第462話 第3の刺客達
また遊園地に行くことが決まった数時間後……日も暮れそろそろ夕飯時だ。
勉強会も終わり、バイトの娘たちを部屋で待っていると……俺は上の階のアヤメの部屋に呼び出された。
いや……呼び出されたなんて生易しいものではない……普通に誘拐されてきた。
「お、おい! 俺は何で可愛い妹に縛られてるの!?」
柱にロープでつながれて、何故か手錠つけられた。
なぜこうなったかというと――。
如月と明菜が帰った後に1人で娘たちの帰りを待っているとアヤメが何故か窓から現れて部屋に入ってきた。
『であえ、であえ!! 悪代官のお兄ちゃんの部屋はここでござるかああああああ!!!! 曲者をとらえるでござるううううう!!』
そして意味のわからないことをわめき散らし、これも何故か一緒にいた葵ちゃんに無理やりここに連行されてきた……。
「先輩、ゲットだぜ!!」
葵ちゃんは一仕事を終えた社畜の顔だ。もう意味不明過ぎ。
「はあぁぁぁ、お前ら何の用のだよ。こんな力技を提案するのは1人しか思い浮かばないんだけど……」
「おお! さすがお兄ちゃん! 我らに黒幕が居るのをご存じか!! それなら大事な話をする前に私たちの黒幕を紹介するでござる!!」
『黒幕は私よ!!! ジョン君!!!』
アヤメの部屋のお風呂場から制服姿の北条が登場する。やっぱお前か!! アヤメと葵ちゃんにしては乱暴な手だと思ったわ!
「…………」
落ち着け俺……ここで怒鳴っては大人げない。……いや、誘拐されて縛られてるんだから怒鳴っていいのか……と、とにかく、ここは菩薩観音のように穏やかな気持ちでこいつらに語り掛けよう。
「……そこの黒幕さんに聞きたいんだけど、俺は何で縛られてるわけ? 親しき中にも礼儀あり。こんなことをするなんて非常識じゃないか?」
正論という刃を振りかざす……だが、北条は何故かきょとんとする。
「えっ……? 実花から『パパは無理やりが大好き!! 縛られるのが好き!! やふうううう!!』ってAVを見せられた……ああいうの初めて見て恥ずかしかったけど、いい経験だったわ!」
「…………」
一番非常識なのは家の馬鹿娘だった……あいつ帰ったら説教フルドライブエボリューションだわ。
「すんません……家の娘が本当にすんません……」
「気にしてないわ!! 私はジョン君がどんなに変態で下劣でゴミクズみたいな性癖を持っていても下に見たりしないわ! どんとこいっての!」
「初めてのAVを見てどんな気持ちだった? どういう風に思った? JKの感想が詳細に知りたい」
「興奮したわ!! 気持ちの昂りを抑え切れないわ!! あなたコレクションを揃えてるんでしょ! お勧めを教えなさいっての!」
うむ、家の馬鹿娘は大企業の令嬢にとんでもない趣味を与えたようだ。
だが、俺としてはそこまで頼まれると、至高の動画コレクションを北条に開示するのはやぶさかではない。やぶさかではないのだが……。
「うっわ……先輩マジゴミ。女子高生に卑猥なことを教え込んで何をするつもりなんだろう」
「お兄ちゃんはエロエロでござる〜セックスねちっこそう」
「…………」
世間はJKにAVを渡す中年に優しくない。
ここは話を変えよう。
「アヤメ、お前怪我は大丈夫なのか? 見た感じピンピンしてるけど……」
「うん? あー随分前の話でござるな。あんなの3日で完治したでござる」
お前骨折とかしてなかったっけ?
「ジョン君!! その話も大事だけど今はもっと大事な話があるっての!!」
「…………」
俺が縛られてる理由だよな……なんかもう俺慣れてきたんだけど。さすが俺。
「はぁぁ、なんだよ」
俺がうんざりしながら聞くと、北条は笑みをふっと消す。どうやら真面目な話のようだ。
「今回の田中家の件で田中家は北条というバックアップ失い、如月はまだ内乱中、竜胆は頭が変わった……そして北条は他が混乱しているのに自由に動けた。今回の件で一番得したのは北条よ」
「えっ……普通によかったじゃん」
「いいえ! 北条は受けた恩に対して100倍の力で応えるわ!! 焼肉だけじゃ全然足りないっての!」
「…………」
何だろう、言ってることは立派だけど普通に暑苦しい。
「だから! 今回世話になったグレイさんと葵さんに願いを聞いたのよ!! 後であんたにも聞くから覚悟しなさい!」
「…………えっ? 俺が縛られてるの葵ちゃんの趣味なの?」
「な、なんでそうなるんですか!? 私は先輩と違ってノーマルですよ!?」
「いや……俺の超絶可愛い妹のアヤメがそんな趣味を持ってるわけないだろ! それに比べて社畜は大抵のことで興奮する」
「なんですかその偏見は!? 先輩だけですよ!?」
「えへへ、お兄ちゃんに可愛いって言われたでござる。でも、お兄ちゃんを縛っていた時少し興奮したでござる」
「うむ、それならいい……」
「差別だあああああああ!!!」
いや、アヤメほどの美女が縛るのに興奮したとか……こっちも興奮するわ。
「それで俺は何で縛られたんだ?」
「約束を果たすためよ!! ジョン君! 私達と遊園地に行きなさい!!」
「…………へっ?」
予想外の言葉に驚く……。
「うぅ、みんなお兄ちゃんと遊園地に行ってずるいでござる……私も行きたいでござる」
いじけるアヤメはめっちゃ可愛い。
「いい加減仕事で徹夜明けで一人で行く遊園地には空きました……休みの日にみんなで行きたいです……休みの日に。休みの日に」
いや、お前は怖い。
「如月が行くのに私が行かないなんてありえないわ!!」
お前はお前で張り合うなよ……。
「いや、別に縛られなくても断りはしねぇよ……いつ行く?」
「本当でござるか!? お兄ちゃん3回目なのに……」
「気にしなくていい」
「ふふっ、よかったねアヤメっち」
「うん!!」
「それじゃあ、さっそく完璧で力業の計画を立てるわよ!」
「おお! でござる!!」
こいつらには本当に心配をかけて、力を貸してもらったからな。喜んでもらえるなら遊園地に行くなんてお安い御用だ。未来に土下座するだけだ。
だけど……一つ言いたい。
(遊園地の計画をしてないで……ロープをほどいてくれないかなぁ)
そんなことを考えながら、嬉しそうに計画する3人を見ていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます