第65話 外伝『アーリーデイズ』(3)
俺の頭はとうとうこの灼熱の気温にやられたか……幻聴まで聞こえるとは……相当だな。
でも無視する訳にもいかないしなぁ……。
「お、おい。今なんて言った?」
ここはコミュニケーションをとり対話をするべきだ。人間誰しもが少しは持っている他者を理解しようと思う心を失ってはいけない。
だがーー美少女は機嫌良さそうに悪戯っぽい笑みを浮かべて口を開いた。それは可愛らしい容姿には会わない妖艶な笑みだ。
「キミとひと夏の恋をしたいの。私が楽しめたらセックスをしてあげる。くすっ、そんなに私にセックスって言わせたいの? エッチなんだから……」
「いや別に淫語羞恥プレイを楽しんでるわけじゃねぇよ。お前頭沸いてるんじゃねぇの? ビッチが! けっ!」
「わお、初対面の人に言うねぇ。くすっ失礼な人。高校生なのに風俗行こうとしたキミに言われたくないなぁ」
言ってることは正論だが、俺だっていきなりセックスを持ちかけてきた人間に言われたくない。
俺も周りから散々狂ってるだの、頭がおかしいだの色々言われてきたが、いきなりセックスを申し込んだことはない。
(こういうのは相手にしないのが正解だと思う……しかし、果たして本当にそれでいいのか?)
あっちは変人とはいえ美少女だ無下にするのは非常に惜しい。
まあ、危機感が足りない、甘い話に惑わせられるな、とか頭の片隅では思うが……俺には常識というものがが欠けているらしい。
めちゃめちゃ言う美少女に嫌悪感どころか興味がわいてきた。
「詳しい話を聞かせてもらおうか」
「くすっ、いきなり興味もったね。よきかな、よきかな」
美少女は楽しそうに笑いながら、背中に手を回して少しだけ腰を折って上目づかいで見てくる。
こうじっくり見ると……信じられないぐらい美人だよな……。
「話をまとめると、夏休みが終わるまでに私を楽しませてくれればいいの! そうすればご褒美をあげる。くすっ、やり方はキミに任せるから~~」
「ん? 遊びに連れてけってことか?」
「うーん、私が楽しければなんでもいいよー。勉強でもー遊びでもー。あっ、でもエッチなことはご褒美だから基本的になしねぇー」
「基本的に? なんだその玉虫色の返事は……」
「くすっ、だって私が期間中にもしその気になったら、変な縛りがあったら邪魔じゃない?」
「なるほど、わかった」
意味がわからないことは理解できた。いや……意味を理解したら、変に興奮しそうなのでやめておく、が正しい。
「あと最後に1つ。なんで俺なんだ? お前ならそこら辺の男を楽勝で捕まえられるだろ?」
「うーーん、当然の疑問だとは思うけど、私って一途で純粋だからその質問にはちょっと傷ついちゃうなぁ~」
美少女は初めて不満げな表情を見せた。いじけたように頬を膨らませている。
さっきまでの妖艶な笑みとはギャップがあり、それが可愛い……。
だが――。
「いや、お前さっき純粋とは一番かけ離れた言葉を話してなかったか?」
「セックス? ふふっ、本当にエッチなんですね♪」
もうツッコムのもめんどくせぇ……。
そんな俺のうんざりした気持ちを察したのか、美少女は苦笑いをする。
「あーごめん、ごめん。楽しいからついからかっちゃった。キミに声をかけた理由だよね? あえて言うなら一目ぼれかな……? 高校生であのキャッチマンさんとのやり取りは芸術的だったし」
見てたのか……なんだよ照れるじゃねぇか。
「ふっ、俺のバトルシーンを見て惚れたか。俺ってイケメンだし――」
「うーん。私はかっこいいと思うけど世間的に中の下じゃない? イケメンじゃないし、不細工でもない。中途半端?」
「てめぇ、もっと歯に衣をきかせろや! 泣くぞ!? 号泣すんぞ!?」
「いいんじゃない? 私はには高評価なわけだし~。私恋したのって初めてだし。ふふっ初恋っていうのかな?」
……例え嘘でもそう言われると、それでいい気もしてきた。わぁぁぁ、男って単純。
このクオリティで初恋がついさっきとか絶対に嘘だと思うけど。
「それで? どうするの? 自分で言うのもなんだけどかなりの好条件だと思うけど」
美少女は笑顔を消して不安げに俺のことを見た……瞳にはある種の期待が見えるようだった……。
「…………」
俺の答えは決まっていた。この問題は男して答えは1つしかない……。
俺はそれを言葉にするためにドヤ顔で口を開いく――。
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