第405話 社畜の呪い

「ああ、こんな状況なのに働かなければならないのか……? 犯人の、『田中』だっけ? どれだけ俺を社畜にしたいんだよ。もう意味不明すぎて狂気を感じるわ……でも一番嫌なのは働こうとして安心している自分だ」


「………相変わらず犬以下の人間だな」


 昼12時過ぎーー。

 俺は浅田と共に職場である豊川高校に来ていた

 文化祭ということもあり、今いる校門前には大勢のお客さんや生徒がいた。


 楽しそうな雰囲気の中俺だけ絶望に支配されてる。


 ちなみに俺は今はお尋ね者というかか、有名人なので浅田特性の変装中である。


「なあ、こんなDQNの恰好で大丈夫か? 俺ってバレないか?」


 隣にいる浅田にこそっと話しかける。


 俺の服装はダメージジーンズにチェーンがたっぷりついたジャケットに戦場帰りの様にボロボロのキャップ、さらにはやたらとデカいサングラスだ。


「ああん? 大丈夫だって! いざとなれば浅田冬の兄って言え。あたしのマネジャーって兄貴なんだけど、あいつやんちゃなファッションで有名なんだよ。ゴミが」


 ああ……そう言えば去年の文化祭でこんな派手な格好の兄ちゃんと話したな。あの人、こいつの兄だったのか……。


「という訳でよろしくね♪ 『お兄ちゃん』♪」


 自分のロック系ファッションのくせに可愛い子ぶる浅田。さすがはアイドル……可愛い。


 というか……また妹が増えた。妹って増えるもんだっけ?


「…………」


「なにその反応、お前さあ自分のキモさが国を脅かす公害だって言うことに気が付け」


「知らん。それで……お前は制服じゃなくていいのか?」


「馬鹿、あたしがアイドル面して登校したら大パニックになるだろうが。着替えは持ってきてる」


「あ、それもそうか」


 こいつと行動することが多くて、わけわからなくなるが、こいつ人気アイドルだから、普通に登校したらパニックになるか。 


「さあ、ババアのところに行くぞ」


「ああ、仕事をしますか……」


 俺はうんざりしながら先を歩く浅田のあとに着いていく。そんな俺の行動を不思議に思ったのか、浅田は足を止めて俺の顔を見る


「なぁ、正直あたしは……お前は家に閉じこもってると思ってた」


「はっ? 何だでだよ」


「ゴミが、普通に考えればそうだろ? おそらくお前がニートになっても竜胆か如月がどうにかするだろう。お前は醜く寝てればいいんじゃねぇか?」


「それはそうなんだけどな……」


 実際働くのは気は乗らない。いやだって脅されて働くってどういう状況だよ……だが。


「みんなが俺のために動いてくれているからな。それなのに俺だけが寝ているなんてことはできねぇ。それに働かないと落ちたかないしな。ふん、社畜脳だってのは理解している。笑いたければ笑えばいいさ」


 まあ、うじうじ家で悩んでいるよりも働く方が性に合っているだろう……って、浅田のやつマジで笑いを堪えてねぇか?


「あはははは、そうだな、お前はクズでゴミだ。面白れぇ、最高の道化だ」


「こいつ……本当に笑い飛ばしやがった」


「当たり前だ! こんなおかしいことそうそうねぇよ! あはは、茶番だ! だが、あたしは……嫌いじゃねぇぞゴミクズが」


 浅田は俺の言動を笑い飛ばす……その言葉は普段なら腹が立つのかもしれないが、不思議とその嫌味のない笑顔に……元気づけられた気がした。

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