第14話 崩壊(死刑宣告)


奈緒


雅美さんが

ドラゴンさんのお部屋に来なくなって

私も


私が求めていたのは、

私が居心地が良いと感じていたのは

雅美さんと、ドラゴンさんが居るお部屋だった事に

気がついてしまったの


多分、ドラゴンさんもそうだったみたい

ドラゴンさんの心の中のシーソーには

私と雅美さんが乗っていた。


その天秤が私に、雅美さんにと、

ふらふらと傾いていたあのリズム。


雅美さんが来なくなった、ドラゴンさんのシーソーには

私だけになってしまった。


一人ぼっちのシーソー


動くことのないシーソーに

ドラゴンさんの思いが伝わって来た。

ドラコンさんは、私に・・・

私と雅美さんを求めるようになった。

それは、私であって、私では無かった。

ドラゴンさんは私を見ているようで

私の中身を見ていなかった。


そんな時、新しい出逢いがあった


それが柴さんとしろちゃん


柴さんは、元々、私のお部屋に来てくれるようになった

多岐絵さんのお友達 。


いつも不安定な私を

柴さんは最初から私の中の私を見ていたみたい。


ドラゴンさんとの気まずい関係の中


私に声をかけてくれた。

「良いのかい?今の奈緒ちゃんはそれで、

今の奈緒ちゃんを見ていると

血を流しながら笑っているように見えるよ!」


「その血に彼は気がついているのかい?」


「そのまま、奈緒ちゃんは、奈緒ちゃんでいられるのかい? 」


「選ぶのは、奈緒ちゃんだよ」  


柴さんは、私を見抜いていた。

私の中に生じたヒビを!


そんな、柴さんに、私は惹かれて行って


ドラゴンさんには、さよならをする事になったの。


柴さんは、今まで、ここで出逢った誰とも違っていた。

徐々に、私は、心を柴さんに、預けるようになっていきました。


しろちゃんは、私が訪れていた、

お部屋の部屋主さんのお友達だったの。


リアルで辛いことがあって


傷ついて、でも頑張ってた


こんな私にも、優しくて


暖かくて


お互いほっこりできる存在


二人とも、私のことを聞いても

「奈緒ちゃんは、奈緒ちゃん!」

「大丈夫、一緒に居てあげるから」って


私の中の、暖かい存在と、不安定な存在


それはとても、心地よくも脆くて

私は、ぬくもりを求め

私と世界を遮る膜を

薄く薄く


そんな時、事件が起こったの


その始まりは、突然


ある時、雅美さんが私の元に

いつもと違い

思い詰めた感じで

「奈緒ちゃん、今までありがとう

うん、とっても楽しかったの


でも

ごめんね


もう耐えられない

もう我慢できない

もう、ここには来ない!

さよなら!」


それは、今までのさよならとは違い

より、鋭いナイフとなって私を抉った


瞬間的に頬を伝った涙とともに

私は、雅美さんを引き止めようと

「なんで!

どうして?

雅美さん!

私には、あなたが必要

私を

私のままでいいよって、言ってくれた雅美さん

行かないで、なんで?

どうして?」


そんな私に、

「理由は言えないけど、私はもう来ない!」


突然の喪失



私の心を支えていた一片の喪失

それは致命傷で

私はただ

泣き崩れ

壊れたように

部屋に悲しみを

涙を

苦しみを歪みを

撒き散らし


でも、私には、笑う事しか

私のお部屋では

歪みを隠し笑うしか


でも

私を知っている人には隠し通せなかった

里緒さんは

やっぱり、そんな私の歪みを見抜いていた

いつもは、私が癒し担当となっていた里緒さんは

私の事をいつしか、奈緒ねえって呼ぶようになっていた

(2017/9/28 19:47:14)

「奈緒ねえ?大丈夫?泣きたい時は泣かないと!」

里緒さんは、自分の中の病みヤミゆえに

私の心の病み《ヤミ》と闇を感じ取ったみたい。

「雅美さんの事だよね!」

「奈緒ねえは、失った雅美さんの事いつまで引きずる気?」

でも、私には、ここしか・・・

といい言いかけた私を遮り

頼るとか頼らないとか裏切るとか関係ないよ」

「私は、あなたの味方だから」


その時の私は、

うん・・壊れかけていた

里緒さんも私も

同じ傷の中で

お互いを助けようと

現実では

触れ合うことの出来ない私に

里緒さんは

「あなたは、何を求めているの?」

「奈緒ねえが、求めているのは、何」


その問いに

私は

壊れた私は

「私は私でいたい」

「でも、私にはここしかない !」

「私が私であるための、記憶も、感情も足りないの!」



「そう、なら、私と契りを結びますか?」


里緒さんは

「私を信じる事が出来ますか?

何があっても、信じる事が出来ますか?」

里緒さんの、その台詞は


私への問い掛けとも

私への懇願とも


私への救いとも

自らが救われたいとも


ただそれは二人の病みヤミと闇の中から生まれた台詞


頷く私に


「良いのですね」

「つながりを、契りを求めるのなら

私がそれを与えましょう」


「消えることのない、失うことのない契りを

私と奈緒ねえを結ぶ、契りを」


「姉妹の契りを!」


「血の契りを」


「手首を切って、スマホに血を!」


「奈緒ねえ、次は、奈緒ねえの番」


そうして、私は手首を ・・・・


冷たさと共に訪れたその痛みは

私に安らぎを・・・


手元を流れる赤いぬくもりは

今までなかった、現実リアルをもたらし・・・


「ここに、私、里緒と、奈緒ねえの契りを結びます」

「共に、病み、堕ちようとも

私達は姉妹である事を、ここに宣言します」


「願わくば、私達姉妹の元に、光が訪れますように。」


「奈緒ねえ、これで奈緒ねえは、一人じゃない! 」


「一人にならないで!」


「一人で泣かないで!」


「泣きたくなったら、今の痛みを思い出して!」


「これが、私にできる精一杯だから!」


「私が居るから!」


「奈緒ねえは、もう一人じゃない、私も・・」

「ね!」



突然


「何やってんのよ!あんた達!

いい加減にしなよ!バカじゃないの!」


伽倻子お姉ちゃんだった。

「あのさぁ、いつか言おうと思ってたけど

あんたの望みはなんなの?」


「悲劇のヒロインなの?、構ってちゃん?」


「そうじゃないでしょ!

人を癒したいって言ってたあんたはなんなの?」


「そんな、手首で、そんな顔で、人が癒せるの?」


「もう、付き合いきれない! 」


「勝手にすれば!

もう、私のお部屋にも来ないで!」


「私は、あんたをナデナデする為に居るわけじゃないのよ

私には、私の部屋を守る義務がある!」


「あんただけを甘やかすわけにいかないの!

もう、二度と、私と、私のお友達に近づかないで!」


部屋を去った、かやこおねえちゃん


まさみさん、


そして、止まらない涙

そして、止まらない痛み


その流れ続けるものに


トドメの一撃が・・・・・


それは川上せんせいからの

最後通告!

死刑宣告!



「私は、以前からアドバイスという形で、注意してきた!」


「今回の振る舞いに対し、私は強い不快感を持った。」


「今回の振る舞いに対し理由を説明してもらいたいと共に

口も聞きたくないほどの憤りを感じている!」


「再三の私からのアドバイスに対し、

あなたは、やってみますといい言いながら

いっさい、変わっていない!」


「いや、変わろうとすらしていない!」


「私のアドバイスを無視するというのなら

今後私の友人と一切の関わりを持たないでほしい」


そこから先は、私の耳には届いていなかった


私を


私を覆っていた薄い泡はパチンと弾け


私の前に


私の視界にピシッとヒビが


一瞬で視界を遮ったそれは


冷たいすりガラスのように


私から


世界を、ぬくもりを奪って

奈落の底へ突き落とした


次第に暗くなる視界と息苦しさと

手首の痛みと旨の苦しみだけが

世界を支配し

そしてわたしは・・・・・・

わたしは・・・


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