆっちゃんの目が怖いんだろうな。だって、僕すっごい笑顔で話しかけてもん)


 二人とも、確かに笑顔なのだが、目が笑ってないのだ。

 当然、百合は震えてる。めっちゃびびってる。


「あの、べ、別に、何をしたとかは無いんですよ!気が付いたらこう言う関係になってた言うか、、、エヘヘへ♡」


(そんなんでナツと付き合えたら、別に苦労しないっての!)

(そんな、僕なんか、女の子としすら見られていないのに!)


 ゆかりあきらは二人して、膝から崩れ落ちたのだった。

 その背には、哀愁を漂わせる雰囲気があり、二人の情事を全く知らない百合にも何となく察せられた。

 たが、残念な事に、百合は現実の恋愛関係には全くと言っていいほどに疎い。なので、次のセリフは全く他意は無いのだ。


「どうされたんですか?まるで、長年恋してた哀愁を漂わせて?」


「「グフッ!?」」


 二人して、胸を押さえ倒れた。


「二人共どうしたんですか!?夏巳くん!夏巳くん!二人が、胸を押さえて倒れ込んでいます!何かの病気かもしれません!早く起きて下さい!」


 ★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆


 俺は、ユリ先ーー百合に起こされ、目を覚ますと、二人のが倒れていた。

 まあ、片方は紫だって言うのは分かっている。

 問題なのは、もう一人の方だった。

 俺と同じ男性用の制服を着ているのだ。

 紛れもなく、晶なのだが、その、なんと言うか、しているのだ。

 それは、つまり、その、胸囲、胸、おっぱいである。

 つまり、晶は女の子であった。


「って、晶、お前、女子だったの?」


 そう俺に、訪ねられると、晶は「?」って顔をしたが、胸の辺りに重力を感じたのかそれを見た。


「っあ、、、見ちゃった?」


 そういと顔を赤くして、部屋を出て行った。

 その音を聞き、紫もすくっと立ち上がると晶に続いて行った。

 そして、部屋に残るは、ふ、二人のカップル。

 しばらく、見つめ合っていると、お互い恥ずかしくて目を背けてしまった。

 さっき、キスをしたんだよな?

 改めて、彼女を見ると薄い桜色の花弁を思わせる唇に目が吸い込まれた。


「夏巳くんも、キスもう一度したいですか?」

「え、えと、うん。したい、かな?」


 顔を真っ赤にしながら、二人揃って唇を合わせた。



 こんな幸せな日がもっと続くといいな。

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