第10話 My Room
奈緒
新しい世界では、自由でした。
いろんなお部屋を巡り
いろんな人と出逢い
語り合う事は
今までに無い安らぎを
もたらしてくれました。
しかしその一方
ふとした拍子に訪れる
自分の不安定さに翻弄されても居ました。
・・・
「私は、みんなとは違い
みんなが普通に出来る事も、私には出来ない。」
でも、安らぎを求め
奈緒は時には嘘を
時には仮面を纏うようになっていきました。
仮面の重みに耐えられなくなると
また、お姉ちゃんに「甘えて」
が周期的に訪れるようになりました。
ある時、お姉ちゃんが新しいお友達を、紹介してくれました。
川上という彼は、
そのチャットの中でも、ほとんど
と言っても良いような人物で
博識で人生論を笑いながら語れるような
ユーモラスでありながら、先生のような人物でした。
その頃の私は
他の子たちと違う自分に悩み、
過去のトラウマに囚われ
細い糸の上を
綱渡りしているようだったみたいです。
川上先生は
そんな私に一つの提案をしました。
「奈緒ちゃん、そうやって、いつまでも
トラウマに浸って居てはいけない !」
「ここにくる人たちの中には、病院で死を待つだけ人も
不治の病と闘っている人も居るし
体の不自由な人だって居る。」
「彼らはそれでも、この世界では、笑って過ごそうと
努力して居るし笑っているよ!。」
「奈緒ちゃんのは、過去のトラウマを理由に
同情を買おうとしてるようにも
見えてしまう!」
「トラウマを、抱えているのはわかった。
でも、そろそろ、
それと向き合うべきだと思うんだ」
急にそんな事を諭される様に言われ
面食らっている私に・・・
彼は、ニヤリと笑うと
「そろそろ、自分のお部屋を持って見てはどうだい?」
「トラウマと向き合うための部屋、
自分の過去語りの部屋だよ。
絶対、文字にして書き記す事で、気持ちの整理も
そして、奈緒ちゃんの
自分をもっと理解してほしい
知ってほしいって気持ちにも
良い事だと思うんだけど、どうだい?」
その発想は、私には全くありませんでした
『自分のお部屋を持つ!』
そのプランは魅力的で
人に寄り掛かってばかりだった自分から
抜け出せるチャンスの様に聞こえました。
それから数日・・・
「悲しみの奈緒」
それが私の選んだ最初の部屋名でした。
そこからは、毎日、自分の記憶にある、様々な事を
夏休みの宿題の日記をまとめて書くかの様に
時には痛みを、傷口を
時には憧れを
涙を
微笑みを紡ぐ様になりました。
そんなお部屋に、時折訪れてくれる、友人も出来!
雑談と、笑いと、癒しと、団欒の場所に変わってきました。
その当時私には
足元を支えてくれる、お姉ちゃんと、先生
それから、時折訪れる、お友達
そして、私を常連として受け入れてくれた、
伽耶子さんのお部屋の常連が
直人
先輩に告げられた、週休3日
それは確かに
普通であれば、喜ぶところであったのであろう。
だが
俺にとっては、とても退屈で
暇な時間との戦いの場となった。
その頃には、毎回仕事に逃げて居た俺を誘う友もなく
本を読むくらいしか時間の潰し方を知らなかった自分を
思い悩むくらいしかなかった。
暇な時間はボーッとテレビを見たり
なんとなくスマホやパソコンと向き合うこととなったが
ぽっかりと空いた時間は、ひたすら俺を眠りへと誘うばかりであった。
その眠りは、また、自分をガラス越しに見る夢であったり
過去の傷を、痛みを再現する夢であったが
なぜか、今までに無い安息をも含む夢が含まれる様になって居た。
安らぎの夢の中の自分は
リアルには無い心打ち解ける友達と語り、笑い、自由だった。
夢の友達は、やはり夢らしく、顔は霞の向こうであったが
なぜか、 表情や感情は自分に伝わって来ていると言う、
夢ならではの、不思議な感覚であった。
今まで、夢を見る事が怖く、夢から逃げて居た自分は
夢への壁を徐々に下げていくことに、我ながら驚いても居た。
3週間もすると、そういった生活にも慣れ
俺は、夢と現実を行き来する様になって居た。
そんな自分を見て居た先輩が、ある日
ニヤニヤしながら、俺に語りかけて来た。
「お前さ〜、性格変わるにもほどがあるぞw
お前、気がついてるか知らんけど、時折ニヤニヤしてるんだよな〜〜w 」
「え、休みの間に、彼女でも出来たのか?
だったら、紹介しろよ、彼女の友達を!」
自分では気がついて居なかったが、先輩曰く
ちょっとした時間とか、ボーッとしているときの表情が
全く違うと言うことらしい。
まぁ、口の悪い先輩の言い方をそのまま言うと
「たまに、優しい微笑みを浮かべていて、気持ち悪い!」
だそうだw
夢は、精神の自浄作用とよく言われるが
自分にもやっと、その番が回って来たと言うことだろう。
ただ、その夢と現実の行き来は、
やたら眠気を誘う様になったことは確かで、
通勤途中や、家でスマホで時間潰ししながら
寝落ちする事が多くなっていた。
そう
まるで、今までの眠りから逃げていた
つけが回って来たかの様に・・・
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