第9話 父親と次女(1)
とりあえず一緒に住むことが決まった翌日、日曜の早朝。
一緒に暮らすことが決まったあの後、なぜか出前を取ってのどんちゃん騒ぎの宴会になり、そのおかげで飲みすぎてあまり記憶がない。
ぶっちゃけ一緒に住むこと以外は決まってないから、宴会なんてやってる場合じゃなかったんだけど……。
まあ、……姉の方はともかく妹の方とはあまり話したことはなかったから、いい機会と言えばいい機会だったけど。
(あいつ思ったよりも笑うんだな……昨日は楽しそうだったし)
今は姉妹そろって俺のベットで仲良く寝息を立てている。
こう見れば可愛いもんだ。
ちなみに俺はキッチンで寝た。床が硬かったから腰が痛い……
はぁ、買うもの多そうだし、今日こそ今後のことを決めたいんだけどな……。
「社畜からは中々抜け出せないな……」
今日は今日で同僚への引継ぎ作業がある。日曜なんだけどな……。
溜息をつきながらスーツに着替えていると、後ろでごそごそと音がする。
どうやら、起こしてしまったらしい。
「ん? パパ、こんなに早くどうしたの? ふぁぁ」
「ああ、今日会社で引継ぎ作業をしてくるから留守番を――」
振り返りながら、そこまで言うと……姉の姿が視界に入る。
さっきは気が付かなかったが、なぜか服を着ていない。それはもう下着すらつけておらず、羽織っていたブランケットがかろうじて下を隠している状態だ。つまり……完全無欠の裸族だ。
「お、お前、どんな格好で寝てるんだよ」
「ああ……シャワー浴びてそのまま寝ちゃったのか……えへへ、どう? 私のおっぱいは。興奮する?」
「お前やっぱり胸でけーんだな。なにカップあんの? あと乳首の色が綺麗だな」
「あはは……冷静に観察されるとそれはそれで恥ずかしんだけど……」
そうは言われてもな……おっぱいは結構見てるし……お店で。
俺もいい年なんだから今更ガキみたいに騒いだりしないだろ……。
「ただ、まあ……目に悪いのは事実だからさっさと隠してほしんだけど……」
「ねぇ、おっぱいマスターのパパに聞くけどまだ大きくなるのかな? 正直もうこれ以上はいらないんだけど」
「ガチで相談すんな。そんなの夢野さんにでも聞け」
あの人、お前以上に大きいんだし……って、時間まずっ!
「夕方に帰ってくるから、あとは頼んだぞ」
「いってらっしゃい~。未来ちゃんと一緒にパパのAV鑑賞して待ってるから~」
性に対して好奇心旺盛すぎだろ。正直妹はその辺うぶっぽいから、そっとしておいてやれよ……。
そんなことを考えながら家を出た。
◇◇◇
「おい! そっちの資料こっちにまわせ!」
「何やってるんだよ! 明日が納期だろっ! 今日は家に帰れると思うんじゃねぇぞ」
出社して数時間のお昼ごろ。50人ほどの社員が慌ただしく作業をしており、会社はすでに戦場になっていた。
あー、改めて客観的に見るとこの会社のやばさがわかるな……今日日曜だぞ。
それなのに、来てないやつのが少ない……どんだけ人手不足なんだよ。
(まあ、俺にできることは引継ぎ資料作るぐらいだ……がんばれ)
「なにを他人事のような顔をしてるんですか……裏切者さん」
達観していると後輩の葵ちゃんが俺の席にやって来る。
椎名葵。20代中盤の女性社員で経理件人事を担当している俺の後輩だ。ショートカットで小柄な可愛らしい容姿だが、働きすぎて疲れた顔がデフォルトになってる悲しい女だ。
「裏切者とは失礼だな……。ほら、こうして引継ぎ資料を作りに来て円満退社を目指してるだけマシだろ?」
「それは確かに……うちの会社、いきなりドロンすることはかなり多いですし」
「それで何の用だ? 昼飯でも一緒に食いに行くか?」
「……そんな時間あるわけないじゃないですか……先輩には今度『煙火』の焼肉をおごって頂くので大丈夫です」
「おい、そこって高級店じゃねぇか、冗談じゃ……」
「あれー? 有休も全部使えて、一部残業代が出るのは誰が上に掛け合ったからでしたっけ?」
ふん、そんなの社会人として当然の権利じゃないか。威張ることでもない。
その程度俺が折れるはずがない。うん。
「素直に奢らせて頂きます」
即断だった。
社畜とは小さいことにも感謝できてしまう完ぺきな人間だからな。洗脳を受けてるとも言うけど。
「あっ、そんなことを言いに来たんではなかったんでした。先輩にお客さんが来てますよ?」
「客? あれ? アポは特にないはずだけど……先方か?」
「いえ……それが、その、可愛らしい女子高生です……竜胆未来と名乗ってましたけど……」
「……」
あいつ何しに来たんだ……?
まあ、ほっとく訳にもいかんし、対応するか……。
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