第456話 真家族会議
栄三との話し合いが終わって数時間後の自宅にて――。
日はすっかり暮れて時刻は19時を指していた。
栄三との戦いも終わり、全てハッピーエンド! という訳もいかず……俺たち家族の間で緊急の家族会議が行われていた。
参加者は俺と実花未来――そしてつぼみだ。
「…………」
俺はおどおどと『娘たち』を見る。
「…………」
未来は不機嫌そうにじぃーと俺とつぼみのことを見比べている。でも意外なのが……不機嫌であるが、どこか雰囲気に「仕方がないな、お父さんは……」みたいな感情が込められていることだ。
「…………」
実花は「やれやれだぜ」みたいな感じで苦笑い。実花は驚くような顔は見せず、俺がつぼみの話をする前から、なぜか事情は察していたようだ。
「…………」
そして……つぼみはとても不機嫌そうに俺を見ている「正気か? この低脳が!?」とでも言いたげだ。
「…………」
誰も話さない。なんだこの重い空気はない……まあ、8割以上は俺のせいなんだけど。誰でもいきなり『家族』が増えたらそういう空気になる。
凡人ならこの場で発言なんてできないだろう。いたたまれなくて。
だが、俺は道を突き進む社畜。こんなことめげたりしない!
「こいつは俺の隠し子だ! 仲良くしてやってくれ!」
「あ、あはは、パパぁ、いくら行き詰まったからって……それはないかなぁ? なつきまんじゃないんだから力技は無理がある」
「お父さんつまらないです」
「お前の血なんて1ミリも入ってないわよ……」
「…………」
どうしよう、めげそうなんだけど。
「で、でも仕方ねぇだろ。こうなっちゃっんだ」
「仕方ないで家族を増やさないでください」
「クソ正論でわろた」
「パパぁ、笑ってる場合じゃないよー。川島家……いや、もう竜胆家か……」
「それも大問題だよな……どうしよう。俺社長の器じゃないんだけど」
「はぁ、本当にお父さんは仕方ないんですから……私がしっかりしないと」
そんなやりとりをしていると……つぼみが心底嫌気がさした顔で口を挟む。
少し殺意も混じっている。
「ふざけるのも大概にしろ。そもそも私は竜胆義孝の所有物になっただけだ。家族じゃない」
一瞬部屋の中がシーンとなるが、言葉の意味を理解するとつぼみ以外の空気が柔らかくなる。
「はああ? 意味わかんないこと言ってるんじゃねぇよ。俺はJKの愛人や性奴隷を持つ趣味はない……世間的に死にたくない。死にたくないよぉ……」
「はぁぁぁ、誠に遺憾ですが、お父さんの所有物なら家族です。誠に遺憾ですが……」
「馬鹿だなぁ、つぼみ姉はそんなことでぐじぐじ悩んで……」
「…………」
つぼみは唖然としている。素人に家のノリについてこいというのは無理があるかも知れない。
狂ってるし。
「…………」
まあ、引き取った以上は責任果たさなきゃな。かと言って実花未来蔑ろにするつもりはない。
互いが納得するまでじっくり話合おう……俺たちにはその時間があるんだから。
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