暗躍する新たな王
四つ目の大陸と呼ばれる大地に少し変わった国がある。
国と呼ぶには小さいかもしれない。
他国との境を周りをぐるっと水で囲まれたその国には王族としてすべる者が
居なかった。
王族が滅んだ十三匹の蟾蜍の国。
百二十年ほど前、最後の幼い女王が月夜の女神に召された後
暫くは以前のままの名前で人々は呼んだが月と陽が巡る度にそれは消えて
行き,いまでは王族が滅んだ十三匹の蟾蜍の国と皆が呼ぶ。
王族が滅んだ十三匹の蟾蜍の国では人種を排斥している。
定期的に国を囲む大川に弱い毒を流し込んでいるからだ
弱いと言ってもそれは亜人に対してであり人種が触れれば手が焼けるほど強い。
川渡しの船は政府船しかなく普通にこの国に人種が入る事は難しい。
政府船の審査は厳しく人種であるとばれればそのまま毒川に投げ込まれる。
王として統べる者もなく人種を排除してると聞けばとても普通ではないと
察するだろう。
さぞかし魑魅魍魎が住まい悪党共が集い。国民の生活は辛い物であろうと
しかし王族が滅んだ十三匹の蟾蜍の国は平和である。
国の領土内に大きな鉱山がありそこから取れる資源は膨大な富さえも生む。
医療や衣食住も充実してるし芸術や文化、錬金術やその他の研究活動も盛んでありこの国に住む者立ちの心は明るい。
ただ、王族として統べる者がいないだけである。
ソワ・ペドロ
蒼白の肌を持ち黒色の髪を持つ亜人青年である。
王族が滅んだ十三匹の蟾蜍の国で小さな靴屋工房を営む青年職人である。
里を出でから幾千万の法と正義の律法国に移り住み靴職人の腕を磨いた。
その後幾つかの国や街を渡りある事件に巻き込まれ罪人とされる。
濡れ衣ではあった物の彼もまた亜人である。
歪んだ色眼鏡で見られ法も曲げられ数年の間を牢で過ごす。
牢でも生活はひどいものだっだ。理由もなく行われる拷問は
ソワだけでなく罪人達に取って大きな傷となっていた。
ある日突然恩赦が与えられて牢を出たときはその場で四つん這いになり
体中の水分が涙と化して全て流れ落ちるまで号泣した。
以来、人種と一切の関わり会うのを止めると誓い風鳴き鳥の便りに聞いた。
亜人だけが住む国。王族が滅んだ十三匹の蟾蜍の国に移り住む事になる。
この国は亜人にとっては住みやすいだろう
しかしソワに取ってはさほどではない。亜人はあまり靴を履かないからだ。
他の国であれば亜人は人種に紛れることが多いから靴は必需品となる
逆に此処ではその必要がないから皆本来の獣の姿で過ごす。
そうなると靴自体が邪魔となるし最低限の亜人用の簡易靴で済んでしまう。
従って靴職人としてのソワの腕は確かなものであっても生活は常に
ギリギリとなる。
ある日の朝早くソワの店に客が訪れ靴の修理を頼んできた。
深くフードを被りマントを羽織る亜人の女性だった。
ソワも又、心得ている。客に素性を聞くのは禁事としていた。
大体持ちこまれた靴をみれば大抵は予想が付く。
その靴は訳ありの逸品だった。恐らくは猫の一族のものだろう
だとすれば本来肉球があるので踵となる部分はいらない。
普段は他の靴と外観も変わらない。
しかしそれは仕掛け靴となっていて踵から鋭い針が飛び出るようになっていた。
これはその手の趣味趣向を持つ者達の間で好まれるもので
実の所扱いが難しい。よく見ると他にも仕掛けがあるようでもあったが
何より使い古され大分ガタが来ていた。
靴の持ち主は愛着を持ってこの靴を大事してるのだろう。
多くを語らず靴を預けた客は帰っていく。
ソワは靴の革を張り替え針を磨き削り、以前より鋭く針を仕上げる。
面白い事に針には溝が刻んであり靴奥の空間に毒を貯めて置く場所さえある
その毒は針を伝い獲物を毒殺さえ出来る仕組みとなってさえいた。
同じようにソワは溝を少し掘り刻み、より早く毒が針を伝うように仕上げる。
これはある種の趣味趣向の為と言うよりは拷問や暗殺に使われる靴であろう。
それでもソワに取っては一足の靴と変わりない。
数日後、靴を取りに来た客は丁寧に例を言い。値切りもせずに料金を払う
それで全てが終わりになるはずだった。
それから四十の月夜と陽が巡りソワ自身もその客と靴の事を忘れてしまうほどの後遅くまで仕事をするソワの工房の扉を叩く者がいた。
そわはいぶがしげではあるが扉を開け丁寧に対応することにした。
「申し訳ありません。今宵は仕上げるべき靴が溜まっておりまして。
故に他のお方のご依頼は控えさせて頂いているのです。」
その言葉に客は冷たく言葉を返す。
「靴とお仕事を大事になさるのは大変結構な事で御座います。
しかしそれより御身のほうが大事でありませんか?」と言い払ったマントの
下には見慣れない武器が顔を覗かせている。
女はそれを手に取りソワによく見るように
掲げて手見せる。それは武器と言うには無骨で形が違っている
金属の鋏のように見えるが先端は金槌のように横に平たい物に成っている。
かといってその反対は鋭く鈍く光る刃さえついていた。
クスクスと女は笑い。自慢げに手の中で弄ってみせる
「これは指墜としと言う道具で御座いますの。平たい部分を使う時は相手の
指を挟んで潰すのです。指を墜とすときは反対に組み替えて刃物で墜とします。
それは良い声でなくてくれるです。お試しになってもいいですが
指を失ってはこれからのお仕事にさしつかえがありましょう?
いえ、お望みなら私めはかまいませんが。ククっ。」
道具を使うときの事を思い出したのだろう。女は恍惚の笑みさえみせる。
「お楽しみは次回に取っておきましょう。馬車を待たせておりますので此方へ」
女は先に店を出て馬車の扉を開ける。その扉には13匹の蟾蜍の紋章が描かれて
居る。つまり王族が滅んだ十三匹の蟾蜍の国が持つ馬車となる。
進みゆく場所の中で女はあれこれと聞いてくるし自分の事も良く喋る。
主に自分の事でありその殆どが罪人であろう者立ちへの拷問の話だった。
確かにそれだけを聞けば嫌悪感を覚えるだろう。
しかしソワは途中からあることに気が付く。
女が話す拷問の相手は全て人種なのだ。誰一人、何一つとして亜人を
拷問してるとは言っていない。それに気づくと心が軽くなった。
自分もこの国に来てそれなりの月日が経っている
人種排斥主義に若干でも染まっているのだろうか。ソワはそれを自覚し
それと知ったかのように女の話は更に凄惨な物になっていく。
「到着と相成りました。」話に夢中になっていたわけでもないだろう
馬車が止まる前に女が言う。直ぐに馬車が止まる。
先に降りた女の後に続き招かれた館に入る。
そこは周りを鬱蒼とした森に囲まれ人里とは言いがたい場所に立つ邸宅で
あった。造りも決して豪華絢爛と言う訳でもなかったが貧窮した生活を送る
ソワに取ってはそれさえも眩しくておちつかない気持ちにさせられる。
「此方でお待ち下さい。」とフードの女に通された部屋には先客がいる。
後ろ手に締められた扉の音が消えると男が侮蔑するように聞いてくる
「お前は何者だ?此処とは何処だ?」
「人として物をの聞く態度が悪い者に名乗る名前はありません。
更に言えば、此処が何処かは私にも解りかねます。」ソワは用心するべきと
考えていた。
「ふむ。多少は知恵が回るらしいな。我の名はキンドン・カツラン。
自治区の領主の長男となる。訳あって全部は話せん
して?お前は」「靴職人で御座います」ソワは短く答える。
「それだけか?まぁ良い。我をここから出せ
。出来なければ捉えて投獄してやる」
横柄な態度を取る輩はこの国にも覆い。同じ状況におかれているのに
自分は優遇されるべきだと常に信じてる奴らだ。
勿論それが今この時でなければ有効な場合もあるだろう。
しかし此処で自分の力を誇示してもそれが認められるわけはないだろう
それでもこの手の輩は己の力を誇示したがる。意味などないのに。
ソワはキンドンを見る。観察すると言っていい。
背丈は自分より同じくらいだから高いほうとなるだろう
体格は太ってるというわけではないが肉付きはいい。まだ若いからそうはなってないが
年月を重なれば太り出すだろう。
領主の長男と言うのもうなずける。相応の貴族服を模した物をきちんときてる。
靴のセンスは良いとはいえないが最低限の手入れはしてある。
キンドンの言う事には嘘はないに思えた。
「何を見ている?お前にじろじろ見られる言われはないぞ」
憮然とした態度をとりながらも少し気はずかしいのだろう。
口を曲げてムッとする。
問題はどの亜人種と言う事だ。
人に化けているにはお互い様だ。その容姿から本来の姿を推測するのは意外と
難しい物となる
さて、そこまで太ってないとはいえその可能性があるなら豚種か猪。
犬種や猫種はあり得ない。背丈と体躯から大型の亜人ではないだろう。
希有な種類の場合もあるし確かに人に化けている状態ではわかりにくい。
「食べますか?」ソワは自分の腰に付けた小袋から蝙蝠羽の干し肉を取り出して
キンドンに差し出す。キンドンは目をほそめて首を横に振る。
「いらん」とだけ言う。
小さな善意ではあったがそれはソワの罠だった。
その答えを告げる。
「何故?人種がこの国にいるんです?ヌワレの泡川は容易くこえられないはず
しかもその様子なら何年も潜んでいるのでしょう?目的は赤燐石ですか?
それとも奴隷女の買いつけですか?」
「な・・何を言う。侮辱だぞ!我を人種だと決めつけるか。
これでも立派な狼菟族の」
「嘘仰い。まぁ旨い嘘ですね。確かに狼菟族は希有な存在です。
まずこの国で見つけるのは容易くはないでしょう。
ただ彼らはもっと気むずかしくて陽気です。
更に狩猟を得意とするから安々と捉えられる事はないでしょう。
本当に貴方が狼菟族なら此処にはいないと言うことになる。」
「な。なんだと。我はれっきとした自治区の・・・」
「それが嘘なんですよ。王族が滅んだ十三匹の蟾蜍の国では統べる者がいない。
法はありますよ。制度も。政府もね。ただ、統べる者がいないんです
自治区と言ってもあれは形だけのものです。同じ種族が集まり長が仲間を従えてるだけです自治区の領主なんてものはいないんです。
何より貴方からは匂いがしない。
もし、長い間潜んでいて亜人の真似事をしてるなら、付け忘れたでしょう?
亜人香りの薬草でも。それが答えです。貴方は人種だ。」
きっぱりとソワは言い切る。
「そっ。そう言うお前はどうなんだ!おまえこそ人種じゃないと言う証拠が
あるのか!」
その答えは極めて簡単だった。
ソワは体を硬直させると直ぐに変化を始める。
体を折り曲げ前がかみになると床に手を付く。
頭の形が変わりそれが後ろへと長く伸びていく。
口がなくなり瞳さえも細く閉じる
手も足も細くしなやかなものへとかわり反対に頭のそれは大きくなる
長く角状になったそれは一度身震いをするとぱっくりと四つにに割れた。
鞭となったそれは触手である。内側に鋭い歯の付いた大小の吸盤がずらりとならびその先端は鋭い杭と化す
鋭く撓る触手を床に刺しそれはソワの体さえ宙に浮かせる。
亜人としてのソワの先祖は塩海に住む魚類系のそれであり
陸に上がってからは鞭鮹種と呼ばれる。
鞭鮹の姿になったソワは目が見えない。その代わり頭の突起か特殊な音を出し
その反射を頼りに獲物を見分ける。その精度は驚異的でさえある。
強靱で太く鋭い触手を持つが逆にそれ以外の四肢は撃たれ弱く
触手を匠に使い獲物を突き刺して捕食する。
「これが証拠だ。亜人としての俺の正体だ。紛れもない亜人だろう?」
低く尾を引く野太い声がソワの頭の奥から響く。
鞭鮹種の口は正面から見える場所にはなく四つに割れた触手の奥にある
触手の根元にある口中には無数の鋭い棘がずらりと並びそれを使って
獲物の皮膚を裂きすり潰して飲み込むのが彼らの食事方法となる。
さてどうしたものか?
ソワは思案する必要があった。
言われるがままに変な邸宅につれてこらてたはいいが
通された部屋には自分を亜人と詐称する領主気取りの人種がいる。
証拠を見せろと言われるままに獣と化したはいいが
こいつを喰らっていいかは又別の問題であると感じる。
こんな奴に亜人自分は亜人だと言い張られても自分にはあまり関係はない
統べる者がいなくても法はあるからそれに準じて誰かに任せれば良いように
思える。
既に自分の前で男はガタガタを身を震わせながら尻餅をつき今にも失禁しそうな勢いでもあった。他人の邸宅で調子に乗って餌を喰らっても何か行儀が悪い猫のような気さえしてきえしまう。
「それくらいにして下さいませ。お客様。喰らってしまってもいいのですが
未だ調べたい事も御座います。まずは此方へおいで下さいな。」
緩やかなそして清楚な声が響きソワは振り返った。
美麗といえるだろう。その女性は美しい姿で微笑みソワを次の部屋へと
静かにいざなう。ソワは黙って従う。
つい彼女の後ろ姿に魅とれたと言ってもいいだろう。
促されるままに付いて言ってしまうのは雄の性そのものかもしれなかった。
通された部屋は先ほどのものより広く豪華でもあった。
暖炉さえあり太い燃え木がくべられており炎が爛々と煌めく
一つの執務椅子と机が置いてあり女性はそこへソワの身を勧める。
そこに座るには鞭鮹の変化をとく執拗がありソワはそうする。
変化を解けば人種の裸になるが、直ぐに奥の扉が開き数人の従者が現れ
ソワの肌に衣服を重ねていく。その全てが上質の素材で創られている物
ばかりだ。黒い燕尾礼服はソワの体にピッタリとあう。
予め採寸が行われしつらえた逸品とでも言うように。
それだけではなく身につける宝石や小物までは十分すぎるほど吟味されている。
自分ではそうとは思いたくはないが男麗人というのが一番似合う言い方だろう。
全ての装いが整うとソワは勧められた執務椅子に身を沈める
直ぐに上等すぎる赤葡萄酒がグラスにつがれる。
一口だけ口に含むとそれは赤葡萄酒に動物の血が交ぜられた物とわかる
贅沢を求める亜人貴族が好む酒だ。それは悪くない物である。
「説明を求めるます。」静かにソワは命として下す。
「御意・・。」短く女が答えるのを合図に再び扉が開き新たな従者と思われる者立ちが入ってくる
その数は4人。全員で5人となるがそれぞれ亜人としての種族は違う。
細くしとやかな者もいれば逞しいが凜々しい者背は高くないが妖艶な笑みを称える者。いずれも誰を観ても美しい女性でありそれぞれの個性を秘めている。
「ソワ・ペドロ様はご聡明な方で御座いましょう。それでもまだこの国の事には疎いと思います故、我等がその手助けをしたいと考えております。」
「自分はこの国の生まれではないがそれでも
長い間すんではいるつもるが・・・。」
「存じてあおります。しかしそれだけではこの国の本当の事を知ってると
いえません」
筆頭従者を思われる雪桃色の長い髪をした女がそれと断言する。
「では何を知れと言うのだ?」ソワの問いに一歩前にでて女は話す
「王族が滅んだ十三匹の蟾蜍の国に王族はいません。統べる者がいないのはご存じでしょう?
されど人々は幸せに暮らしております。勿論守るべき法もありそれに準じる政府もあります。資源も多く財も満ちております。それでも統べる者がいないのですから
もっと国は荒れて当然で御座いましょう?」
「確かにそうかもしれない。ただ人々は従順なだけではないのだろうか?
法とそれに準じる政府とやらに?」ソワはあまり考えた事はなかったので
少し困惑する。
「法とそれに準じる政府に人だけでは国は回りません。
何より人は愚者でございます。法の穴をかいくぐり政府の目を誤魔化して富を得る物悪事を働く者、何よりそれだけではこの国の財を狙う愚かな人種から
守り切れません。
「確かに・・。では自分を含めて人々は何に従っているというのだ?」
筆頭従者は真っ直ぐとソワの目を見て覇気を込めて言い放つ。
「王族が滅んだ十三匹の蟾蜍の国には統べる者はいません。
しかし、王族が滅んだ十三匹の蟾蜍の国を支配する方はいらっしゃいます。
ソワ様もお噂くらい聞いたことがあるでしょう?」
ソワは頭の中に引き出しから一つの名前を引き釣り出してくる
「一三匹の蟾蜍の魔女と炎蠅の王」
「お察しの通りで御座います。ソワ様。ご聡明で御座います事。ククっ」
女は意地悪そうに笑う。
「名前だけは知ってる。いやむしろ誰でも知っているだろ?
アレは寓話の一つだ。
しかし、彼らが実在するとでもいうのか?彼らがこの国を支配し人々はそれに
支配されていると?」
「さすがで御座います。ソワ様」再び女は嗤う。
「まさか?一三匹の蟾蜍の魔女ってお前達か?それには数が合わない。
それに炎蠅の王は何処にいるんだ?」
「私達こそが確かに一三匹の蟾蜍の魔女で御座います。
此処に参じておりますのは五名ですが他の者はそれぞれ命を受け所用に赴いて
下ります故。それに炎蠅の王は私達の目の前にいらっしゃいます。」
筆頭従者は旨の前に手を上げて小さくソワの顔を悪戯っぽく指刺した
「はぁ〜?何故指刺す?あれ?俺が王だと。炎蠅の王だとでもいうのか?」
「その通りで御座います。」筆頭従者が悪戯ぽく更に強く頷き他の四人も習う。
「いやいや・・・待て。まってくれ?俺は只の靴職人だぞ?
稼ぎだってすくないんだぞ」
「彼の靴は逸品で御座います。気に言ってたので長く使っていたのですが遂には
刃こぼれしてしまい。困っていました。直して頂いた所か以前より使いやすく
皆、良い声で鳴いてくれるようになりました。」栗色の背の小さい従者が言う。
確かにその足下には自分が手がけたあの靴を履いている。
「まて、ちゃんと最初から説明してほしい。俺が納得するまできちんとだ!」
半ばやけくそになってふんぞり返るソワに筆頭従者はにこやかに話し出す。
この国が興きたとき最初に王の座に就いたのは炎蠅の一族の王だった。
いまでは滅びた亜人種族の王が国を興し国の名も違った。
しかし王族が代替わりする内に幾たびの戦が起こりやがては別の国の王族の
人種の息子が小さな国の王となる。
その後長い間その一族が国を統べることになる。
人種の王は財を集め富を成すがそれは人種のみに還元され階級制度生む。
亜人は蛮族とされ蔑まされた。その時代が長くつづいた後突如幼き女王が
自らの命を絶ち月夜の女神の元に召される。
幼き女王が召された後にそれを継ぐ者はいなかった。
徐々に国は衰退の道を歩む。統べる女王がいなくなり国は荒れ
位の高い者は私財をもち屋外に逃げ出す。平民達もそれに習う
それでも国は滅びなかった。
去って行く人種の代わりに新たに国に集ったのは亜人達であった。
やがて人々は国の名を王族が滅んだ十三匹の蟾蜍の国と呼ぶようになる。
「先代の炎蠅の王がお亡くなりになったのは五年前で御座います。
それから今まで炎蠅の王の席は空白でした。その間にやはり愚者の人種は
この国の財と国民を狙って入り込んで来ております。良からぬ事となりますね」
目を伏せて愁いを魅せる筆頭従者の話は尚も続く
王族が滅んだ十三匹の蟾蜍の国を影から支配する炎蠅の王は世襲性ではない。
先代の炎蠅の王がその死により退官すると従う一三人の魔女も役目を終える。
次の者立ちも誰に選ばれることもない。しかし才と志がある者立ちが
自ずと集まり交じり認め合い一三匹の蟾蜍の魔女となる
集まった一三人の魔女達が国を巡り炎蠅の王にふさわしい才と志を持った者を
選ぶそのものが炎蠅の王の名を告ぎ王族が滅んだ十三匹の蟾蜍の国を支配する。
今、ソワの前に一三人の蟾蜍の魔女が立ち並び、彼女達が才をみとめたのが
ソワであり炎蠅の王となる。
「こ・・断ればどうなるんだ?」恐る恐るソワは聞いてみる」
「ソワ様がお断りになるはずが御座いませんわ」筆頭従者は淫猥にさえ嗤う
自分の腹を軽くさする。他の物もそれぞれ愚劣に口を歪め互いの顔をみて嗤う
亜人種は戦でも殺し合うし喰らうため人種や動物を狩りもする。
殺傷行為に抵抗がない。それでも亜人同士の共食いは禁業となっている
しかし彼女等はそれを厭わないと言う事らしい。
炎蠅の王として彼女等の上に君臨すれば良し。
断れば四肢を千切られ腸を裂かれ餌となり腹に収まる事になるだけだ。
これは明白なおどしでもある当然、ソワに断る権利なんて始めからないので
ある。
「では。炎蠅の王として聞く。私は何をすれば良い?」
「さすが炎蠅の王で御座います。この王族が滅んだ十三匹の蟾蜍の国を支配して頂きます
この国の全てを。そして人種共に鉄槌を」
この日から彼はソワ・ペドロの名を捨てることになり。
ギリ・エメトセルク・ゾン・アルキルと名乗るようになる。
13で始まる数字で13で終わる悪魔の名前と言う意味であり
ギリ自身その名前を気に入る事になる。
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