第447話 娘
俺とフレアさん、そしてなぜかボマーは部屋に入る。
「ん? おれのことは気にせんでくれや。もう、置物とかそういうレベルの扱いでいいで」
「……いや、無理だろ。自分のやっとことを胸に手を置いて考えろや……はぁ、悩みだらけだ」
おれは今の状況に頭を抱えながら部屋を見渡す。
そこは高級ホテルに相応しい豪華な内装と、大きな窓からは都心を一望できる風景が広がっていた。庶民の俺にはまさに勝者の部屋という感じがして、今すぐ逃げ出したい。
一生こういう部屋と関わることはないと思ってたんだけどな……。
「金持ちはこういう場所が好きだな……まあ、あるものは『なんでも』使わないとな」
俺が多少嫌味を含みつつそう言うが、栄三はたいして気にする様子もなく、部屋の中央に置かれているソファーに腰を掛ける。
そして背もたれに身体を預けて、俺を興味なさそうに見る。
「私は無駄が嫌いでね。無駄な問答をするつもりはない。さあ、私は忙しい身なのだ、早く座りたまえ。ビジネスの話をするとしよう」
「……あーそうかい」
俺は相手の態度にイラッしながらも、ひとまずは言う通りに栄三の正面に座る。
フレアさんは俺の後ろに控え、ボマーは少し離れた入り口あたりに椅子を自分で用意して腰掛ける。
こいつも話を聞くのか?
「おい、こいつとは契約が切れてるんだろ? ここにいさせていいのか?」
「……なんのことだ? 私には誰のことを言っているのかわからないな」
俺がボマーものことを指を刺すも、栄三は一切そちらを向かず淡々と俺の質問に答える。
「いや、クリムゾンボマって言う厨二のことだけど……」
「誰のことだ? 私には一切なんのことかわからない」
「…………」
「兄さん無駄や」
俺が栄三の態度に呆気に取られていると、ボマーが疲れたように答える。
「どうやら、田中家の当主様にはわいの姿は見えとらんらしい。わいと契約した事実も『なかった』ことになっとる」
「なんだよそれ、ガキじゃねぇんだから」
「ほんまやなぁ。だけどガキみたいなわがままが現実になってしまうんが、『権力』ってやっちゃ」
「…………」
あー、くそ。そんな謎理論どうでもいい。さっさとこいつをぶちのめして、帰る。
「そうかい、なら聞こえない単語は聞き逃せ。俺が話したいのはあんたの娘のことだ」
「娘……? なんのことだ私に『娘などいない』」
「…………」
栄三はピシャリと言い切る。
こいつは日本語が通じないのか?
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