第9話 出会い(居心地の良い隠れ家)

奈緒


新しい出会い

私は、チャットの世界で

新しく自分の居場所を見つけました 。


とても居心地の良いグループ

お部屋の持ち主は、伽椰子さん。

伽椰子さんは、とても強く優しくて

そこに集まるお友達には

様々な人達が居ました


チャットの世界は心と心が

寄り添い合う居場所って

伽椰子さんは、いつも言ってました。

ここには、リアルは関係無いって!


「ここに持ち込めるのは、

感情と、言の葉だけ!

リアルなんて、何の意味も持たない!」

って。


そういう伽椰子さんは

心臓に、爆弾を抱えて居たけど

みんなを励まし、笑顔を配り

時には厳しく、時には優しく

お部屋を華やかに彩ってました。


お部屋の住人には、他にも

体に障害を抱えてる人や

心に傷を負った人が居て、


初めてのチャットで、

自分をどう表現したら良いのか

途方に暮れていた私に、

チャットのいろはを

教えてくれた。


あの頃の私は

不安定で

急に涙が込み上げて来て泣いたり

訳もなく、空虚に笑ったり


そんな私に、伽耶子さんは

「奈緒さん、

奈緒さんは、そのままで良いの!

ここに居て良いからね!」


今まで、私には、

そんな事を言ってくれた人は居なかったから

私は、そんな伽椰子さんを、

お姉ちゃんって呼ぶようになりました。


チャットの世界で

色々なお部屋をめぐり


色んな人と、お話しをし


時には癒され


時には傷つき


そのたび、お姉ちゃんは、

「奈緒さん、あなたはここに居るよ、

居てもいいんだよっ」って。


私に訪れた、春

心のひだまり


でも

そんな春のひだまりも


時は移ろい

景色は色を徐々に変えて行きました。




直人


夢の世界

おれは、壊れてたのかも知れない?


夢の中の俺は、すごく眩しく


そして、憧れで

決してなれない自分で!


ただ、穢れなく光り輝いていた。


白い朝靄の世界の中に

浮かび上がった瘴気のような

俺には、とても眩しく


俺の中に次々と、浮かぶシーンに

「俺は、そんな清い気持で

動いたわけじゃない!」

「ただ、それが許せなかっただけなんだ!」

とか、

「ただ、それが怖くて見たく無かっただけなんだ!」と、

意味も無く反論するばかりだった。


それは、ある意味、拷問


自分の偽善を、ただひたすら

純然たる善意として見せつけられる拷問。

自分の穢れを、

ただひたすら再認識させる拷問。


俺なのに

俺の中に映画のように映る俺は、

俺では無く、

そして、紛れもなく俺だった。


そんな悪夢は

俺をますます仕事へと没頭させていった。


ある時、先輩が

とうとう、俺にとって

とても苦しい選択を通告した。


「あのさー、

確かにお前は、頑張り屋だよ、

お前のおかげで、

だいぶ仕事がはかどることは確かだ。


「だがな、会社には、

一応労働基準法ってのがあるんだ。」


「ここみたいなブラックな会社でも

それは、逃れようの無い、法律なんだよ」


「お前さ、ここ来てから、

一度も有給取ってないだろ!

会社から、目をつけられてるんだよ !」


「頼むから

これから、しばらく、

4ヶ月だけでいいから

金土日は3連休にしてくれ!」


俺は、よっぽど嫌な顔をしたのだろう。


そんな俺の姿を見て、先輩は

「www、お前さ〜w

それ普通、喜ぶとこだぞw

なんだよ、その顔w

散々稼いだんだから、

ゆっくり羽伸ばしてこいよーーw

旅行でも、女でもさ」


そんな事を、俺は

どこか遠くの出来事のように聞き

面食らっている自分に

驚いていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る