俺とミーナさんの想い

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 目が覚めると、目の前に白い机があり、白い椅子に座っていた。


 机の上には白いノートパソコンが置かれていて、それ以外の存在は、この世界には存在していなかった。視線を巡らせると、白い地面と、白い空の境界線だけが、遥か彼方に見える。以前と同じように、格闘ゲームのトレーニングモードのステージみたいだと思う。


「成功した――みたいだな?」


 ぼそりとつぶやいて、俺は目の前のノートパソコンを開く。


 俺とタルサの立てた作戦は、思ったよりもシンプルだった。


 ミーナさんとカルヴァンは、儀式によって人々の魂を抜き取って、それを糧に悠久の魔女を蘇らせようとしていた。ならば、その魔力を俺が横取りして、皆がハッピーエンドを迎えられるような願いを叶えればいいと考えた。


 その方法として選んだのが、俺がわざと生贄になることだ。


 なぜなら、俺には魂が漂うだけの場所に、空間を生み出すことができる――観測者としての力があるからだ。魔法陣の内側であるここにさえ潜り込めれば、後はここにある魔力を勝手に使えば良い。


 さらに言うなら、俺の願いは、魔力さえあれば何でも叶えることができる。


 ここまで来たら――あとは皆が幸せになれるような願いを書き込むだけで、俺ならば奇跡も起こすことができるハズだ。


 でも、空間を生み出す時に、ノートパソコンまで生まれてくれたのは嬉しい誤算だった。


 俺はさっそく作業へと取り掛かる。


 ノートパソコンの画面にはワードが開かれていた。


 紙が横向きになっていて、点滅するカーソルの大きさからして、34行42文字。そんな見覚えのあるフォーマットには、中央に一言だけ文字が書かれている。




『異世界で俺は神になる!』




 ここから俺の転生は始まったんだよな、なんて感傷に浸りながらも、画面をスクロールさせていく。すでに『異世界で俺は神になる!』は15億ページも書かれていて、最後のページを表示させるだけでも時間がかかりそうだ。


 そんな画面を見ながら、ようやく緊張が解けていく。


 ……この作戦には、失敗する可能性があったからだ。


 そもそも、俺には観測者の力があるが、それはとても不安定な力だ。この異世界にとって確定している事象を覆すことはできないだろうし、この空間を生み出す力を俺は体験しているが、それが今回も発動するとは限らなかった。

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