誰かに惚れるのは、どんな時?

   

 5月25日。

 読者目線のエッセイに出会いました。

 トップページにある『注目の作品』コーナーから、見つけたものです。

 少し読み進めるだけで「おっ! これは、覚え書きとして残しておかなければ!」と感じたことがあったので、今回は、その話です。

 エッセイを読んで、書かれていることを自分なりに咀嚼して、私自身が感じたこと……。つまり、感想コメントとして送った内容が、今回の元ネタです。


 まだ私自身、かなり序盤までしか読んでいないのですが(ご馳走を少しずつ食べるような感覚なのですが)、まずは、そのエッセイを紹介させていただきます(今まで作品名そのものは書かないことにしてきましたが、今回は、著者であるまるて様から許可をいただいたので、特例です)。


『読み専がカクヨムに登録してみた。』

https://kakuyomu.jp/works/1177354054889611355



 この日、私が読んだ部分に書かれていたのは、

「容姿の美しさなど、人物の直接的な外見描写があっても引き込まれない。むしろ、外見に関わるような行動が描写された方がいい」

 という話でした。

 これを読んだ時にピンときたのが、自分自身の若い頃の恋愛経験です。


 しばしば友人知人から「ハルさんの好みのタイプがわからない」と言われたように、私は、あまり外見的な特徴は気にしていませんでした。

 一般的に「美人だ」「美少女だ」と呼ばれる人に出会っても、私は「確かに整った顔立ちだけど、だから何?」としか思えません。そういう「美しさ」に対しては、あくまでも「欠点がない」と感じるだけ。「マイナスがない」であって「プラスである」とは違うので、特に心には残りませんでした。

 では、自分は、どんな時に異性を「外見的にも魅力的だ!」と思ってきたのか?

 それは、ふとした仕草や表情でした。「おっ、可愛いな!」と思う瞬間があり、それが心に刻まれて、恋に発展する……。


 私自身の経験は極端な例かもしれませんが、きっと誰でも、大なり小なり、似たような思い出はあるはず。

 ならば。

 小説の中で登場人物を紹介する時も。

 そうやって読者に「おっ、可愛いな!」と思わせれば良いのですね!

 いくら美辞麗句を並べ立てようが、読者の心は動かない。そうではなく、ほんの一瞬の、特徴的な行動や仕草。それこそが、読者がキャラクターに魅力を感じる瞬間なのでしょう!

 今まで、こんなことを意識したことはなかったので、これは目から鱗でした。

 ……よく考えてみると、ほんの少しくらい、無意識でやっていた気もしますが。



 同じエッセイの同じ項目で、外見描写だけでなく、性格描写に関しても書かれていました。

「例えば『神経質』と書かれるより『どう神経質なのか、神経質だからどんな行動をするのか』を書いて欲しい」


 これを読んで私が思ったのは、まず「『神経質』は性格描写じゃなくて性格設定ではないか?」ということ。

 そして。

 ハッとしました。

 自分が書いてきた小説にしろ、自分が読んできた小説にしろ。

 登場人物の性格を『描写』したつもりで、描写ではなく『設定』だけ披露している小説、結構あるのではないでしょうか?


 設定と描写。

 似ているようで大きく違う。

 設定でも説明できるし、描写でも説明できる。

 設定の方が端的で伝わりやすいかもしれないけれど、読者の心にしっかりと刻まれるのは、むしろ描写の方なのではないか……。

 ここでは『性格』に関しての話ですが、これは上述の『外見』でも同じことでしょう。容姿を示す美辞麗句は、一応は描写かもしれませんが、むしろ設定のような気がします。

 もっと言えば、前回の『世界観』の伝え方に関しても「設定ではなく描写で!」と言い換えることが出来るでしょう。



 さらに。

 この『性格描写』の話で、一つ思い出したことがありました。

 カクヨムではなく別のサイトでの経験なのですが。

 あるコンテストにミステリ作品を応募して、公式の感想サービスからコメントをいただきました。

 その作品では「作品世界において有名な探偵だが、今回は探偵役ではない『姉』」というキャラクターが登場していたのですが、その『姉』に関して、感想コメントの中で、

『姉の実力が強く発揮されるエピソードがあれば、よりよくなったことでしょう』

 と指摘されていたのです。

 慌てて私が書き加えたのが「ホームズ的な探偵小説で序盤にお約束のように描かれている、探偵役の観察眼の鋭さを示唆するエピソード」でした。「実力が強く発揮」とまでは行かずとも、何もないよりはマシだと思って。


 当時は、それ以上は自分の中で広げられず、あくまでも「この作品の改善点」で終わってしまったのですが。

 これも今にして思えば、もっと一般的な「設定と描写は似て非なるもの」という一例ですよね。

 登場人物が「世間で有名な名探偵!」というのは『設定』に過ぎない。だからいくら作中で連呼されても、読者は「ふーん、そうなのか」としか思えない。

 でも「どう名探偵かというと、例えば観察眼が鋭いから、こんなことにも気づいちゃう! そこから推理しちゃう!」という『描写』を入れておけば「ほう、なるほど!」と思ってくださる読者も出てくるはず。

 こうやって考えていくと「設定ではなく描写で!」というのは、かなり普遍的に使えそうな言葉です。



 だから。

 今回の結論、自分への覚え書きです。

 世界観の話は前回におこなったので、今回は、キャラクター云々に絞って……。


「キャラクターは、設定ではなく描写で語りましょう」

   

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