第7話


 っで、なんかいきなりお菓子バトルって言う訳のわからない展開になってきたんだけど?どうなってんだ?

 ここは、俺の家のキッチンだ。間違いなく俺の家のキッチンだ。

 なのに何故、幼馴染と従兄弟が二人して、キッチンに立っているんだ?

 そして、何故にバトル展開?訳がわからん。

 混乱した俺を他所に、幼馴染の早乙女さおとめ ゆかりと従兄弟の浪川 あきらが何処からか取り出したコックコートに身を包み立っていた。

 ちなみに、晶の苗字が何故、俺と同じ天堂てんどうじゃないのかと言えば、叔父さんが婿養子だからだ。簡単に言うと、叔父さんかは、叔母さんに尻に敷かれていると言う事だ。

 って、そんな事はどうでもいいんだ!

 問題は、この状況が未だに理解出来ていない事だ。


「なあ二人とも?いまいち、この場の温度に乗りきれないんだけど、そろそろ、説明してくれる?」


「「黙ってて!」」


「はい!すいませんでした!」


 なんで俺は平謝りしてるんだろう。

 と言うより、この二人目が怖いんだけど。

 紫は、金髪碧眼の美少女なんだけど、いかんせん、少々、っと言うよりかなり手がつけられい子だ。

 見た目は、すごい美少女なのに。見た目は。


 ギロ


 ッヒ!なんか、紫からすごい眼光が飛んできたんだけど!殺気もすごい!めっちゃ怖えよ!

 っで対する、晶なんだけど、普段は温厚で物腰が柔らかいのに、今回に限っては、かなりの本気だ。

 何に対する本気かはわからないけど。

 晶は、典型的きなイケメン顔だ。髪は、少し色素の薄い白っぽい髪色だ。それをショーにして軽くパーマをかけたような感じだ。

 そして、これは二人ともなんだけど、身長が百七十センチもあるのだ。本当に羨ましい。

 どちらも普段は美男子美少女なんだけど、今は、すごい殺気をだしまくってる。

 ぶっちゃけこの場から、既に逃げ去りたい。

 だが、残念なことにここは俺の家なのである。

 はー、もうしんどい。

 そう思っていると、インターホンのなる音がした。


 ピンポーーン


 誰だろうと思い、インターホンのカメラを見ると、夜空のような黒い髪に、黒曜石のような黒い瞳の少女が立っていた。否、少女ではなく女性だ。

 俺の好きな作家『ユリ』先生。又の名を、園田そのだ 百合ゆりさんだ。俺の初恋の人だ。


「ユリ先生?どうしてここに?」

『今日、夏巳くんの誕生日だって言てったから、いてもたってもいられくて、遊びにきちゃいました!』


 インターホン越しにユリ先生に尋ねた所、めっちゃ可愛い反応が返ってきた。

 この場の二人が物凄く怖いので、突然現れたユリ先生は、正に戦場に咲く一輪の花のような可憐さがあった。


「「っじーーー」」


 ユリ先生に見惚れていると、二人から妙な視線を感じだ。

 だから、怖いって!

 俺は、慌ててリビングを出て玄関へと向かった。

 そこには、大きめの紙袋と小さめの紙袋を提げたユリ先生が立っていた。

 改めて見ると、やっぱり可愛いな。

 今日は、白色のノースリーブのワンピースに、淡い青色のカーディガンといった服装だ。正に天使みたいだ。

 この前の不審者然とした格好は、やっぱり変装だったんだな。物凄く安心した。


「えっと、お久しぶりです、、、。その、あの、先日お貸し頂いた衣服がこちらに、、、」


 っと言いながら、大きめの紙袋を渡してきた。中には、ユリ先生に貸していた紫の服が入っていた。


「クリーニング仕立てなので、汚れとか、私の匂いとは無いでの安心してくだい」

「別にそこまで、しなくても良いのに。洗濯だけで、十分ですよ」


「へー、なっちゃんはいつの間にそんな幼い子と知り合いになったのかな?」


 なんか、少しイラッとした晶の声が後ろからした。

 振り向くと、唇を少し尖らせた晶がいた。

 なんか、女っぽい仕草だな。まるで

 お可笑しいよな、アイツは立派な男子なのにな。何を勘違いしてるんだか。

 晶の隣には、これまた顰めっ面の紫もいた。

 紫には、ユリ先生との関係を根掘り葉掘り聞かれたよな。

 でも、これといって、何の関係もないんだよな。

 作家とファンとしての関係しか無いのだ。

 俺の初恋は、多分実らないだろうな。

 何を隠そう、憧れのユリ先生を一目見た時から惚れてしまったのだ。

 俗に言う、一目惚れというのをまさか身をもって知る時が来るとは思いもしなかった。

 それほどまでに、衝撃的だったのだ。

 服装とか、状況とかが普通だったら、その場で告白してるまである感じだった。

 ただ、その時の彼女は変質者の格好をしていたのだから告白どころじゃなかった。


「随分と仲がいいみたいだけど?君名前は?なっちゃんとはどんな関係なの?」

「そういう風に見えますか?えへへへ」


 ユリ先生は、林檎のように頬を赤らめると、俺の方をチラチラと見ながら照れたように、次の言葉を述べた。


「私の名前は、園田 百合と言います。夏巳くんとは、!」


「「「んん!?!?」」」


 っえ!?初耳なんだけど!確かに一目惚れしてたけども、告白した覚えとか無いんだけど!?

 そもそも、OKしてくれてるの!?

 これは、そのまま、話に乗った方が良いのか?

 取り敢えず、先生をこの場から移動させないと!


 ガシ!


「お前、この間『ユリ先生とは何もない』って言ったよな?ど言うことだ?コレは?」


 底冷えするような声と、俺の方をがっしりと掴んで奴の方に視線を向けると、そこには、

 なんかオーラや気みたいな感じで、般若がいた。めっちゃ怖い!


 ガシ!


「へー、可愛い彼女さんだね?なっちゃん。僕に、何で言ってくれなかったんだい?」


 晶も怖えよ。表情自体は、笑顔なんだけど、目とか笑ってないし!瞳孔が開き始めてるんだけど!?

 周りの空気が一変したにも関わらず、ユリ先生はクネクネと自らの身体を抱きしめイヤイヤをしている。

 可愛い。非常に可愛い。でも、この空気の中では見たくない。

 どう収拾しようかな。


「ユリ先生あっちで、少し話をしましょうか!?」

「そんな、周りに人がいるのに、、、でも、求められると断れる自信が、、、ッポ♡」


「「ッチ」」


 だから怖えって!

 そして、ユリ先生は、何でこんなに爆弾を投げつけるような言葉のキャチボールをするんだよ!

 ユリ先生の手を引っ張って、和室の部屋に逃げ込んだ。

 取り敢えず鍵を閉めておこう。

 ガチャ。ッビク!

 、、、、、これって、今からそういう行為をするように思われないか。

 ユリ先生の目が、ものすごく泳いで、あたふたしてるんだけど。


「あの、ユリ先生?少し話をしましょうか?」

「は、はい。でも、そ、、その前に、て、、適切な下着に着替える時間を下しゃい!」


 噛んでるし!しかも、やっぱ誤解されたー!


「あ、えっと、そうじゃなくて!俺とユリ先生が、付き合ってるって言う話しです!俺って、いつのまに告白しましたってけ?」

「え?もしかして、私の勘違いでしたか?だとしたら、赤の他人が誕生日の押しかけるとか、ものすごく重い女ですね、、、ああ、死にたい」


 なんかものすごく落ち込んでるし!

 最後には、自身の自虐ネタまで入れ始めてるし!

 と言うより、目のハイライトが消えかかってる!


 ドンドン!ドンドン!ドンドン!


「ナツ!さっさと開けなさい!」

「なっちゃん?話をしようか?」


 ドアの向こう側も大変なことになってる!?

 ん?二人は後回しでいっか。どうせ、俺がボコられるだけだし。

 取り敢えず、ユリ先生を慰めるか。


「あの、ユリ先生?付き合う件に関してなんですけど、別に先生が嫌って訳じゃ無いんでよ。その、知らない内に先生と付き合ってることになってるっていうのが嫌だって話しなんですよ」

「私、結構重いですよ?初めて会った日からずっと、夏巳くんのことばっか考えるような気持ち悪い女性なんですよ?」


 拒絶されかもと思っているのか、ユリ先生の肩が震えていた。

 瞳も涙で溢れている。

 不謹慎だけど、こいう表情もやっぱり可愛いな。


「先生を気持ち悪いなんて思う訳ないでしょ?」


 そう言って、俺はユリ先生をこの前のように抱きしめた。

 まあ、その時はユリ先生が俺の胸飛び込んで、ワンワン泣いてた時なんだかけどね。

 でも、、、


「私のこと嫌いじゃないですか?私のこと好きですか?」


「はい。俺はユリ先生のこと好きですよ」



 こういう時って、自然とお互い顔が近づくんだな。

 気づけば、二人して顔を真っ赤にして唇を重ねていた。

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