第411話 親子の時間
俺は子供のようにはしゃぐ娘たちをおどおどしながら見ていた。
「パパ! 次はお好み焼きを食べようよ!」
「いえ、あそこのクレープの方が美味しいですよ?」
「お、おい」
俺たち3人は学園祭を回る……娘とこんなほのぼの? とした日常は何ものにも変えられないものだ。
だが、俺はこいつらのように鉄の心臓は持ち合わせていない。
周りの視線が気になっちゃう……さらに……。
「周囲の警戒は怠らずに……獲物を出したらすぐに無力化を。多少怪我をさせても問題ありません。全て揉み消します」
恐い顔で周囲を警戒してトランシーバーで誰かと連絡をとっているフレアさんが……おっかない。
い、いや俺はフレアさんを見なかったことにしよう……そうしよう。
「お前らよく普通に文化祭を楽しめるな……俺はもう今すぐ誰の視線もない薄暗い部屋に行きたい」
「ホテルですか? もうっお父さんは大胆なんですから!」
「今回は学校でマジで洒落になんねぇから自重しろや!」
ああ……周りの視線がさらに厳しくなった気がする。ち、違いますよ? ホテルと言ってもビジネスホテルですよ! とか、大声で叫びたい。
悪化しそうだから叫ばんけど。
「あっ、それよりもパパ!」
「それよりもじゃねぇよ……マジで重要なことだから」
「そうですね。初めてなわけなので……ホテル選びは最新の注意を払いたいです。一生の思い出となる場所ですから」
「そう言うことじゃねぇよ!!」
「まあまあ、パパ、未来ちゃん落ち着きたまえよ」
「一番トチ狂ってるお前に言われるのは癪だけど……一理ある」
「そうですね、日頃から一番ふざけてるのはお姉ちゃんですけど、一理あります」
「酷くない!?」
日頃の行いって大事だな……って、あまりいじめると可哀そうだな。
「ほら、聞いてやるから」
「むぅ~、いいもん。あとでゆめゆめのおっぱい揉みしだいて慰めてもらうもん」
その場には俺も立ち会おう……って言うと、また話がややこしくなるからスルーしよう。
「パパ、未来ちゃん! ゆめゆめのイベント見に行こうよ!」
「ああ、そう言えばそろそろだったな……」
俺は時計を確認する。
イベントの進行は三沢に任せてるから大丈夫だと思うけど。
「明菜には心配かけてるし、顔を見に行くか」
「私もそれがいいと思いますが……お父さんが夢野さんにデレデレするのはどうかと思います」
「あのな、あのレベルの美女にデレデレしないのは男として終わってるからな?」
「あはは、パパがまたよくわからないこと言ってる~」
男としての本能の話だわ。
俺と娘たちはそんなことをワイワイ話しながら、明菜がいる空き教室へと向かった。
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