第254話 リレー開始直前(2)
由衣とまったりと過ごした後、俺と由衣は待ち合わせ場所に向かうために校内の廊下を歩く。あと2、3分も歩けば集合場所に着くだろう。
ちなみに俺と由衣の服装はいつものコック服ではなくジャージに着替えている。
『ああ、体育祭終わっちゃうね~~』
『うんうん、なんか寂しいかも』
今休憩中なのか、廊下には生徒も何人かいた。
……JKがいる廊下を歩いていると、なんかいけないことをしている気分だ。いや、自意識過剰なのは重々承知なんだけどな。
変な意味じゃなくて男子生徒を見ると落ち着く。
「あ、ああ、店長、なんか緊張してきました……注目されて走るなんて久しぶりなので」
「お前なぁ、そんなこと言ったら俺なんか数十年振りだぞ?」
「そこは店長なので。店長って追い込まれれば追い込まれるほど力を発揮する人間……はっ! て、店長ってもしかしてドMなんですか……?」
「いわれもない事実で自己完結してるんじゃねぇよ!!」
「わ、私、店長のこと罵った方がいいですが? 自分で言うのもなんですが、正直得意分野だと思います」
「本当に自分で言うことじゃねぇな!?」
というか、身をもって知ってるわ。お前時々俺のこと罵ってるからな!
とか、仲良く? いつものコントみたいなやり取りをしていると――。
学食常連客で時々由衣と仲良さそうに話している女生徒2人が、少し離れ場所からこちらを見ているの気が付く。
そしてそのうちの1人が手を振ってくる。
『あっ、音無さんだ! やっほー! リレー出るんだよね!』
『ば、馬鹿、せっかく店長といるんだから、邪魔しないの!! やっぱり、付き合ってるんだね……』
『あ、あっ、そっかぁー。恋人同士の時間だもんね』
「……はっ?」
女生徒2人はそんなことを言いながら去っていこうとする。
ん? こ、こいつらノストラダムス並みの勘違いをしてないか。さすがに否定しとかないと、由衣にも迷惑が掛かる!
「お、おい――」
「て、店長、時間ないですから早く行きましょう。あの子たちなら人には言いふらさないんで大丈夫です」
俺が慌てて否定しようとすると、由衣の言葉が遮る。
ちなみに由衣は明後日の方を見ていて、その表情はわからない。
「えっ……でも、いいのか? こういうのは否定しておかないと。俺と恋人と思われるのなんて嫌だろ?」
「……別に」
お前は大女優か。
「いや、でもな……」
「いいんです。あ、あの子たちには私が後で責任を持って説明しておきます。そ、それよりも早く行きましょう。麻依さんと新井さん待ってますから。新井さんを待たせるとうるさいですし」
由衣はそう早口でそう言ってすたすたと先に歩いていってしまう。
んんー。俺が気にし過ぎなだけなのか……? 若い子からしたらどうでもいいのか? 逆な気がするんだが……。
「て、店長、早く行きますよ」
「お、おう」
俺は慌てて由衣を追いかける。
まあ、由衣と仲がいい奴らだし、由衣がいいならいいか。由衣はここの学生という訳ではないんだし……。
「…………」
俺としては優越感が強いし。それと同じぐらい罪悪感もあるけどな……社会的に殺されなきゃいいけどなぁ……。
特に娘たちの耳に入った時が恐い……。
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