第461話 夢と望

   ◇◇◇


 さらにそれから2週の時間が流れ、季節は秋を通り過ぎ、寒さが身に染みてきた。


 その間、由衣と絆ちゃんと遊園地に行き、心から楽しんだ。由衣も童心にかえったようなはしゃぎっぷりだったし、連れて行った者としてはとても嬉しかった。


 まあ、いろいろあったけどな……由衣が大胆な行動して……。


(……由衣、可愛かったなぁ……)


「義孝さん、何をぼーっとしてるの。集中しなさいな」


 そして……俺は休みの日に自宅にて、如月の個人授業を受けていた。休みの日に……俺って偉い。


 JKと2人でお勉強(健全)。今日の内容は4大名家ついてだ。

 大人は遊ぶ時は遊び……働くとき死ぬ気で働くものだ……勉強嫌い。


「4大名家はそれぞれの役割があるわ。これは40年前に結ばれ、今まで守り続けられてきたわ……表向きは。裏では他の家の利権を食らいつくそうと、今回の田中家の騒動みたいなことが何度も起こってきたわ」


「…………金持ちなんてこの世からこの世から消えればいいんだ。そうすれば平和になる」


「……日本有数のお金持ちの発言とは思えないわね……」


 気持ちは貧乏です。はい。

 まあ、一度決断した以上は逃げてはいられないからな……。

 それにあんまりふざけていると、わざわざ家庭教師をしに来ている如月にも悪い。


 というか、なんかお礼をしたいな……。


「如月、1つ聞きたいんだけど……」


「何かしら……? 胸のサイズなら、なんとAAからAに超進化を遂げたわ。ねぇ、これってすごくないかしら?」


 嬉々として自分の胸の話をしてくるJK……おっさんはこういう時どういう反応をすればいいんだ? 


「自分で触っても大きくなったことを自覚できるわ」


 おい、自分の胸を揉むんじゃねぇ。俺は何を見せられてるんだよ……少し、興奮するじゃねぇか。


 ピンポーン。


「ああ、明菜か……」


 家のチャイムが鳴り、しばらくすると明菜が部屋に入ってくる。


 実は俺が家で勉強する時に予定が空いてると昼飯を作りにきてくれる。


「ふふっ、アルバイト中の未来ちゃんの代わりにお昼ご飯を作りに来ました〜何か食べたいものはありますか?」


「毎回悪いな。そうだな勉強バテ気味だから……肉で」


「ふふっ、わたくしも同じよ」


「了解ですぅ〜。とびっきり精がつく美味しい料理作りますね」


 明菜は持ってきたエプロンをして、髪の毛をポニーテール風にまとめる。


「…………」


 精がつく料理作るとか、エプロン装備するとか、ポニーテールとか……明菜がすると、とてもエロい。


「……色っぽいわね」


「えっ!? の、望ちゃん!?」


 如月も同じ気持ちらしく、俺に同意を求めるような視線を送ってくる。


「ああ、もう自然体でエロい……」


「よ、義孝さん!?」


「ええ、明菜さんは絶対に夜の興味は旺盛よ。8割増し積極的になると推測できるわ。自分から行動し、知識をどんどん吸収していく……」


「うわっ……ドエロじゃん」


「ふ、二人とも何を言ってるんですかぁ!?」


 顔を真っ赤にする明菜。

 もうその顔を真っ赤にして照れて怒る姿も可愛くてエロいもん。


「もう知りません! そんなことを言う人たちには少しだけ辛い料理を作っちゃうんだから!」


「……仕返しが微笑ましいな。激辛ぐらいすればいいのに」


「えっ……? あんまり辛いと可愛そうかなっと……」


「現代に降り立った天使ね」


 如月がよくわからないことをしみじみと言い始めた……まあ、全面的に同意するけど。


「もう、望ちゃんはまたよくわからない褒め方して……」


「ふふっ、ごめんなさい」


「あれ? 如月と明菜……さらに仲良くなったか?」


 何か他人行儀な感じが一切しない……まるで実花未来の関係を見ているようだ。


 俺がそう聞くと如月が得意げにAカップの胸を張る。


「わたくしと明菜さんは死線を潜り抜けた戦友よ。文化祭で決死の作戦の協力関係だったの」


「あ、あはは……そうですね」


「そうなのか?」


 あの日は俺一日中修羅場で周りを気にしている余裕なんかなかったからな……。


「ええ、義孝さんにもしものことがあったら、明菜さんが――」


「わあああああ!! 望ちゃん!! み、未遂に終わったんだから、義孝さんに言わなくてもいいですよぉ~~!!」


「? それってどういう……」


「義孝さんは気にしなくていいですぅ……!!」


 明菜は強く否定して、続いて俺に聞こえない声量でごにょごにょと語り始めた。


「義孝さんと入籍なんて……い、いつか近いうちに、自分の意志で言いたい……」


 どうしたんだ……? まあ、無理に言わせる必要はないか……。

 どちらにせよ……2人は俺のために独自に動いてくれてたってことだよな……由衣の時みたいに何かお礼ができればいいんだけど。


「なあ、二人とも俺に何か頼みたいことあるか?」


 俺がそう言うと如月と明菜は互いに顔を見合わせる。


「……貴方がわたくしたちに下出にでる必要はないのだけど……ふふっ、こんな嬉しい機会逃したくないわね」


「ふふっ、結局私は何もできていないんですけどぉ……」


「いや、ステージイベントを盛り上げてくれただろ? 何でも言ってくれ」


「なんでも……」


「何でもですか……」


「い、いや、エッチなのは駄目だからね!!!」


 俺は思わず乙女になってしまう……。


「ふふっ落ち着きなさいな。実はわたくし達、義孝さんにお願いしたいことがあったの」


「そうですね……」


「なんだ? とりあえず言ってみてくれ」


『遊園地』


 2人は声を揃えて言う。


「由衣さんだけずるいわ……あ、もちろん、貴方が退屈しないように別の遊園地をチョイスするわ」


「私達も行きたいですぅ……」


「えっ……別にいいけど」


 予想外な言葉にきょとんとしてしまう……何俺両手に花で遊園地に行くの? どこのリア充?


「決まりね。ふふっ計画しないとね」


「ふふっ楽しみですぅ」


 ま、まあ、俺得すぎる気がするけど、二人が喜んでくれてるからいいか……未来には土下座しよう。


 俺も2人が楽しめるように何か考えよう。

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