【解答編2】小説は物語であって教科書ではない ――作品の世界観をどう伝えるか――
今度は、5月1日。
読んでいて思ったこと、プラス、いただいた感想から自分なりに考えたことです。
まず、今回の話の前提として。
WEB小説には「異世界ファンタジー」って多いですよね。
個人的に、ファンタジーやSFって、世界観の多様性が面白さの
いや、否定するわけではありません。私自身、そういう作品を書いていますからね。
だから異世界ファンタジーを読む時、私は、ついつい「ああ、あのゲームみたいな世界だ」と思ったり、あるいは「これは中世ヨーロッパ風ファンタジーだ」と思ったり、とにかく、既存の世界観を頭に思い浮かべてしまいます。
もちろん、既存の世界観と似ているとしても、あくまでも『似ている』だけ。どんな作品でも作者が頑張って用意した作品独自の設定があり、そこが『多様性』として興味深いところなのですが……。
この日。
私は「どんな世界観か全くわからないままスタートする異世界ファンタジー」に出会いました。
ゲームっぽい世界なのか、中世ヨーロッパ風なのか、それすらわかりません。ならば非常に独特な世界設定かというと、その説明も描写もありません。
大雑把な設定をすっ飛ばしたまま「とにかく始まる。キャラクターたちが動き出す」という感じだったのです。
……いや、これが一概に「悪い」とも言い切れません。最初は「掴み」を重視して、落ち着いてから「説明」。よくある話です。例えばアニメで「第二話が設定説明のためのエピソード」みたいな感じで。
ところが。
上述の作品では「もう『落ち着いた』段階だよね?」と思えるくらいまで読み進めても、一切説明がありません。
というより、感想欄を見ると、どうやら作者としては説明しているらしいのですが、単にそれが私の頭に入ってこない。
なんでだろう?
マクロな説明をすっ飛ばして、ミクロな説明から始めたから?
……考えたのですが、よくわかりませんでした。
そして、同じ日。
やはり「大雑把な世界観の説明を抜きにして始まる物語」と出会いました。
どんな世界か、という話は一切せずに、細かい情景描写が続く感じで、そこが印象深い作品です。
でも。
これで伝わるのですよ、何となく。
ああ、そういう世界なのか、と。
この「何となく」を、自分なりに分析してみると。
例えば風景描写の中に、森の樹々に関する説明がある。
それは『樹木』の描写ですが、そこで使われている語句が、いかにも現実世界の樹々とは違うのです。だから、それだけで「なるほど、そういう独特の植物が生えている世界なのか」と思えるわけです。
この『森の樹々』は一例ですが、その一つに限らず、そうした「ここは、そういう異世界だぞ」を匂わせるような表現にあふれているのです。
なるほど。
こういう作品を読んでいくと、それらが少しずつ積もり積もって、だんだん読者もその気になってくる。
いわば読者の心構えが違ってくるのかな、と
教科書的に「これはこうなんです、あれはああなんです」と説明されるよりも、風景描写のような『絵』でイメージさせる方が、伝わるものもあるのだろうな、と。
だって小説は物語なのですから!
……そんなことを思ったわけです。
ちょうど同じ日に、いただいた感想で、作品の序盤に関して「もっと雰囲気で世界観を伝えてくれないと、作品に入り込めないです」と言われました。
そうなると「これも上述のような『心構え』の問題かな」と私は理解しました。
序盤で何をどこまで、どうやって説明するか。
これは根本的な構成にも関わってくる話でしょうから、すでに完結した作品や、かなり書き進めている作品では、手直しも難しいのですが……。
今後、また新しく書き始める時のために。
自分に言い聞かせるべき、覚えておくべきこととして。
「小説は物語であって、教科書ではない。だから、教科書的な説明を書くのではなく、物語的な雰囲気・イメージを作ろう!」
作品の世界観をどう伝えるか、という話でした。
……このように前回と今回が、この時点での、前々回の問題に対する『答えの一つ』なのですが。
実は今回の話、5月25日に「思ったこと」とも少し関連しますので、次回は、その話を。
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