赤いニシン

   

「特に短篇のようなオチが大事な作品では、いかに読者に結末を予想させないかが重要になってきますが、その際キャッチコピーや紹介文を利用するのも、一つの手段。本来ならば作品の中だけで読者を騙すべきなのでしょうが、読み始める前に何らかの先入観を与えることで読者の目をそらす、という手法もあることに気づかされました」



 これは、4月13日の近況ノートに記した文章です。

 カクヨムで作品を読んでいて「上手く騙されたなあ。これ、紹介文の影響もあるだろうなあ」という短編に出会ったからです。しかも、私が勝手に誤読したわけではなく、どうやら作者の意図的なものだった様子。

 ミスリードとかミスディレクションとかレッドへリング赤いニシンとか、そんな感じで呼ばれる手法ですね。ある意味、キャッチコピーや紹介文も作品のうち、ということなのでしょう。


 長編では、私も「普通に作品を読んでいったら、ヒロインが死んでしまうのは明白だけど……。これならば読者が『あらすじで仲間になると言われているのは、ヒロインのことかな?』と勘違いしてくれるかもしれない」と思いながら書いた紹介文があります。

 でも短編では、そういう意識をしたことはなかったので……。逆に、オチが大事な短篇作品こそ、そういう意識も取り入れるべき、と思ったのでした。


 ただし。

 今になって、あらためて考えてみると……。

 この「キャッチコピーや紹介文でミスディレクション」というのは、下手をすると「タイトル詐欺じゃないか!」みたいに怒られることもあるので、注意が必要でしょうね。

 例えば推理小説で意外な犯人を描いた時、読者に「してやられたなあ」と微笑んでもらえるか、あるいは「は? 何それ? なんでコイツが犯人なの?」と言われてしまうか。それと同じで、何でも『騙す』時には納得のいく騙し方が必要なのだろうな、と思います。その意味で、私が読んだ短編小説は、騙し方の上手な例だったのでしょうね。

   

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