第19話 家族で遊園地(1)
今日の目的地、遊園地『ネズミミランド』の前で待つこと2時間。
結局やることもなくて現地で待つことにした。
ちなみに暇だったので葵ちゃんに「かまってー」っていう電話をしたら「私はお仕事中です♪ 地獄に落ちてください♪」って10秒で電話を切られた。
あーあ、社畜は心に余裕がなくなくていけないなー。
そんなかつての自分のことを棚に上げたことを考えながら、周りを見渡す。
(はぁ、下見に来た時よりも遥かに人が多いな……あれがマックスじゃなかったのか……さすが土曜日)
遊園地の入場ゲート付近には大勢のお客さんで賑わっていた。ざっと俺が月曜来た時の1.5倍はいる気がする。
まるで都心の通勤ラッシュ時の駅のホームにいるようだ。
「さて、そろそろ待ち合わせ時間なんだけど……」
実花たちの姿はまだ見えない。というか、この人の多さでは見つけるのも一苦労な気がする。しまった。入場ゲートじゃなくてもっと具体的な場所を指定すればよかった。
『あっ! パパいた!』
その時、聞きなれた声が後ろから聞こえる。
振り返るとそこには可愛らしく着飾った姉妹がいた。
実花は黒を基調としたガーデガンを羽織り、短めの赤のスカートだ。やや、足の露出が多い……いやスタイルがよくて足が長いがからものすごく似合ってるんだけど。
そして未来は花柄があしらっている白のワンピースで、未来が持っている清潔感を際立たせている。どこかの美人令嬢っといった感じだ。
ふたりともやっぱり可愛い。本当に俺の血を受け継いでいるのか疑いたくなるレベル
「お父さん、ごめんなさい、お待たせしました」
未来は普段見せない服装が恥ずかしいのか、俺とは視線を合わせようとしない。
無表情だがそんな恥じらう姿も可愛い。
「大丈夫、パパなら「今来たとこだよ?」ってイケメンで言ってくれるから」
「いや、骨格までは変えられないから」
「? お父さんはとってもかっこいい顔ですよ? 骨格を変える必要などありません」
素の顔で言わないで……普通に恥ずかしい。
それに身内びいきが過ぎるだろ……俺の顔なんてよく言って中の下だ。
もし、イケメンだったら彼女ぐらいはいたことがあってもいいだろう。
「ふふっ、パパのドッキリを頂いたところで、感想もらえる?」
くるり、一回りしてほほ笑む実花。なるほど、こういう何気ないことを褒めることにより、親子の仲が良くなるということか。
それならば俺が最上級の誉め言葉をふたりに送ろう。
「すっごい可愛いぞ。デリヘルで出てきたら給料全部突っ込むレベルだ」
その瞬間、実花の目が細くなった。
やばっ、短い付き合いだけど怒ってるのはわかる……それも結構。
「パパ、娘を風俗嬢に例えるのはどうなの? そういう考えはなくした方がいいよ?」
「す、すまん、冷静に考えたらそうだな……」
女性と親しくなった経験が葵ちゃんぐらいしかないから、つい口走ってしまった。葵ちゃんなら余裕しゃくしゃくで「1時間いくら払えますか?」とか切り返してくるのに……。
でも実花の反応が正常だよな。葵ちゃんが狂ってるだけだ。うん。
「パパ……!」
実花の怒りはまだ収まらないらしく頬を膨らませてこちらをにらみつけている。
「わ、悪かったって。さすがに例えが悪かっ――」
「私がデリヘル嬢になるわけないじゃん! パパ専用のデリヘル嬢なら第1就職希望だけど!」
「馬鹿じゃねぇの?」
驚きすぎて逆に素の声が出た。
いやいやいや待て待て。こいつは大声で何言ってんの!? 周りにはめっちゃ人いるんだよ? あーみんな見てらっしゃる……そうですよね。面白い見世物ですよね。
「謝って! 私は生涯パパ以外は経験しない――」
「わ、わかった! 俺が悪かった! だからその口を閉じろや!」
「ふがふがふが――!」
俺は実花の口を押える。このままだと、マジでまずい。見世物になっているのはまだマシだけど、補導されるのとかはマジで勘弁!
「未来、さっきはすまん。今は早く移動しないか?」
「…………」
未来は実花と言い争っている時、ずっと無表情でいた。無表情だから感情は読みずらいのだが……実花と一緒で俺の失言にブチ切れているのだろうか……?
今もあさっての方を見てるし……。
「可愛い……お父さんが私のこと可愛いって……ふふっ、可愛いって、可愛いって、可愛いって、可愛いって可愛いって言ってくれた。ふふっ……」
こわっ! 無表情で呟いてる! い、いや怒られるよりは喜んでくれた方がいいのだが……。
「むがーー! パパ専属の風俗嬢が私の夢なの! マットプレイとかしようよ!」
「ふふっ、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、褒めてくれるように頑張らなくちゃ……」
「…………」
風俗好きな俺を含めて、家族の将来が本当に心配になった。
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