第182話 妹を想って
◇◇◇
同時刻――。
ホテルの大浴場にて――。
ホテル自慢の露天風呂に実花、望、フレアがつかっていた。
ここはプール施設の隣にあった浴場とは違い、水着で入るタイプの浴場ではないので、当然裸で入っているのだが……。
「………」
(のぞみんの視線が私のおっぱいに……難しい顔して自分の胸おっぱい揉んでるし……お、大きいおっぱいに憧れてるのかなぁ……触れないであげよう……わああ、実花ちゃん空気読める~~。自分でいうことじゃないけど、よし、温泉の話題でもふろうかな……)
実花は長い思考の末、望の行動を見なかったことにして、温泉を楽しんでる風を装って気伸びをする。
「はぁぁぁぁぁ、いいお湯だね……」
「そうね……こういうのもたまには悪くないわね……」
望は気伸びをしたことによりぷるんと揺れる胸を凝視しながら頷く。
どうやら実花の気遣いはさらに望の思考を加速させたようだ……。
実花は苦笑いを浮かべてフレアにも話題を振る。
「さっき言ってたけど、フレアさんって温泉初めてなの?」
「はい、その通りです……この施設があれば我々はまだ戦えた。くっ、これは未練ですね……後悔はしたくないのですが……」
(あ、あはは……物騒な思い出な気がするなぁ……ここもスルーっと……)
実花はフレアの過去を聞いてみたい気もするが……聞くと引き返せない気がしたので、やめることにした。
(絶対に……この場の空気が暗くなる気がする……)
自分の勘には自信がある……だからこそ実花は妹に『花』を持たせてあげたかった。
「あら……?」
「…………」
望は周りを見て不思議そうに見渡している。
実花はその姿を見て内心でドキリとするが、顔や態度に出さないように、実花も望の視線を追う。
「ん? のぞみんどうかしたの?」
「いえ……未来さんはどうしたのかしら? さっきまで身体を洗っていたと思ったのだけど……」
「ああ、サウナにでも入ってるんじゃない……? 昼間羨ましがってたし」
「ふーん、そう……まあ、いいでしょう。昼間はわたくしが抜け駆けしてしまったのだし」
「…………」
(うわ……未来ちゃんがパパに会いに行ってるのバレてるなぁ……頭の回転が早い。さすがは如月の次期当主様……)
「それで実花さんはいいのかしら?」
「な、何のことぉー……みか、わかんない」
「はぁ、頭の悪いふりをしなくていいわよ……貴女は頭がいいのだから」
望はため息を短く吐くと、少しあきれたような表情で実花を見据える。
「そんな余裕でいると、未来さんに父親を取られちゃうわよ……? あの子、本気で父親に恋をしてるみたいだもの……」
「あーー、未来ちゃんは純度100パーセント純愛脳だから……」
「何を他人事のように言ってるのよ……義孝さんに恋をしてるのは実花さんも同じでしょう?」
望は呆れているようだが、嫌悪してる感じは一切しない。実際、父親に恋をしている娘は嫌悪されるのに……。
それどころか、応援されている感じさえする。
「いいの、いいの。妹の手柄は姉のものだからぁ。未来ちゃんがパパをおとしてくれれば、私もしれっと一緒に住めるし」
「ふふっ、まあ、頑張りなさいな。わたくしは戸籍だけ入れくれれば、義孝さんを縛る気は一切ないので。娘と恋愛しても、毎日違う女性を抱いても、問題ないわ。それも権力者の特権よね」
そう、きっぱりと言い切る。
何故か得意げに。
(なんというか……器が大きいなぁ……パパ、飛んで喜びそう……い、いや、パパってああ見えて一途だし……たぶん、きっと、おそらく……んん、パパのこと理解されてなんか悔しいなぁ……)
「のぞみん」
「ん? 何かしら」
「私のおっぱい触ってみる?」
「ぜひお願いするわ」
即答だ。
そうして、女だけの入浴会は妖艶に、百合っぽく、艶めかしく……過ぎて行った。
実花はなんだかもやもやした気持ちになったが……望とじゃれているうちに、楽しい気持ちの方が強くなる。
父親のことが好きだ……それこそ死ぬほど。
誰にもとられたくない気持ちはある……だけど、父親には、父親が好きな人と一緒になってほしいという気持ちが一番強い。
(先のことなんて誰にも分らないんだし……今は未来ちゃんが幸せな時間を過ごせるといいなぁ……)
実花は望に念入りに胸を揉まれながら、そんなことを考えた。
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