第167話「元魔王、不審者に声をかける」
──
「人員9番『ノイン』は、我が
灰色の髪の少女は、胸に手を当ててつぶやいた。
座っているのは、暗い
物音や空気の動きを読んで、近くに誰もいないことを再確認。
そして、彼女は言葉を続ける。
「我が主。偉大なる
少女の胸にあるのは、小さな水晶玉のついたペンダントだ。
黒い結晶体に、根のようなものが
少女は、まるで
そのまま魔力を注ぐと──
『
──結晶体から、声が
『状況を確認した後に指示を下す。なにがあった?』
「リースティア王家の王女と出会いました」
『リースティア王家には数名の王女がいる。出会った者の名は?』
「第8王女、アイリス=リースティア」
『「魔術ギルド」の一員か』
声が一瞬、途切れる。
数秒後、結晶体からノイズが流れ出す。
複数の声が重なり合うような音だった。
それから、しばらくして、
『可能ならば
ふたたび、ざらついた声が響いた。
『間もなく、王都での作戦がはじまる。それに合わせて行動を開始せよ』
「
『無用』
「
結晶体がついたペンダントから、人の
大きさは、
けれど、形は間違いなく人のものだ。
それをうやうやしく見上げながら、
「ご指示をいただいたことに感謝いたします」
『王家の者と出会えたのは幸運であった』
人骨のかたちをした者は、語り続ける。
『これぞ「エリュシオン」が我らを求めている
「承知いたしました」
『
「はい。私はケイト=ダーダラの信頼を得ております」
「ケイト=ダーダラはこのことを知っているのか?」
「お
「だったら、テトラン=ダーダラの
「あの方は『エリュシオン』へと繋がる道を開いてくださって──」
『待て!
不意に、人骨の影が
反射的に護衛ノインは立ち上がり、周囲を見回す。
彼女は、自分の主人と話をしているつもりだった。
主人に逆らうことはできない。
だから、結晶体から聞こえる声に答えることに、集中しすぎた。
頭上から聞こえた声に、反応してしまった。
人の気配には注意を払っていた。
足音も、わずかな空気の動きにも注意を払っている。
敵の接近に気づかないなんて、ありえない。
イレギュラーは起こりうる。
そもそも、この場で主人を『古代器物』から呼び覚ます予定はなかった。
そうなったのは、アイリス=リースティア王女を見てしまったからだ。
『計画』のためには、王家の者を捕らえるのが
だから、『古代器物』を使ってしまった。
指示を仰ぎ、最善の結果を得るために。
なのに──
「すぐに敵を発見、
「遅い」
ズドドドドドドドッ!!
直後、頭上から
石槍は彼女を囲むように地面に突き立つ。
退路を
「第18次『
『──目的を告げよ』
「
『了解した。偉大なる「聖域教会」の名のもとに、
人骨のような影が、護衛ノインの口に吸い込まれていく。
少女の瞳の色が、変わる。
そしてその背後に──ローブをまとったゴーストが浮かび上がる。
『不完全な人間は、眠っていればいいものを』
少女の口から、しわがれた声が流れ出る。
『
背後にゴーストを宿した少女は、頭上の敵をにらみつけたのだった。
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次回、第168話は、今週中くらいに更新する予定です。
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