第185話 誕生日パーティ!!!(1)

 いろいろ想い出ができたプール旅行から帰って数日後の5月5日の昼間――。


 俺は『とある事情』から、自分の家で『絆ちゃん』と留守番していた。まあ、そんなに大それたことじゃないんだけど、実花未来と由衣が買い物に行ってるだけだし。


 ……何を買うかは聞いてないんだけど。

 内容を聞いたら……。


『て、店長に言える訳ないじゃないですか!?』


 と、顔を真っ赤にして否定された……。

 そんなにエロい物を買うのか……?


「わああああ! ねこちゃんかわいいい!!」


 絆ちゃんはテレビに映し出されている猫に夢中だ。嬉しそうに画面にかじりついている。そんな絆ちゃんをテーブル肘をついて眺めている。


 なんかアヤメの小さい頃を思い出すなぁ……。


「ふう……あぁ、このまったりした感じが連休って感じだよなぁ……旅行も悪くなかったけどな」


 旅行自体がかなり久しぶりで新鮮で楽しかった。まあ、娘や如月、フレアさんとたくさん話せて距離感が縮まった気がしたので、その点でもよかった。


 まあ、そんなこんなでリフレッシュした後だが……1つ気になることがある。


 あれ? 如月のやつデリヘル呼んでくれるんじゃなかったのか……!?

 元スチュワーデスの美人を呼んでくれるんじゃなかったのか!?


 いやいや、社交辞令だったのだ。それにいくら俺でも娘たちの同級生にデリヘルの斡旋をしてもらうほど、非常識な人間じゃない! 腐った人間ではない!


 だが……その、なあ? あの……まあ、期待してもいいじゃない? 如月ってぶっ飛んでるところあるし……もしかしたらって考えちゃうじゃん……?


「はぁぁぁ……」


『おじちゃん! ためいきついてどうしたの!? かなしいことあったの!!』


 そんなことを考えていると、テレビに夢中になっていた筈の絆ちゃんが俺の顔を覗き込んでくる。

 さっきまでの楽しそうな表情とは一転、少し泣きそうな感じだ。


「ああ、悪い、悪い……こっちおいで」


「うん!!!」


 俺が笑顔を見せると絆ちゃんは俺の胸に飛び込んでくる。

 そんな絆ちゃんを受け止め、優しく頭を撫でると……気持ちよさそうに目を細める。


「えへへ、おじちゃんの手おおきいいなぁ……」


「そうか、そうか……」


 うむ、子供というのは可愛いものだ。

 まあ、おじさんとしてはこの場面を誰かに見られると、捕まるのではないのか? という謎のプレッシャーがあるのだが……自意識過剰か?


「もう少し、ママも帰ってくると思うぞ?」


「ええ! まだおじちゃんと一緒に居たいのに!! えへへ、おじちゃん大好き!」


 できれば後20年後ぐらいに今の言葉をもう一度言ってもらいたい……。

 てか、幼女にはモテモテだなぁ……。理由はよくわからんけど……何で俺は絆ちゃんから絶大な信頼を勝ち得ているんだ……? 謎だ……。


 まあ、今はこのまったりとした時間を楽しむのも悪くないだろう。

 夜はみんなで飯を食うみたいだしな。


 ……はぁ、ゴールでウィークも、あと僅かだ……ただただ悲しいなぁ……。

 

   ◇◇◇


 同時刻――。

 駅前のデパートにて――。


 実花、未来、由衣の3人は買い物に来ていた。

 目的は今日、5月5日に『誕生日をむかえた』義孝の誕生日プレゼントと、パーティの食材を買いに来たのだった。

 後で、明菜、アヤメ、望とも合流予定だ。


 ちなみにここ十数年誕生日を誰かに祝われた経験のない義孝は、今日が自分の誕生日だということを忘れていた……。


「て、店長の誕生日プレゼントどうしよう……」


「はぁ……何で『当日』なのに、まだ決めてないんですか……? 由衣、あんなに気合入れてたのに……」


「だ、だって……何が一番喜んでくれるか悩んでたら……今日に……うぅ、皆はもう買ったのよね……」


「はい、夢野さん、アヤメさんも、さらに如月さんも買ったらしいです。あとは由衣だけです」


「あはは、由衣ちゃん、完璧主義だから……こういうのは直感だよ? パパって、結構単純だし。そうだ! このスーパー美少女実花ちゃんが奇策を授けてあげようか? くすっ」


「えっ……? き、奇策? それは……」


「コンドームを買って、プレゼントは「私の初めてだよ♡」とか言えば喜ぶよ!」


「そんな痴女みたいなことできるわけないじゃない!」


「……なるほどその手がありましたか……さすがお姉ちゃん。由衣、私たちはコンドームを買ったことが、学校にバレると面倒なので、代わりに買ってもらえますか? ああ、プレゼント用に包んでもらって下さい」


「未来……どこまで本気……いえ、本気なのよね……店長が絡むと未来は偏差値が20は落ちるもの……」


「ふっ……そんなに褒めれれても照れます……」


「何で……今の会話の流れで得意げなのよ……」


 そんな感じで乙女3人の買い物の時間は過ぎて行った……。

 義孝の『サプライズ誕生日パーティー』まであと6時間を切ったのだった……。

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