第402話 人脈バンザイ
それから1時間後の11時――。
俺は生名さんに呼び出されていた会議室に来ていた。
まあ、昨日から今日までで迷惑しかかけていないので、怒鳴られて、最悪その場でクビを言い渡されたりして、修羅場になると予想をしていた。
だがフタを開けてみると――。
「ふふふっ、このフロランタンはどうですか? コーヒーも美味しいででしょう?」
「…………」
俺は満面の笑み(疲れてる)の生名さんとマジでお茶をしていた。
「あ、あの……お偉いさんはまだですか?」
「い、いえいえ、そんな無粋なことを言わずにこの静寂の時間を楽しましょう」
「えっと……本音は……?」
「わあああああああん!!! 助けてください!!! 川島さん!! 助けてください!! 私どうしたらいいかわからないんです!!」
「俺に助けを求める!? 絶対俺のが大ピンチだと思うんだけど!!」
「そ、それはそうですが……! で、でも! だ、だって! 私だってどうしたらいいかわからないんだもん!! 少しぐらい悩みを聞いてくれても……」
やばい普段キリッとして「チワワでも飼おうかしら?」とか優雅に言ってそうな生名さんがキャラ崩壊している。
ああ……うちの会社はここまで人を追い詰めるか。これだからブラック会社ってやつは許せねぇ。
これが落ち着いたら葵ちゃんを紹介してブラック会社撲滅を志そう。
「わかりました……生名さんの悩みを聞きましょう」
「…………なんで高みから言ってるんですか? 私の心労の半分は川島さんのせいなんですけどね」
ジト目で見てくる生名さん。切り替えのできる女性素敵です。
「すみません……」
やっぱりそうですか……謝るしかねぇ。
「はぁ、川島さんってどんな人脈を持っているんですか? 今回、川島さんのネット記事の件や会社の業務不振とか役員の不倫とか、役員の息子の万引きとか全部! 偉い方が全ての責任を川島さんに取らせようとしていた時に――」
「……待て、最初のネット記事しか俺のせいじゃないですよね!? これだからブラック会社は嫌いなんだ!! 困ったら足切りをすればいいとか思ってやがる!」
「それはともかく!」
いや、一歩間違えば人生詰んでるんだから、ともかくで済ませるなや!
「そんな時にうちの大株主の『竜胆家』の方から鶴の一声があってその案はなしになりました。それでそんな『竜胆家』が守った川島さんと関わりたくないからと……私が話を聞くことに」
「…………権力ってすげぇ」
しみじみ呟く俺。生名さんもしみじみ口を開く。
「本当ですよね……私、生まれ変わったら王様になりたいです」
「俺は田舎町の伯爵になってのんびり暮らしたいです」
「それで可愛い女の子を権力を使って侍らせるんですね。エッチです」
「否定はしません。人間、過剰な権力を持ってやることなんてそんなものです」
「川島さん、おっぱい好きですもんね」
ん? 何で俺はまったりと生名さんと話してるんだ。こんな場合じゃないよな……はぁ、生名さんにはざっと説明するか。
また生名さんの心労が増えそうだけど……申し訳ない。
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