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でも、根拠も何もなく、何を信じればいいんだ?
俺の観測者としての力は、勝利を信じるだけで勝てるほどのご都合主義な力じゃない。理由が無ければ、何も起こるハズがない力だ。
でも、信じれば。
何かが、起こるかも知れない。
理由なんて、後からついてくれば、それでいい。
理由なんてなくても、
「俺はぁ! 負けないっ!!」
「感情論などで勝てると思うなっ!!」
カルヴァンがさらに力を込め、黒い剣が俺の魔剣にめり込んでいく。
だけど、そんな現実、俺が捻じ曲げてやる。
「俺は、絶対に信じる! タルサは俺の帰りを待ってるんだっ! なら、俺がやることなんてひとつしかねぇ!! 俺はタルサの言葉を――信じぬいてやるんだっ!!」
俺の魔剣が折れる、その瞬間。
魔剣の柄にある水晶が――光り始めた。
空になっていたハズの魔剣に魔力が宿り、剣に刻まれた刻印が虹色に輝いていく。
どうして? 何故と思ったのは、俺だけではなかった。
「お、俺様の魔力が!? バカな!? どこに、そんな魔力が――」
カルヴァンの声が、遠のいていく。
俺の手にある魔力に満ちた魔剣は、ミーナさんの黒い剣を消滅させていた。
「そんな……どうして?」
ミーナさんが、呆然と立ち尽くしていた。
「まさか、魔力供給?」
俺はそんなミーナさんに、ボロボロになった魔剣を向けた。
「理由はわかんないですけど、俺の勝ちです」
俺の宣言に、ようやくミーナさんが肩の力を抜いた。
ミーナさんは涙目で笑い、うなずいてくれる。
「私の、負けです」
カルヴァンを失ったミーナさんに、俺を止めることはできないだろう。
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