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「なっ!? 何を馬鹿なことを!?」
「馬鹿はお互い様だろうがっ!!」
メリッサは瞳を拭って続けた。
「私はアンタを生贄にした奴を恨んでやるし、悠久の魔女だってアンタの仇になるでしょ! なら、ぶっ殺されても文句は言えないでしょうが!」
「いやいや、考え直せよ!? そんなもん返り討ちにあうのが関の山だろうが!?」
メリッサも剣士としては化け物じみた強さをもっているが、それは物理的な強さでしかない。
メリッサでは、本物の悪魔を仕えさせているミーナにも、全てを知る女神であるタルサにも勝てないだろう。それどころか、未来視をもつ悠久の魔女様が相手なら、戦いにすらならない。戦う前に奇襲を受けて、それで終わりだ。
「……そうかも知れないね」
メリッサはそれが事実でも、考えを改める気はないらしい。
「でも、私は――アンタを奪った奴と共存なんて、絶対にできない!」
メリッサはヘッドの胸ぐらから手を放し、道の先へと視線を向けた。
その先にあるのは、悠久の魔女様のお屋敷だ。
「ちょっと行ってくる」
「……おい?」
すでにメリッサの眼中にヘッドの姿はないらしい。
ヘッドを無視して、メリッサは歩み始めてしまう。
考えてみれば、メリッサはいつもそうだった。
ヘッドが告白した時だって、メリッサは答えを返さず、ヘッドに告白し返してきた。ヘッドが先に好きだと伝えたのに、メリッサは自分の方が好きだと張り合ってきたのだ。まったく、ヘッドはそんなメリッサだからこそ、守りたいと思ったのに。
メリッサはいつでも、男よりも男らしい剣士だとヘッドは思う。
伝えたら怒るから、口にはしないけれど。
「待て、メリッサ」
「なんだい? 私を止めても無駄だよ?」
振り返ったメリッサの顔には、すでにすっきりとした笑顔が張り付いていた。
ヘッドもメリッサと同じで、吹っ切れたように笑った。
「お前を生贄にはさせねぇし、復讐させるのも御免だ」
ヘッドは説得しようとした癖に、見事にされ返されてしまった。
「俺もお前と、一緒に行く」
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