第5話

 六月六日。

 今日は、ナツの誕生日。

 誕生日ケーキは、飾り付け以外は昨日の内に完成させた。

 家に帰り次第、ナツのバースデーパーティーの準備をしよう。

 ママも色々と準備してくれいるはず。

 前にユリさんの事で問いただしたら、彼女とは何でもないって言ってたけど、あの時の表情を見るに怪しい。

 今はそうでも、告白とかしそう。

 だからそうなる前に、私に夢中になってもらう。


「ふふふふ」


ゆかり?妄想はいいけど、早く学校に行きなさい?」


 お母さんに呆れた声で、言われながら学校に向かうのだった。


 ★☆★☆★☆


 ユリ先生に会ってから、既に一週間が経っている。

 あの日のことを思い出しては、溜息が尽きない。


「ハァ」

「もう、うるさいわよ!辛気臭わねえ!悩み事があるなら、相談に乗るって言ってるでしょ!」

「んー」


 まあ、ずっとこんな感じなのだ。

 紫には悪いけど、ずっとあの日のことを思い浮かべてはニヤけが止まらない。

 スマホの連絡先には、『園田そのだ 百合ゆり』と彼女の本名で登録されている。

 ユリ先生曰く、『ペンネームで登録されているのは(彼女として)恥ずかしいです!』との事だった。ペンネームってそんなに恥ずかしいんだろうか?


 キンコンカンコン


 朝のHRの予鈴が鳴った。


「おらー、ガキ共ー。席に着けよー。HR始めるぞー」


 気怠げな感じで、若い女教師が教室に入ってきた。

 猩々しょうじょう 夜々やや

 去年教育実習を終え、そのまま今年就職したばっかの新人教師である。

 何故そんな教師が、担任なのかと言えば、この学校の理事が彼女の母親だかららしい。

 それに加え、彼女が優秀なのも選ばれた理由だろう。

 彼女は某有名大学の首席入学に、首席卒業者でもある。

 しかも、歴代最高得点を出してである。

 勉学でも特質しているのに、運動にも才能があった。陸上、水泳で歴代インターでの最高記録を出しているいるほどなのだ。

 はっきり言って、化け物である。

 専門の教科は、無いので、基本的に担任だけをしているのだ。

 何でも、担当教科を作ると、他の教師をこの学校から追い出す事になるからだ。

 そんな、天才教師なんだが、いつも気怠げなのだ。


「おーし、突然急だが、転入生を紹介するぞー」


 本当に突然だな。

 てか、二カ月前に入学式あったばかりだろ。

 なんか、変なやつがうちのクラスに転入してきた感じだな。

 絶対に関わらないおこう。


「んじゃ、転入生入って来ーい」


 ガラガラ


 入って来たのは長身の男子(後に女子だと気づく)生徒だった。

 て言うか、、、


あきら!?何でお前が!?今年、北海道の有名高に入学したんじゃなかったのか?」

「やー、なっちゃんおはよう。誕生日おめでとう。ビックリした?」

「そうか、俺誕生日だったんだ。てか、それだったらお前も誕生日じゃん!おめでとう!」


「お前らうるさいぞー。ブッ殺すぞー」


「「すいません」」


 あまりの冷たい声に、俺と晶は二人揃ってビビって謝った。


「詰まる話もあるだろうが、それは後にしろよなー。っと、一人知ってるやつもいるけど、取り敢えず自己紹介しろー」

「はい、僕の名前は浪川なみかわ 晶です。なっちゃんとは従になります。これからよろしくね」


「「キャーーー♡♡!」」


 女子達の黄色い声援を受け、晶は苦笑いを浮かべている。

 そう、俺の従はイケメンなのである。

 だが、この場で大声を出すのはマズイじゃないかな。

 さっき俺と晶が誰に怒られたのか忘れたのかな?


「うるせーぞ、ガキ共ー!静かにしろって言ったばっかだろうが!舐めてんのか!」


 猩々先生がガチギレした。

 そりゃそうだろ。さっきのでさえ半ギレだったんだから、落ち着くまでは静かにするのが鉄則なのに。女子の馬鹿共め。

 さっきまで喧騒が一気に引いた。

 かなりお怒りだな。

 猩々先生には、二つ名があるのだ。

 その名も『怠惰な姫』だ。

 怠惰ってのは言わずもながら、普段の態度だろう。姫ってのは、我儘って意味を含んでいるのだ。

 それ以外に、見た目が美女っていうより美少女に近いお姫様って感じだからだ。

 ちなみに、お子様体型について揶揄すると体罰&内申点低下と色々めんどくさい事になる。

 教室で、一人、怒気をぶちまけた張本人は、静まり返った教室に満足して、朝の連絡事項を告げると出て行った。

 あー、怖かった。何で、アレで先生になろうと思ったんだよ。

 近年稀に見る、問題教師だな。

 最近では、教師のあり方は保護者が言いたい放題で、どんなに良い先生でも保護者がNOと言えば、クビになる始末だ。

 それなのに、保護者達の意見はなんの空。

 保護者の言葉が怖くて教師になってられるかりとは、猩々先生の言である。

 先生が出て行った後、晶のことで大騒ぎだ。


「あっ、そうそう。なっちゃん、今日から三年間なっちゃん家でお世話になるから。引っ越しの業者も、今日の夕方には来る予定だから一緒に帰ろうね?」

「っえ?それも初耳なんだけど!?」

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