第257話 リレー開始
参加選手が揃うと俺たちは係りの生徒に校庭に案内される。
選手入場というやつだ。高校時代の体育祭の時以来だから実に十数年振りだ。懐かしい……というよりはこの歳でやると普通に恥ずかしい。
見世物パンダの気分だ。
『あの中年、いい歳してリレーに出てるよ! ウケルwww』
とか、JKたちに思われていたらどうしよう……。
しかも、このリレーは体育祭終盤の盛り上がる競技らしく、会場の声援もピークだ。そんな盛り上がりも俺の心の不安を煽る……。
『店長うううううううう! 昼ごはん大盛ありがとうごいますうううううう。がんばれええええええええ』
『音無さん!! きゃああああああああ』
『三沢のあねきいいいいいいいい!!! 新井のあにきいいいいいいいい!!』
(えっ……こ、こんなに盛り上がるものなの? 常連客の生徒が立ち上がってめっちゃ声援を送ってくれるんだけど……)
「あっ、店長、あれ見てください。ふふっ」
俺がネガティブ思考マックスになっていると、由衣が俺の肩をトントンと右の人差し指で叩いてきた。
由衣が見ている方向に首を曲げると――。
『まんま、おじちゃんがんばって!!!! ふれええええ!! ふれええええ!!』
絆ちゃんの大きな声援と、笑顔でこちらに手を振る明菜と葵ちゃんいた。
それを見ると、ほっこりした気分になり緊張が少しだけ和らいだ気がした。
(情けない姿は見せないようにしたいな……)
そんなことを考えていると、俺たちはスタート位置に到着した。
「第一走者の方! コースに出て下さい!!」
係りの生徒がそう声をかける。
すると各チームのトップランナーが前に出ていく。
「兄貴! 見てほしいっす! 僕の爆走暴走ハイパーダッシュを! 全員ぶち殺してやるっす! 全員分の石碑を用意して欲しいっす!」
「お前は今から戦争でもする気か?」
とか、俺が思っているが……他のメンバーの温度感は俺が思っているよりも高くて――。
「よし! その意気だ新井! テンチョーのウイニングランのためだ全力でいけ! テンチョーの雑魚さを考えろ!」
「そうです。店長は体力がないし足が遅いです。私たち3人で半周以上はつけないと絶対に勝てないです!」
「おい、俺こんなクライマックスだけど子供みたいに号泣するぞ!?」
見苦し言い合いをしていると――。
『しょ、食堂チームの方! 早く出てください!』
放送担当の生徒に普通に怒られ、会場がどっと笑い声で包まれた。ごめんなさい……。
「おーわりぃ、わりぃ! あたしらは下がってようぜ!」
「あ、ああ……」
怒られた俺と由衣、三沢はそそくさと待機場所に向かう。そこには実花、未来、フレアさん、アヤメの姿があった。
実花と未来はじぃーと俺のことを見ている。実花はニヤニヤとしていて未来はいつもの無表情だ……。
(そ、そんな目で見ないでくれ……騒いだのは謝るけど……)
と、勝つために集中しないと……。
このリレーは1チーム男2人、女2人の計4人の参加で、200メートルトラックを1人1周するルールだ。
第一走者はうちは新井で、残りチームは全員が男で見覚えのない人たちだ。
待機列の並び順的に、第二走者がうちは三沢で、警備員チーム、教師チーム、生徒チームはまたもや男だ。
第3走者はうちが由衣で、警備員チームがいかにも柔道をやってました言わんばかりの筋肉質な女生徒で、教師チームは細川先生、生徒チームは実花だ。
そして……最後が俺、フレアさん、アヤメ、未来。
(アンカーで男は俺のみだけど……面子がやばい……確実に俺よりも速そうだ……勝てる気がしない)
「店長、そろそろ始まりますよ」
由衣が楽しそうな声色で小声話かけてくると――。
『それでは位置について――』
校内放送が流れる。
そして――。
『よーい、ドン!!!』
こうして混合リレーが始まった。
緊張が高まるのを感じ、それと同時になんだかワクワクしている自分もいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます