第398話 実妹の混乱
川島晴香とアヤメが奇跡の出会いをして数分後――。
「あはは、晴香ちゃんとお茶できるなん思わなかったでござる! うれしいなぁ」
「そ、そうですか……はい、そうですか」
晴香はアヤメと共に駅近くの喫茶店にいた。知らない人について行ってはいけないと、親から教わった晴香だが『実の兄の外人金髪妹』というあまりにインパクトあり過ぎる設定にのこのこついてきてしまった。
(こ、これ悪徳商法だったらどうしよう……で、でも、私がおにぃの妹だって知ってたし……あ、あれ? もしかして知ってた方がまずい? おにぃ今では有名人だし……もしかして、ただの人質!? お、落ち着くんだ川島晴香! ここは慎重に会話を……)
「晴香ちゃんは何であそこにいたでござるか?」
「えっ? あ、葵ちゃんと逸れちゃって……スマホ電池が……」
(はっ!? スパイに情報を渡してしまった!? ここは慎重にいかないといけないのに!?)
晴香がそんなことを考えていると、アヤメは笑顔でスマホを取り出して晴香の前の差し出した。
「はい! 葵ちゃんに電話してあげるでござる!」
「えっ?」
差し出されたスマホの画面には『椎名葵』の電話帳が映し出されていた。
(ど、どういうこと? 何で葵さんの電話番号知ってるんですか?)
思考から「?」が取れないまま、晴香はスマホを受け取り、葵に電話をかける。しばらくすると――。
『あっ! アヤメッち! 今人を探していて……』
「あ、葵ちゃん……?」
『その声、晴香っち!? あ、ああ、待って……社畜の私は状況判断能力に優れている……すべてを見通したわ』
「アクエリオン!」
『……ごめん、ちょっと何を言ってるかわからない』
「ですよね……それで、このアヤメさんは……」
『あ、あれ? 先輩にアヤメちゃんの事情を聞いてないの? 私もあんまり詳しくないけど……』
「いえ、まったく……いきなり金髪美女姉妹ができてベジータ並みに爆発しそうです。晴香さん、今ならファイナルエクスプロージョンを撃てるぞ」
『…………ああ、アヤメっち、天然なところあるし……先輩はあれだし……』
「あ、葵ちゃん?」
『じゃあ、迎えに行くから! どこにいるか教えて!』
「説明放棄!?」
『やだよ! 私が説明すると絶対面倒なことになるもん! 社畜の勘がそう言ってる! こ、ここは先輩に説明してもらうのがいい!!』
「どういうことですか!?」
と、しばらく押し問答をした後……晴香は葵に事情を話して、喫茶店まで迎えに来てもらうことになった。その間もアヤメは晴香に会えたのがよほど嬉しいのか、ニコニコ機嫌よさそうに晴香を見ていた。
「あ、あの……それでアヤメさんは……おにぃとは……」
「妹だよ! だから私たちは姉妹でござる!」
「…………」
(ま、待て私、これはある意味、得なことではないだろうあか? 二次元でも金髪美女が姉妹になることなんてないんだし……)
と、二次元特化型の晴香が妙な感じで納得していると……アヤメが笑顔で言葉を続ける。
「そうだ! お兄ちゃんが大ピンチでござる! 姉妹でこのピンチを救うでござる!」
「えっ? ん、何かおにぃを救う方法があるんですか!?」
「ふっふっふ、私たち姉妹が揃えば不可能はないでござる!」
(な、なんていうことだ! 私はこの人について行けばいいのか!? れ、冷静に考えれば、私たちの関係って神とピッコロみたいなものだぞ!)(錯乱中)
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