第397話 実妹と魂の妹

   ◇◇◇


 同日午前9時――。

 学園祭開始まであと1時間と差し迫っている頃、学校の最寄り駅にて――。


 川島晴香は――。


「…………こ、この歳で迷子になった」


 世界に絶望した。

 人が大勢通り過ぎる駅前でおろおろしている。ぼっーと考え事をして歩いていたら、葵と絆と逸れてしまった。


(お、おかしい、葵ちゃんと絆ちゃんと3人で駅まで来たはずなのに……気が付いたら2人がいなくなってた……まさか、これは某国の陰謀か! エルプサイコングるぅ! 的な!)


 晴香はそこまで考えて中二病丸出しな自分の考えを否定する。


「……いけない、いけない。中二病は卒業したんだった。最近。おにぃ、そういう電波系好きじゃないみたいだし。おにぃに嫌われるぞ」


 そう言い聞かせると、自然と落ち着いてきた。「おにぃに嫌われる」とは晴香の中では魔法の言葉で、昔からこれを考えると自然と落ちくことができた。


「…………」


 とはいえ、今晴香が置かれている状況は晴香の人生の中でも1、2を争うほどテンパっているのは事実だ。


 迷子だけならまだしも……長年密かに思い続けた兄に娘がいたのだ。さらにはお金持ちの利権に巻き込まれてネットニュースに載った、さらには長年の想いをポロリと口にしてしまった。


 もう発狂したい。

 むしろ発狂しない自分を褒めてほしかった。


「とりあえず、電話しよう。昨日、葵ちゃんと番号を交換して……あっ、電池切れてる……」


(昨日あれだけのことがあったんだもん……充電ぐらい忘れるよ。やれやれだぜ。……こ、これはいよいよ詰んだのでは? が、学校名はうる覚えだし……豊田? 高校だっけ? とにかく、あそこのコンビニで道を聞くぞ!)


 晴香は道を聞くために100メートルほど離れたコンビニ向かおうとした……が、ふと足を止める。


(と、都会でコンビニで道を聞いてもいいのかな? あ、あれ? 田舎者だと思われたりしない? 今の精神状態で冷たい視線を投げかけられるとあたし死んじゃうよ? いやいや、道に迷うのは別に恥ずかしいことじゃない。某海賊漫画の3刀流はいつも迷ってるぞ!)


 田舎者の変な思考に落ちてしまった……「ああ、救いの女神でも現れないだろうか」と、本気で考えていると――。


『あれ? もしかして晴香ちゃんでござるか?』


「えっ?」


 晴香の近くにふと、ナイスバディ―金髪スーツのアヤメが傍に立っていた。


「だ、誰です?」


「わああああ! 晴香ちゃんだあああああ!!! 『写真』で見るよりも可愛い!!!」


 アヤメはいきなり晴香に抱きつく。


「!?!?!?!?!?!??!?!?!?!?!??!?!?!?!??!」


 晴香の脳内PCは完全にフリーズした。

  

やがて、なんで自分は金髪美女に抱きつかれてるのか? いい匂いがする? 胸が柔らかい? おっぱい。など、走馬灯のようにうかぶ。


「あっ、ごめんでござる! 私はアヤメ! お兄ちゃんのもう一人の妹でござる!」


「?????????????????????」


(あ、あれ? 私、姉妹いたっけ? お、おにぃ、まさか娘だけじゃなくて妹も作ったの!? どうやって!?)


 晴香の脳内の平穏いつ来るのだろうか……。

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